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時計の思い出

本日、ショップのHPのトップに掲載したシード16600(すでにHOLD)は1年前の開業時の目玉として用意した懐かしい個体である。HPの左側で店名ロゴと一緒に写っている写真の被写体となった個体でもある。お世話になったありがたい方々を経由して今回戻って来てくれて、そして又旅立っていく。「時計は回るよ、ぐるぐると」である。

そして何を隠そう、この個体は実は過去に私が所有していたものだ。何年前のことだろう。燦燦と太陽の日差しが眩しいであろう地中海はコルシカ島のお店からこの時計はやって来た。向こうのイタリア人はとっても陽気な男で、メールの末尾はいつも「チャオ」。交渉の途中で彼はバカンスに入ってしまったのだが、そこでのきれいな写真を送ってきてくれるような男だった。この時計を思い出す時にはいつも、訪れたことなどないコルシカ島の真っ青な海と白い雲や波頭が脳裏に浮かぶ。おそらくは一生縁がないであろう地中海に浮かぶ島の景観をイメージとして届けてくれたのは「チャオ」の兄ちゃんなのだ。

時計には思い出がいっぱい詰まっている。だが、私に関して書くなら、その思い出の多くは購入時の人とのやり取りやふれあいであることが多い。私は国内外の時計ショップさんからたくさんの良い思い出をもらった。ここで書き表すことなどできないぐらいのお世話にもなった。この年になって時計屋稼業を志したのもそういう思いがベースにあるからだ。

V44シリアルのシードは帰ってきて又すぐに旅立つ。せっかくなので、もう一度書いておく。この時計はコルシカ島からやってきた。地図を見ると地中海のニースやジェノバの南方に位置する海に囲まれた大きな島だ。行ったことはないが、きっと地中海を吹き渡る風は気持ち良く、真っ青な海に太陽の光が反射してきらきらと輝いていていることだろう。楽園のような場所に違いない。この時計はそんな島からやってきた。

16600.jpg
まだコルシカにあった頃「チャオ」が送ってくれた写真

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σ(シグマ)文字盤

このブログを自分の確認用に使うことが多く、先日もシグマ文字盤のσの位置について確認をしようと探すも見つからない。あれ?とさらに深く探すと非公開のまま過去の下書きに埋もれていたのを発見。アップを忘れていたようだ。当該文章の時事案件がいかにも古いので文章を丸ごと公開するのはやめるがシグマ(σ)について簡単にだけ記しておきたい。

この謎の文様σはΣ(シグマ)の小文字。ある時期の時計の文字盤に見受けられる。70年代前半のヴィンテージをお持ちの方はぜひシゲシゲと眺めてみていただきたい。目を凝らさないと見えない小ささ。驚くほどのプレミアムはついていないがレアはレア。このマークの意味について、ずいぶん前に海外在住のマニアに質問して以下のような回答をもらった(メールそのものは失くした)。記憶をたどって書くと、1970年代前半にスイスの時計業界だか素材供給側だかが、素材に貴金属を使っている高級品の証として記載。ロレックスに限ったことではなく、スイスの他ブランドにも見受けられる。その記載は非常に短い期間で終了した。確かこんな内容だったと思う。調べてみると確かに1974年前後製造の時計に集中している。ただ、そらに詳しい経緯やその文様がなぜシグマの小文字のこれ「σ」なのかについてはよくわからない。知っている人がいたらぜひ教えていただきたい。

遊び心というわけではないだろうが、こういうのが付いていたりいなかったりというのは面白い。それをまた世界中のロレオタたちが追求や解明する様もまた。他にもセリフダイヤル、ロリポップ、パンチラ、アンダーバーなど多くの細かい仕様違いがあって楽しい。

下記がσダイヤルだが、このマークがTの真横、28・29および31・32のラインの中に収まるパターンもある。

6263 σ

徒然に

今日は日記のごとく徒然に。冬は決して好きではないが、真夏にヴィンテージ時計の使用を控えている私にとっては楽しみな季節でもある。高温多湿の日本の夏は古い時計には劣悪な環境だと私は考えており、5月から10月ぐらいはほぼ16600一本で通している。さすがに毎日つけていると新鮮味もなく飽きてくるが、そこはグッと我慢。10月に入り涼しくなると、普段は棚の奥に収納し月に2回だけ除湿を実施している時計ケースをおもむろに取り出し、一本一本の竜頭をゆっくりと巻き、そしていつでもピックアップできるよう乱雑にトレイの上に並べる。それが私の少し早い冬支度の儀式であり、これら発売から30年、40年経った古い時計たちの出番となるのだ。逆に半年近くの時をともに過ごしたシードとは暫しの別れ。来年の5月までさらば。またあのキラキラと輝く初夏の日差しとともに会おう。

