久々に更新を

久しぶりの更新である。お店への訪問時の店長への言葉やメールにて「早く更新してください」のメッセージはたくさんもらっていたのだが、いかんせん「さぼり癖」というのはやっかいなもので、2月から桜やGW、梅雨までぶっ飛ばして今や夏真っ盛りである。時には「オーナーさんはご病気ですか」と心配してくれた人までいたようで、ありがたいやら恥ずかしいやら申し訳ないやら。すみませんでした。

ブログの記事は書いていないのではなく、むしろ定期的には書いていて、そうした書きかけの記事はたくさんあるのだが、商売をしているため公表できない(しづらい)内容が多くなり、ほとんどがお蔵入り・非公開の自分用日記状態とになってしまっている。個人の時代からどちらかというと自分を含む顧客の側を揶揄することが多かったので、例えば、正規店を日々回って時間を無駄にするなど何と馬鹿馬鹿しくもったいないことか、などと気軽には書きづらくなってきている。店のお客さんにも新しいデイトナが欲しくて実践している人がいるかもしれないので。いわゆる「忖度(そんたく)」というやつ。

病気と云えば、あながち嘘でもなく、だがそれが未更新の理由ではないので少々書きづらいのだが、「突発性難聴」というのになってしまい、左耳は中度難聴でよく聞こえず、かつ耳鳴りとひどいめまいに悩まされている。めまいはひどいと10時間ぐらい起き上がることはできずとても難儀である。3月にちょっと多忙な時期があり、ある日倒れた。文字通り倒れた。頭を上げると目眩で気持ち悪く結局7時間伏せっていたのだが、その日から左耳がアウト。以降はお医者に罹るも今のところ効果なし。難治病らしく、この半年ぐらいは少し仕事をセーブしている。

今日は復帰戦なので、過去記事をアップしてお茶を濁す。4月上旬に書いて下書きに入れていた記事。

一昨日、世の中は4月の新年度。例年より早かった東京の桜はピークを過ぎ、花粉なのかPM2.5なのかいつも空が霞む今日この頃である。4月は我が着用時計衣替えの季節。私にとっては少し残念なこと。ヴィンテージ時計は深まる秋までお預けだからだ。個人的な志向はヴィンテージ一本鎗で、この冬は古いヴィンテージをよく使った。それらは水でじゃぶじゃぶというわけにもいかないのでひとつずつ丁寧に拭いて収納。ここからは最強の旧型シード16600の出番。久々に付けたら重い重い。何かの罰ゲームのように重いが、これでも現行6桁に比べたら軽いほう。昨夜の帰宅時、駅を2つほど歩いて帰宅。途中で重さにはすぐに慣れた。この時計には何というか独特の存在感がある。やっぱりいいなあと再認識したのであった。

当店は委託がメインと思われているようで、特にそれを否定するものでもないのだが、実際には結構な「一般商品」があり、WEBに出す前に店頭で売れることも多いし、常連さんにご案内することもある。詳細は避けるが、結構な大物が売れていたりもする。いま「常連さんへご案内」と書いた。やはりこういう商売をしていくとありがたい常連さんというのができる。その人たちによって経営が支えられる側面は間違いなくあって、小規模なお店はどこもそうであろう。当店に時計を売ってくれるお客さん、買ってくれるお客さん。そしてうちを信用してくれて、またこちらもそうである良好な人間関係、これほどありがたいものはない。お金や損得だけではなく、「このお店をやってよかった」と思えるという精神的な意味も含めて書いている。モノや金をやり取りするのが商売だが、そのベースに在るのは結局人のこころとこころの触れ合いや交流であり、それは時計屋ではなく、例えば飲食店を経営しても同じことだと私は思う。皆さんの会社での仕事もきっとそうでしょう。

脱線した。話を戻すと、委託もありつつ買取り品や海外からの仕入れ品もそこそこある。平日しか空けていないし、私自身が滅多に店には出ていないのでこう書くのは何だが、やはりぜひ店に足を運んでいただきたい。入荷したばかりの品や、思わぬ掘り出し物があるかもしれない。そういえば先日委託で取り下げになったチュードルの79160前期型は買い取らせてもらって今は金庫にある。あれは非の打ち所がない個体だった。カマボコ(クロノタイム)は元々安価で取引されたモデルであったことと、ぶ厚くてぶつけやすいため、ケースが傷だらけだったり、ベゼルにぶつけた際のゆがみがあたっりする個体が多い。また裏蓋を開けてみてびっくり中がサビだらけという難のある個体も多いのだが、あれは文句のつけようがなかった。このあと更に歳月を重ねていくと、ヴィンテージ時計は個体によって大きな価格差が出てくる。理想的なセミ・ヴィンテージ。メンテの必要もなさそうなので近々HPに出す予定だが気になる人は早めに店に問い合わせを。(←売却済み)

たまには他のお店のことを。リベルタスさんで売っている「バートシンプソン」。あの文字盤の雰囲気、ロング5ベゼルの褪せ方など最高。あのベゼルだけで5桁・6桁の中古エクスプローラーぐらいは買えるのではないか。見れば見るほど惚れ惚れする。時計などどれだけ客観で語ろうが、最後は主観である。税込みだと300を超えるが決して高くない。決して高くない。と2回書いておく。あとはどこかの店のHPで良さげな赤サブを見かけたのだがどこだか忘れた。イルソーレさんで旧グリサブのG番が出ているが、やはり日本正規モノである。旧グリーンのG番は世界で日本正規にしかない激レアという見立てでほぼ間違いなさそうである。

冒頭に書いたように、ここ東京の桜のピークは過ぎた。本当に短い。近場だけだが、今年は時間を惜しまず見に行った。昨日の朝も、図書館に行く高校生の娘と一緒に歩いていたら団地の桜が風に吹かれて視界のすべてで花びらが舞っていた。きれいだねーと私が言うと、娘は「私は団子があったらそっちに行っちゃう。花より団子」と言ってけらけらと笑った。うんうん、若いうちはそれでいいんだ。何となくこのやり取りは一生忘れないのだろうなあと思った。

2018 sakura
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駒カット

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この写真を見て何か気づいてもらえるだろうか?シード16600とチュードルの青サブ79190。そうである、そうである。ピンポン!ピンポン!と、待ち切れないので勝手に話を進める。ともに6時側のブレスが4駒しかない。5桁時代のロレックスのハードブレスは最大5つまでしか減らすことができず、これが細腕のロレ好きを悩ませてきた。手首が細い人の左腕を見ると、大抵は時計本体が手首の出っ張った骨がある向こう側にビロ~ンとだらしなく落ちている。これはみっともないし、ブレスもすぐに伸びる。

そこで駒カットである。これまで自己所有品をOHに出すたびにロレックスのカウンターでもずっとそれを薦められてきた。クラスプが手首の真裏にきた際に時計の文字盤は真上か、やや手前(顔のほう)に向くのが正しいと。6時側が長いと時計は顔のあっち側に行く。以前からシードは4駒にしたものを愛用してきたのだが、今回チュードルの青サブもOH時に駒カットしてもらったのだ。しかも、ややマニアックな話になるのだがオリジナルの巻き9315から無垢に交換しての駒カット。非常に珍しいチュードル78500のブレスなのだ。私はまさか78500が今さら入手出来るなど思ってもみなかった。さすがに日本には在庫がなくスイスからの取り寄せでOHに3ヶ月もかかったのだが、念願のチュードル刻印のハードブレスを入手できたのですっごく嬉しい。ポカ~ンの人も多いだろうが愚にもつかない話題なのでスルーしてもらって構わない。

ところで、駒カットとはリセールを無視した考えでもある。時計市場においてはオリジナルであることが最も重要視されるが、あるべき姿ではなくすという意味において、そして二度と元には戻せないという意味において、駒の切断は間違いなく時計のオリジナリティーを損なう。つまり価値が下がる。従って、売却のことを考えたら大きなマイナスであろうが、私は基本的には時計を手放すことをやめたのであまり気にならないのだ。気にならないどころか、その行為によってより時計を自分の側に引き寄せた気さえする。オイスタージャンキーの彼がサブの裏蓋に OYSTER JUNKY と刻んだのにちょっと近い感覚かもしれない。

いつか時計に興味がなくなったりバカバカしくなったりして手放す時が来るかもしれないが、それまでは出来るだけ手元に置いておきたいと思うようになった。人でも物でも、つながった縁は大事にしたい、年を取ったせいかつくづくそう思う。
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時計の思い出