そして今は12月。大して寒くはない東京の12月。師走。いやはや早いものだ。

先々週六義園に紅葉を見に行った。東京住まいではない人に説明すると六義園(りくぎえんと読む)は忠臣蔵に出てくる柳沢吉保が所有していた庭園で今ではライトアップで楽しめる紅葉の名所。若いころは花や木々になどまったく興味はなかったのだが今はやばいほど胸にしみる。無常を想うということか。時計ブログゆえ写真のアップは控えておく。多忙な人こそ、たまには立ち止まって、今の季節をしっかりと感じ取ったほうがよい。時はあっという間に過ぎ去ってゆく。

話題を変える。最近のウォッチ・ザ・ウォッチでの販売では何といってもオメガのジェミニ4号が個人的にはピカイチだった。あれは仕入れに苦労したのだ。随分と前から自分が持つ海外のネットワークにオメガ・スピマスの「イタリア限定」と「青ジェミニ4号」の網を張っている。開業直後だからかれこれ1年。これらは中々引っかかって来ないのだ。高額で商談が成立しないのではなく案内そのものが来ない。つまり売りに出ない。前者は500個限定、後者は2005個限定と元々数が少ない上に、モノが良いので所有者が手放さない。ようやく入ってきた青ジェミニはマジで格好良く店に出すのが惜しいと思ったものだ。でも、これは開業時からとってもお世話になっている方に買ってもらえたからすごくうれしかった。ナイスガイだからあの青は似合うだろうなあ。スピマスの限定モノは本当に格好良いのが多い。カードギャラのエルプリデイトナなどもそうだったが(こんなのもう二度とお目にかかれない)、これからもみなさんに「おおっ!」と言ってもらえるものをがんばって仕入れていきたいと思う。
omega gemini 4 apollo 11 -2
写真は販売商品とは別。左がジェミニ4号、右がアポロ11号。

文化としての時計ビジネス

私は時計ビジネスは文化だと本気で思っている。そう思って参入した。様々な解釈や定義はあろうが、文化とはシンプルに「人の心を豊かにする表現」というのが私の定義。ひとつひとつの時計に歴史がある。傷があり、経年があり、思い出があり、人の気持ちがある。私が稚拙ながら毎度時計の紹介文を書いているのは、それが文化だと思っているからだ。このブログを続けていることもそう。力量不足ゆえ、人の心を豊かに…などは到底成し得てはいないことは自覚しているし、時間が無く、なかなか個々の時計にじゅうぶんな時間とともには向き合えていないのが現実だが、そういう思いだけはいつも我が心中にある。オノマックスさんの文章。あれは名文である。文法がどうとか、そういうことではなく、あれはレベルの高い漫談や落語のよう。書こうと思って書けるものではない。私は絶対にかなわない。あの店が繁盛するのはよくわかる。あの人はもはやアーティスト。時計界のアーティスト。ケアーズのオーナーさんもそう。いくつかのヴィンテージショップのHPなど、時計への愛情にあふれていて本当に読んでいて楽しいし参考になる。これらはやはり真の商いであり文化であるとやはり私は思うのだ。皆さんが親しいお店を訪問した際の会話の多くもまたそうであろうし、お店の側もまた同様に楽しませてもらっているはず。時計へのこだわりや蘊蓄(うんちく)は楽しい。この時計の値段は幾らとか、どれだけ儲かるとか損するとか、そればかりではつまらないではないか。時計ビジネス、いや時計そのものが文化であるなら、ゴールが損得であろうはずがない。終わり。今日は短いがたまには。補足。こだわりや蘊蓄は楽しいが度を過ぎると実にウザい。と自戒を込めて書いておく。ほどほどが大事。

本当に欲しい人

先々月のある休日、ロレックス某正規店でのこと。ある顧客が店員に語った言葉が耳に入ってきた。「一部の不届きな転売者のせいで本当に欲しい人の手に渡らない状況はけしからんですね」。