本日、ショップのHPのトップに掲載したシード16600(すでにHOLD)は1年前の開業時の目玉として用意した懐かしい個体である。HPの左側で店名ロゴと一緒に写っている写真の被写体となった個体でもある。お世話になったありがたい方々を経由して今回戻って来てくれて、そして又旅立っていく。「時計は回るよ、ぐるぐると」である。

そして何を隠そう、この個体は実は過去に私が所有していたものだ。何年前のことだろう。燦燦と太陽の日差しが眩しいであろう地中海はコルシカ島のお店からこの時計はやって来た。向こうのイタリア人はとっても陽気な男で、メールの末尾はいつも「チャオ」。交渉の途中で彼はバカンスに入ってしまったのだが、そこでのきれいな写真を送ってきてくれるような男だった。この時計を思い出す時にはいつも、訪れたことなどないコルシカ島の真っ青な海と白い雲や波頭が脳裏に浮かぶ。おそらくは一生縁がないであろう地中海に浮かぶ島の景観をイメージとして届けてくれたのは「チャオ」の兄ちゃんなのだ。

時計には思い出がいっぱい詰まっている。だが、私に関して書くなら、その思い出の多くは購入時の人とのやり取りやふれあいであることが多い。私は国内外の時計ショップさんからたくさんの良い思い出をもらった。ここで書き表すことなどできないぐらいのお世話にもなった。この年になって時計屋稼業を志したのもそういう思いがベースにあるからだ。

V44シリアルのシードは帰ってきて又すぐに旅立つ。せっかくなので、もう一度書いておく。この時計はコルシカ島からやってきた。地図を見ると地中海のニースやジェノバの南方に位置する海に囲まれた大きな島だ。行ったことはないが、きっと地中海を吹き渡る風は気持ち良く、真っ青な海に太陽の光が反射してきらきらと輝いていていることだろう。楽園のような場所に違いない。この時計はそんな島からやってきた。

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まだコルシカにあった頃「チャオ」が送ってくれた写真

σ(シグマ)文字盤

このブログを自分の確認用に使うことが多く、先日もシグマ文字盤のσの位置について確認をしようと探すも見つからない。あれ?とさらに深く探すと非公開のまま過去の下書きに埋もれていたのを発見。アップを忘れていたようだ。当該文章の時事案件がいかにも古いので文章を丸ごと公開するのはやめるがシグマ(σ)について簡単にだけ記しておきたい。

この謎の文様σはΣ(シグマ)の小文字。ある時期の時計の文字盤に見受けられる。70年代前半のヴィンテージをお持ちの方はぜひシゲシゲと眺めてみていただきたい。目を凝らさないと見えない小ささ。驚くほどのプレミアムはついていないがレアはレア。このマークの意味について、ずいぶん前に海外在住のマニアに質問して以下のような回答をもらった(メールそのものは失くした)。記憶をたどって書くと、1970年代前半にスイスの時計業界だか素材供給側だかが、素材に貴金属を使っている高級品の証として記載。ロレックスに限ったことではなく、スイスの他ブランドにも見受けられる。その記載は非常に短い期間で終了した。確かこんな内容だったと思う。調べてみると確かに1974年前後製造の時計に集中している。ただ、そらに詳しい経緯やその文様がなぜシグマの小文字のこれ「σ」なのかについてはよくわからない。知っている人がいたらぜひ教えていただきたい。

遊び心というわけではないだろうが、こういうのが付いていたりいなかったりというのは面白い。それをまた世界中のロレオタたちが追求や解明する様もまた。他にもセリフダイヤル、ロリポップ、パンチラ、アンダーバーなど多くの細かい仕様違いがあって楽しい。

下記がσダイヤルだが、このマークがTの真横、28・29および31・32のラインの中に収まるパターンもある。

6263 σ

徒然に

今日は日記のごとく徒然に。冬は決して好きではないが、真夏にヴィンテージ時計の使用を控えている私にとっては楽しみな季節でもある。高温多湿の日本の夏は古い時計には劣悪な環境だと私は考えており、5月から10月ぐらいはほぼ16600一本で通している。さすがに毎日つけていると新鮮味もなく飽きてくるが、そこはグッと我慢。10月に入り涼しくなると、普段は棚の奥に収納し月に2回だけ除湿を実施している時計ケースをおもむろに取り出し、一本一本の竜頭をゆっくりと巻き、そしていつでもピックアップできるよう乱雑にトレイの上に並べる。それが私の少し早い冬支度の儀式であり、これら発売から30年、40年経った古い時計たちの出番となるのだ。逆に半年近くの時をともに過ごしたシードとは暫しの別れ。来年の5月までさらば。またあのキラキラと輝く初夏の日差しとともに会おう。

そして今は12月。大して寒くはない東京の12月。師走。いやはや早いものだ。

先々週六義園に紅葉を見に行った。東京住まいではない人に説明すると六義園(りくぎえんと読む)は忠臣蔵に出てくる柳沢吉保が所有していた庭園で今ではライトアップで楽しめる紅葉の名所。若いころは花や木々になどまったく興味はなかったのだが今はやばいほど胸にしみる。無常を想うということか。時計ブログゆえ写真のアップは控えておく。多忙な人こそ、たまには立ち止まって、今の季節をしっかりと感じ取ったほうがよい。時はあっという間に過ぎ去ってゆく。

話題を変える。最近のウォッチ・ザ・ウォッチでの販売では何といってもオメガのジェミニ4号が個人的にはピカイチだった。あれは仕入れに苦労したのだ。随分と前から自分が持つ海外のネットワークにオメガ・スピマスの「イタリア限定」と「青ジェミニ4号」の網を張っている。開業直後だからかれこれ1年。これらは中々引っかかって来ないのだ。高額で商談が成立しないのではなく案内そのものが来ない。つまり売りに出ない。前者は500個限定、後者は2005個限定と元々数が少ない上に、モノが良いので所有者が手放さない。ようやく入ってきた青ジェミニはマジで格好良く店に出すのが惜しいと思ったものだ。でも、これは開業時からとってもお世話になっている方に買ってもらえたからすごくうれしかった。ナイスガイだからあの青は似合うだろうなあ。スピマスの限定モノは本当に格好良いのが多い。カードギャラのエルプリデイトナなどもそうだったが(こんなのもう二度とお目にかかれない)、これからもみなさんに「おおっ!」と言ってもらえるものをがんばって仕入れていきたいと思う。
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写真は販売商品とは別。左がジェミニ4号、右がアポロ11号。

文化としての時計ビジネス

私は時計ビジネスは文化だと本気で思っている。そう思って参入した。様々な解釈や定義はあろうが、文化とはシンプルに「人の心を豊かにする表現」というのが私の定義。ひとつひとつの時計に歴史がある。傷があり、経年があり、思い出があり、人の気持ちがある。私が稚拙ながら毎度時計の紹介文を書いているのは、それが文化だと思っているからだ。このブログを続けていることもそう。力量不足ゆえ、人の心を豊かに…などは到底成し得てはいないことは自覚しているし、時間が無く、なかなか個々の時計にじゅうぶんな時間とともには向き合えていないのが現実だが、そういう思いだけはいつも我が心中にある。オノマックスさんの文章。あれは名文である。文法がどうとか、そういうことではなく、あれはレベルの高い漫談や落語のよう。書こうと思って書けるものではない。私は絶対にかなわない。あの店が繁盛するのはよくわかる。あの人はもはやアーティスト。時計界のアーティスト。ケアーズのオーナーさんもそう。いくつかのヴィンテージショップのHPなど、時計への愛情にあふれていて本当に読んでいて楽しいし参考になる。これらはやはり真の商いであり文化であるとやはり私は思うのだ。皆さんが親しいお店を訪問した際の会話の多くもまたそうであろうし、お店の側もまた同様に楽しませてもらっているはず。時計へのこだわりや蘊蓄(うんちく)は楽しい。この時計の値段は幾らとか、どれだけ儲かるとか損するとか、そればかりではつまらないではないか。時計ビジネス、いや時計そのものが文化であるなら、ゴールが損得であろうはずがない。終わり。今日は短いがたまには。補足。こだわりや蘊蓄は楽しいが度を過ぎると実にウザい。と自戒を込めて書いておく。ほどほどが大事。

本当に欲しい人

先々月のある休日、ロレックス某正規店でのこと。ある顧客が店員に語った言葉が耳に入ってきた。「一部の不届きな転売者のせいで本当に欲しい人の手に渡らない状況はけしからんですね」。