一見(一聴)正しいかに思えるこの主張を私は全否定する。

転売者とは、買ったものをそれよりは高く売って差益を得る者、あるいは得ようと行動する者と定義付ければ、あなたも私も結局のところは転売ヤーである。時計好きの多くはそうであろうし、時計ショップなどは100%転売者である。オノマックスもクォークも宝石広場も、そしてウォッチ・ザ・ウォッチもだ。スイスから仕入れて卸す日本ロレックスだって実はそうだ。そして冒頭の言葉を語った本人も生涯純増を貫かない限り実は結局のところ転売者である。いや、買ったその足で売るのと、購入してから数か月、あるいは数年後に売却するのとでは違うというかもしれないが、本質的には同じ。しかし、その議論は一旦脇に置く。

私が問題にしたいのは転売うんぬんの下りではなく「本当に欲しい人」という箇所だ。「本当に欲しい人」とはおそらく消費者としてその時計が欲しく、かつ購入したら使う人を意味しているのだろう。その行為は正しいというニュアンスが言外にある。正しい購入者、あるいは正当な消費者。その対極に、欲しくもないくせに購入して転売し儲ける「不届きな奴」がいて、それは不正行為、あるいはインモラルだというニュアンスがある。

不届きな転売者がいるせいで「本当に欲しい人」が新型デイトナを買えないことはけしからんこと。そうだろうか…。私は違うと思う。

100万円を超える高級時計を「個人で所有したい人」と「差益を得たい人」。どちらも強い欲望の支配下にある。両者とも、ロレックス・新型デイトナ116500が欲しい。正規店で買いたい。その欲望があまりに強烈であるがゆえに何度も何度も正規ショップに足を運ぶ。時計に興味のない人から見れば、言葉は悪いがどちらも同じ穴のムジナではないのか。私はそう思う。試しに女房殿にどちらが×(バツ)か聞いてみればよい。意外と女性は、コソ買いのアンタ(=本当に欲しい人)の方がよっぽどけしからんと言うかもしれんゾ。

どちらも同じだと私は思う。そしてどちらも否定しない。いや否定どころか肯定する。人の欲望こそが市場を活性化し、極論を言えば社会を発展させていると思うからだ。だが、買えないからといって、欲しい者同士で一方が他方を批判するのはおかしいだろうということを言いたかった。更に書けば文句を言うべき相手が違うだろうとも。デイトナが手に入らないこの状況を作っているのは「転売者」ではない。多くの人を困らせ、疲弊させ、失望と徒労を味あわせているのはみんなが大好きなロレックスなのだ。いくらロレックスが好きで、そのブランドを愛し、自らをロレ病などと自嘲しても、人はその奴隷ではない。例え相手が大好きなロレ様だろうとおかしいことにはおかしいと言うべきだし、伝える手段がなかったとしても心中でずっとそう思い続けるべきではないか。供給がないことだけではなく、自分が金を出したわけでもない店員が、客の目の前で新品時計の保護シールを剥がすのとか絶対におかしい。嘘か本当か、店で見つけても銀行に金を下ろしにいく間もHOLDしてくれないとか、電話で確認したら奇跡的に在庫があったが取り置きしてくれないのでその店のある街まで2時間車をぶっ飛ばしたとか。わはは。これマジだったら相当だな。血相変えてハンドル握っただろうな。危ないなあ。「待ってろ、俺のでいとな~~~~~~~!」。

私は新型デイトナに興味がない。個人の時計好きとしてまったく興味がない。上に書いたように今現在のロレックスという会社のやり方に腹も立てているので現行品を買おうとも思わないし好きではない。もしフラっと正規店に行って新型デイトナが売っていたってもちろん買わ、う。ハハハ。どっちだよ。買う。絶対に買う。誰に何といわれようがやっぱり買うだろ。これを読んでいる人もそうだと思う。そして、使ってホクホクの人もいるだろうし、中古屋へ持ち込んで差益を手にしてウハウハの人もいるだろう。ホクホク、ウハウハどっちもいいではないか。その人がハッピーなら尚のこと。これら行為は果たして「けしからん」のだろうか。ロレックスにとっていびつな状況をロレックス自身が作り上げてしまっているくせに、後者の顧客をまるで違反者か悪徳者であるかのように扱うことにやっぱり私は納得がいかないのである。