一見(一聴)正しいかに思えるこの主張を私は全否定する。

転売者とは、買ったものをそれよりは高く売って差益を得る者、あるいは得ようと行動する者と定義付ければ、あなたも私も結局のところは転売ヤーである。時計好きの多くはそうであろうし、時計ショップなどは100%転売者である。オノマックスもクォークも宝石広場も、そしてウォッチ・ザ・ウォッチもだ。スイスから仕入れて卸す日本ロレックスだって実はそうだ。そして冒頭の言葉を語った本人も生涯純増を貫かない限り実は結局のところ転売者である。いや、買ったその足で売るのと、購入してから数か月、あるいは数年後に売却するのとでは違うというかもしれないが、本質的には同じ。しかし、その議論は一旦脇に置く。

私が問題にしたいのは転売うんぬんの下りではなく「本当に欲しい人」という箇所だ。「本当に欲しい人」とはおそらく消費者としてその時計が欲しく、かつ購入したら使う人を意味しているのだろう。その行為は正しいというニュアンスが言外にある。正しい購入者、あるいは正当な消費者。その対極に、欲しくもないくせに購入して転売し儲ける「不届きな奴」がいて、それは不正行為、あるいはインモラルだというニュアンスがある。

不届きな転売者がいるせいで「本当に欲しい人」が新型デイトナを買えないことはけしからんこと。そうだろうか…。私は違うと思う。

100万円を超える高級時計を「個人で所有したい人」と「差益を得たい人」。どちらも強い欲望の支配下にある。両者とも、ロレックス・新型デイトナ116500が欲しい。正規店で買いたい。その欲望があまりに強烈であるがゆえに何度も何度も正規ショップに足を運ぶ。時計に興味のない人から見れば、言葉は悪いがどちらも同じ穴のムジナではないのか。私はそう思う。試しに女房殿にどちらが×(バツ)か聞いてみればよい。意外と女性は、コソ買いのアンタ(=本当に欲しい人)の方がよっぽどけしからんと言うかもしれんゾ。

どちらも同じだと私は思う。そしてどちらも否定しない。いや否定どころか肯定する。人の欲望こそが市場を活性化し、極論を言えば社会を発展させていると思うからだ。だが、買えないからといって、欲しい者同士で一方が他方を批判するのはおかしいだろうということを言いたかった。更に書けば文句を言うべき相手が違うだろうとも。デイトナが手に入らないこの状況を作っているのは「転売者」ではない。多くの人を困らせ、疲弊させ、失望と徒労を味あわせているのはみんなが大好きなロレックスなのだ。いくらロレックスが好きで、そのブランドを愛し、自らをロレ病などと自嘲しても、人はその奴隷ではない。例え相手が大好きなロレ様だろうとおかしいことにはおかしいと言うべきだし、伝える手段がなかったとしても心中でずっとそう思い続けるべきではないか。供給がないことだけではなく、自分が金を出したわけでもない店員が、客の目の前で新品時計の保護シールを剥がすのとか絶対におかしい。嘘か本当か、店で見つけても銀行に金を下ろしにいく間もHOLDしてくれないとか、電話で確認したら奇跡的に在庫があったが取り置きしてくれないのでその店のある街まで2時間車をぶっ飛ばしたとか。わはは。これマジだったら相当だな。血相変えてハンドル握っただろうな。危ないなあ。「待ってろ、俺のでいとな~~~~~~~!」。

私は新型デイトナに興味がない。個人の時計好きとしてまったく興味がない。上に書いたように今現在のロレックスという会社のやり方に腹も立てているので現行品を買おうとも思わないし好きではない。もしフラっと正規店に行って新型デイトナが売っていたってもちろん買わ、う。ハハハ。どっちだよ。買う。絶対に買う。誰に何といわれようがやっぱり買うだろ。これを読んでいる人もそうだと思う。そして、使ってホクホクの人もいるだろうし、中古屋へ持ち込んで差益を手にしてウハウハの人もいるだろう。ホクホク、ウハウハどっちもいいではないか。その人がハッピーなら尚のこと。これら行為は果たして「けしからん」のだろうか。ロレックスにとっていびつな状況をロレックス自身が作り上げてしまっているくせに、後者の顧客をまるで違反者か悪徳者であるかのように扱うことにやっぱり私は納得がいかないのである。

悪い癖でまた私の話が逸れつつある。ということで、最後にもう一度今日の本題について書いておきたい。人が時計を欲しいと思う気持ちに本当もくそもない。みんな欲しいのだ。そして手に入れた人をやっかむことはやめよう。「良かったな。おめでとう」って気持ちよく言ってやれる男であろうよ。いくつになろうとも。プラス、長いものに巻かれるんじゃなく、おかしいことはおかしいと言い続けよう。これもまたいくつになろうとも。

時計は回るよグルグルと

かつて私はロレックス好きというのは数えきれないぐらいの数の人がいると思っていた。コアからグレーゾーン、そして初心者まで含めると、それこそ数万人、いや数十万人はいると。だが、今私は自分のその感覚を大きく下方修正している。実はすごく少ないのではないかと。なぜそう思うかというと、どうも少ない数の人が、少ない数の時計を頻繁にぐるぐる回しているとしか思えないからだ。

以前の記事で、私が過去に手放して後悔していた個体をあるお店で偶然に発見し買い戻した話を書いた。当時の私は、この広い日本のマーケットで果たした再会を「奇跡」だと思っていたのだが、昨年10月に店をやってから、過去に私個人が手放した時計が2本、買取りで入って来たという事実がある。見覚えあるなあと思ってシリアルを確認したらビンゴである。私が過去に数百本のロレックスを売り買いしてきたならわかるが、開業前の私が数年間で買って手放したロレックスなどたかが知れている。手放したそのうちの合計3本と妙な再会を果たしたこと、これをどうとらえるべきか。

つまり、非常に少ない顧客が、これまた少ない個体をぐるぐると回しているというのが私のあまり当たって欲しくない見立てなのだ。過去に私が購入し手放した時計というのはどれも市場ではなかなかのモノばかりだ。こう書くと自慢のように聞こえてしまうかもしれないが、まあ事実だ。そういう個体は、日々情報をキャッチしようと餓狼のごとくネットを徘徊する(そうは多くない)ロレマニアたちが買い占め、それらをこれまた飽きっぽい(失礼!)ロレマニアが数年単位、時には数か月単位で手放し、それをまた別の狼がゲットするという構図でグルグルと回っているのではないか。

つまり、はっきり書くと、コアなロレ好きの数は実は少ない。そして、決して若くはなく、少々書きづらいが、、、彼ら、つまり皆さんはとても飽きっぽい。更に書くと、新しい時計を買う際に結構な頻度で手持ちを手放す。そういう少数の、ロレックスがめっちゃ好きだけど、すぐに飽きてしまう人々によって時計がグルグルと回り、中古ロレックスというマーケットが成り立っているのではないかと見立てた。実際のところコアは700人ぐらいしかいないのではないだろうか(笑)。いやもちろん冗談である。冗談だからわざわざ(笑)と書いた。700人なんて少なすぎてシャレにならない。たが、ではその10倍の7000名いるとオマエは本当に思うかと聞かれたら、とてもじゃないが「いる」とは断言出来ないな。まったくその実感はない。小野さんとこもいつも常連さんが買っていて、「初めてのお買い上げありがとうございました」の記述は滅多に見ない。同業の新着時計には「あれ、この個体は先日…」というものが結構多い。やっぱりグルグルなのではと思うが、まあそれならそれで良いし皆で仲良くやっていこうではないか。結局のところ、あなたも僕もキミも俺もみんな変態なのだから。

ミッションズ

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オメガの限定版には熱いのが多い。中でもこのミッションズシリーズは商品企画としてとても秀逸。合計23本のうちの1本は記念すべきスピマス1stのレプリカ、残りの22本にはアポロ、ジェミニ、スカイラボという各宇宙計画を象徴するイラストが文字盤左のインダイヤルに刻印された。合計23本が限定40セット。それらの時計には、ラグ裏に・・/ 40 の数字が刻印されている。各プロジェクトの飛行船は、無事に月に到達してミッションを達成したものもあれば、爆発炎上して失敗したものもあるが、挑み続けた系譜こそがNASAの栄光であり、そこに供給し続けたオメガの誇りでもある。収納ケースは宇宙服と同じ素材で作成されているという凝り方。殿様商売のロレックスはこういうことは絶対にやらないだろうしやる発想すら持ち得ないだろう。みんなが不快に思う品薄商売が関の山だ、となぜか今日は少々手厳しい。話をオメガに戻す。発売は1998年。こんなオモロイ企画をコレクターが見逃すわけがなくその40セットは速攻で売り切れたという。販売終了後は世界中から再販の要望があり、それに応える形で各モデルが150本限定で復刻された。こちらにはラグ裏に限定の刻印はない。たった150本であるから当然入手は簡単ではない。