悪い癖でまた私の話が逸れつつある。ということで、最後にもう一度今日の本題について書いておきたい。人が時計を欲しいと思う気持ちに本当もくそもない。みんな欲しいのだ。そして手に入れた人をやっかむことはやめよう。「良かったな。おめでとう」って気持ちよく言ってやれる男であろうよ。いくつになろうとも。プラス、長いものに巻かれるんじゃなく、おかしいことはおかしいと言い続けよう。これもまたいくつになろうとも。

時計は回るよグルグルと

かつて私はロレックス好きというのは数えきれないぐらいの数の人がいると思っていた。コアからグレーゾーン、そして初心者まで含めると、それこそ数万人、いや数十万人はいると。だが、今私は自分のその感覚を大きく下方修正している。実はすごく少ないのではないかと。なぜそう思うかというと、どうも少ない数の人が、少ない数の時計を頻繁にぐるぐる回しているとしか思えないからだ。

以前の記事で、私が過去に手放して後悔していた個体をあるお店で偶然に発見し買い戻した話を書いた。当時の私は、この広い日本のマーケットで果たした再会を「奇跡」だと思っていたのだが、昨年10月に店をやってから、過去に私個人が手放した時計が2本、買取りで入って来たという事実がある。見覚えあるなあと思ってシリアルを確認したらビンゴである。私が過去に数百本のロレックスを売り買いしてきたならわかるが、開業前の私が数年間で買って手放したロレックスなどたかが知れている。手放したそのうちの合計3本と妙な再会を果たしたこと、これをどうとらえるべきか。

つまり、非常に少ない顧客が、これまた少ない個体をぐるぐると回しているというのが私のあまり当たって欲しくない見立てなのだ。過去に私が購入し手放した時計というのはどれも市場ではなかなかのモノばかりだ。こう書くと自慢のように聞こえてしまうかもしれないが、まあ事実だ。そういう個体は、日々情報をキャッチしようと餓狼のごとくネットを徘徊する(そうは多くない)ロレマニアたちが買い占め、それらをこれまた飽きっぽい(失礼!)ロレマニアが数年単位、時には数か月単位で手放し、それをまた別の狼がゲットするという構図でグルグルと回っているのではないか。

つまり、はっきり書くと、コアなロレ好きの数は実は少ない。そして、決して若くはなく、少々書きづらいが、、、彼ら、つまり皆さんはとても飽きっぽい。更に書くと、新しい時計を買う際に結構な頻度で手持ちを手放す。そういう少数の、ロレックスがめっちゃ好きだけど、すぐに飽きてしまう人々によって時計がグルグルと回り、中古ロレックスというマーケットが成り立っているのではないかと見立てた。実際のところコアは700人ぐらいしかいないのではないだろうか(笑)。いやもちろん冗談である。冗談だからわざわざ(笑)と書いた。700人なんて少なすぎてシャレにならない。たが、ではその10倍の7000名いるとオマエは本当に思うかと聞かれたら、とてもじゃないが「いる」とは断言出来ないな。まったくその実感はない。小野さんとこもいつも常連さんが買っていて、「初めてのお買い上げありがとうございました」の記述は滅多に見ない。同業の新着時計には「あれ、この個体は先日…」というものが結構多い。やっぱりグルグルなのではと思うが、まあそれならそれで良いし皆で仲良くやっていこうではないか。結局のところ、あなたも僕もキミも俺もみんな変態なのだから。

ミッションズ

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オメガの限定版には熱いのが多い。中でもこのミッションズシリーズは商品企画としてとても秀逸。合計23本のうちの1本は記念すべきスピマス1stのレプリカ、残りの22本にはアポロ、ジェミニ、スカイラボという各宇宙計画を象徴するイラストが文字盤左のインダイヤルに刻印された。合計23本が限定40セット。それらの時計には、ラグ裏に・・/ 40 の数字が刻印されている。各プロジェクトの飛行船は、無事に月に到達してミッションを達成したものもあれば、爆発炎上して失敗したものもあるが、挑み続けた系譜こそがNASAの栄光であり、そこに供給し続けたオメガの誇りでもある。収納ケースは宇宙服と同じ素材で作成されているという凝り方。殿様商売のロレックスはこういうことは絶対にやらないだろうしやる発想すら持ち得ないだろう。みんなが不快に思う品薄商売が関の山だ、となぜか今日は少々手厳しい。話をオメガに戻す。発売は1998年。こんなオモロイ企画をコレクターが見逃すわけがなくその40セットは速攻で売り切れたという。販売終了後は世界中から再販の要望があり、それに応える形で各モデルが150本限定で復刻された。こちらにはラグ裏に限定の刻印はない。たった150本であるから当然入手は簡単ではない。

missions-2.jpg
アポロのエンブレム。他にジェミニ、スカイラボ計画のエンブレムがある

22種のエンブレムはどれも個性があって面白く、好みが分かれるところで、かつセンスが問われる。ただでさえ入手困難な中でも、その22種にはやはり人気のランクというか、激レアなものがあって、これまで売られているのを一度も見たことがないモデルも多いし、モノによっては軽く100万円を超える値付けがされている。日本ではその状況を把握していない個人や店が安価で市場に出してたりするのが面白い。こういう現象は人気が行き渡ってしまっているロレックスではまず見受けられず、そういう意味でも他のブランドに目を向けるとこの趣味の楽しみはもっと広がる。まだ店に卸していないミッションズが何本か私の手元にあり、いずれ販売するが、激レアがあるのでお楽しみに。

せっかくなのでもう少しオメガの話題を。オメガの限定版が注目されているのは世界的な現象で、かつては比較的安価に入手できたアラスカプロジェクトや丸井限定あたりも2倍近く高騰してしまった。私はイタリア限定(下記写真)が好みで個人的にずっと欲しい欲しいと思っていたが、何せ500個限定なので滅多に売りに出ない。先般ようやく海外のショップで出て、その販売価格は130万円。eBayでは250万円。ここまで幅がある理由は数が少なすぎて相場を形成できないから。こういうのが本当のレア品というのだろう。個体によってはもっとアイボリーに変色しており、同じ白系でもどこか冷徹で剛な印象を与える三越限定やアポロ11号とは違って、柔らかみというか妖艶さというか、イタリア向けというだけあって何とも表現しがたいヨーロッパ的な美をまとった時計なのだと絶賛しておく。こういうのは個人的にも欲しいが、仕入れて売ることができたらちょっと鼻が高い。いやはや惚れ惚れするフォルムだ。「ロレックスだけが時計ではない」キャンペーン中。
Speedmaster_Professional_3593-2000_Italian_Albino.jpg
イタリア限定500個 アルビーノ 3593.20 手巻き

前回記事の補足として

これは前回記事の補足でもあるのだが、実際に4桁や5桁は市場から急速に消え始めている。コレクターが手放さないことと海外への流出という2つの要因によるもので、欲しいものがある人は押さえるべきだと書いた。また、チュードルのスポーツ系(サブ&クロノタイム)は鉄板だとも。これは決して煽りではない。もはや世界的な事象である。

ロレックスの購入を投資と見做す人、あるいは結果として差益にとてもこだわる人が想像以上に多いというのが時計ビジネスに手を染めてわかったことのひとつ。その是非はともかくとして、そういう人はおそらくチュードル・スポーツ系の高騰は見抜けていたはず。中古ロレックスの異常なまでの高騰、さすがに手の出なくなった層にとって、ロレックスの弟分であるチュードルのスポーツ系に目が行くことは自然な流れだった。チュードルの青サブやカマボコが良い例。春先ぐらいまでは結構安価に購入できたはずであるが、今や70万円前後、驚異的な180%アップほどの値上がり。クロノタイムに関しては、カマボコ791~はもちろん、後継の792~シリーズも良い時計である。まだ比較的こちらのほうは買いやすい価格で推移しており、何度も書くがタイガー以外なら買っておくのは有り、おそらくは早晩騰がっていくだろう。私は個人的にチュードルのスポーツは理屈抜きに好きである。青サブは持っているが、クロノタイムも個人的に所有しておいてもよかったかなと今は思う。とにかくチュードルのいい意味での軽さや安っぽさは(私には)最高である。