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アポロのエンブレム。他にジェミニ、スカイラボ計画のエンブレムがある

22種のエンブレムはどれも個性があって面白く、好みが分かれるところで、かつセンスが問われる。ただでさえ入手困難な中でも、その22種にはやはり人気のランクというか、激レアなものがあって、これまで売られているのを一度も見たことがないモデルも多いし、モノによっては軽く100万円を超える値付けがされている。日本ではその状況を把握していない個人や店が安価で市場に出してたりするのが面白い。こういう現象は人気が行き渡ってしまっているロレックスではまず見受けられず、そういう意味でも他のブランドに目を向けるとこの趣味の楽しみはもっと広がる。まだ店に卸していないミッションズが何本か私の手元にあり、いずれ販売するが、激レアがあるのでお楽しみに。

せっかくなのでもう少しオメガの話題を。オメガの限定版が注目されているのは世界的な現象で、かつては比較的安価に入手できたアラスカプロジェクトや丸井限定あたりも2倍近く高騰してしまった。私はイタリア限定(下記写真)が好みで個人的にずっと欲しい欲しいと思っていたが、何せ500個限定なので滅多に売りに出ない。先般ようやく海外のショップで出て、その販売価格は130万円。eBayでは250万円。ここまで幅がある理由は数が少なすぎて相場を形成できないから。こういうのが本当のレア品というのだろう。個体によってはもっとアイボリーに変色しており、同じ白系でもどこか冷徹で剛な印象を与える三越限定やアポロ11号とは違って、柔らかみというか妖艶さというか、イタリア向けというだけあって何とも表現しがたいヨーロッパ的な美をまとった時計なのだと絶賛しておく。こういうのは個人的にも欲しいが、仕入れて売ることができたらちょっと鼻が高い。いやはや惚れ惚れするフォルムだ。「ロレックスだけが時計ではない」キャンペーン中。
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イタリア限定500個 アルビーノ 3593.20 手巻き

前回記事の補足として

これは前回記事の補足でもあるのだが、実際に4桁や5桁は市場から急速に消え始めている。コレクターが手放さないことと海外への流出という2つの要因によるもので、欲しいものがある人は押さえるべきだと書いた。また、チュードルのスポーツ系(サブ&クロノタイム)は鉄板だとも。これは決して煽りではない。もはや世界的な事象である。

ロレックスの購入を投資と見做す人、あるいは結果として差益にとてもこだわる人が想像以上に多いというのが時計ビジネスに手を染めてわかったことのひとつ。その是非はともかくとして、そういう人はおそらくチュードル・スポーツ系の高騰は見抜けていたはず。中古ロレックスの異常なまでの高騰、さすがに手の出なくなった層にとって、ロレックスの弟分であるチュードルのスポーツ系に目が行くことは自然な流れだった。チュードルの青サブやカマボコが良い例。春先ぐらいまでは結構安価に購入できたはずであるが、今や70万円前後、驚異的な180%アップほどの値上がり。クロノタイムに関しては、カマボコ791~はもちろん、後継の792~シリーズも良い時計である。まだ比較的こちらのほうは買いやすい価格で推移しており、何度も書くがタイガー以外なら買っておくのは有り、おそらくは早晩騰がっていくだろう。私は個人的にチュードルのスポーツは理屈抜きに好きである。青サブは持っているが、クロノタイムも個人的に所有しておいてもよかったかなと今は思う。とにかくチュードルのいい意味での軽さや安っぽさは(私には)最高である。

【オマケ】
本日、ショップHPにアップした116034を見ていただけだだろうか。このブログのドメイン名でもあり、私が最も愛好したモデルのひとつである。開業して以来、この時計を販売するのが私のささやかな夢でもあった。海外に持っているあらゆる伝手に情報の網を張っていたのだが、やはり難易度高く、これまでこの時計はまったく引っかかって来なかった。過去に個人として所有していたが、理由(わけ)あって手放してしまい、違うシリアルであってもこのモデルの実物を再び手にすることはないと半ばあきらめていたのだ。従ってこの時計を買い取らせてもらったときは感激だった。この場を借りて、まず買い取らせていただいた方に感謝、そしてご注文いただいた方に感謝。お二人ともこれまで過去にも購入や下取りをさせていただいており、大事なお客さんから大事なお客さんにつなぐことが出来たのもまたうれしいことであった。時計屋冥利に尽きた1日だった。
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