【オマケ】
本日、ショップHPにアップした116034を見ていただけだだろうか。このブログのドメイン名でもあり、私が最も愛好したモデルのひとつである。開業して以来、この時計を販売するのが私のささやかな夢でもあった。海外に持っているあらゆる伝手に情報の網を張っていたのだが、やはり難易度高く、これまでこの時計はまったく引っかかって来なかった。過去に個人として所有していたが、理由(わけ)あって手放してしまい、違うシリアルであってもこのモデルの実物を再び手にすることはないと半ばあきらめていたのだ。従ってこの時計を買い取らせてもらったときは感激だった。この場を借りて、まず買い取らせていただいた方に感謝、そしてご注文いただいた方に感謝。お二人ともこれまで過去にも購入や下取りをさせていただいており、大事なお客さんから大事なお客さんにつなぐことが出来たのもまたうれしいことであった。時計屋冥利に尽きた1日だった。

故きを温ねて新しきを知る

会話中にフト相手の左腕に目を遣るとそこにはエクスプローラーが。ヴィンテージ1016である。ちょっとそれ見せてくれろと手に取らせてもらったのだが、まあ何というかやっぱり絶品だなこれは。70年代前半のマット仕様。ケースの大きさ、デザインの良さ、そしてバランス。文句の付けようがない。昨今では36mmのケースは小さい部類ではあろうが、3針のみというこのデザインではこれ以下も以上もない絶妙なサイズ。私は1016をこれまで所有したことがなく、多分これからもないのだが、エクスプローラーⅠは114270や14270より前の1016ですでに完成の域にあったことを(あくまで主観として)改めて認識する。

故きを温ねて新しきを知る。

逆に「最新こそ最良」という言葉もある。私は半分は正しく、半分は正しくないと思っている。工業製品という側面からだけ見れば最新こそが最良かもしれぬ。しかし、人間に正確な時間を提供するというシンプルな意味において時計の進化はとっくに行く着くところまで行き着いてしまっており、時計は工業製品ではなくもはや装飾品の色合いが濃い。前に時計の価値の大部分はデザインの良し悪しであると断じた。そうであるならば「最新こそ最良」はまったく正しくない。むしろリスクである。

デザインとは表現である。表現の世界は水物。どんなに優秀なアーティストだろうがディレクター(監督)だろうが、表現や制作の現場で最新こそ最良なわけがない。むしろ逆。評価が定まるには長い歳月を必要とすることが多い。そのキャリアや系譜の中に、良いモノもあれば当然のごとく駄作や失敗作もある。いや、むしろ駄作や凡作の方が遥かに多く、またその時々の周辺の流行にも大きく左右され、時に陳腐化し、時に再評価される。歳月が経ってみないとなかなかその真価も見えて来ない。

上に記載したエクスプローラーⅠ 1016などは何と言えばいいか、ケチのつけようがないと言うか、私は自己所有の同じ系譜である114270をこよなく愛好しつつも、かなわないなと素直に思ってしまうのだ。

5桁の高騰が著しい。

ここ数年ひどい値上げを実施した現行6桁の価格を5桁の中古価格が上回ろうかという勢い。それは現行品への失望の表れでもある。人気モデルが手に入らないことへの失望であり、やたら派手で華美になったデザインへの失望であり、更にドレス系や金無垢・宝飾モデルを売りつけたがるメーカー戦略への失望である。そう、ステンレス製の極一部のスポロレを除くと、ロレックス社が売りたい最新現行モデルの多くはあまり人気がないのだ。ドレスモデルのオイパペ、チェリーニ、デイデイト、金無垢デイトナなど。だから市場のお金が4桁、5桁に流れている。これは世界的な傾向であるがゆえに、一部の人気ディスコンモデルは品薄となり価格が高騰したというシンプルな図式。GMTマスターⅡ、エルプリデイトナ、旧グリーンサブなど。

今後については、価格については多少の変動はあるだろうが、価格よりもむしろ危惧すべきは、4桁・5桁がもうこの先生産されることはなく数は減る一方であるという事実。欲しいモデルがある人は本当に押さえておいたほうがいい。コレクターは当分手放さないだろうしし、皆さんが考えている以上に良質な個体は相当数が海外に流れており、この勢いは止まりそうもない。とは言え、中古も人気と不人気の2極化が著しい。個人的にはチュードルのサブ&クロノタイムは鉄板だと確信しているが、それについては長くなりそうなので別の機会に。*でもタイガーは駄目よ。

決算を終えた

また更新が滞ってトップに広告が出てくる始末。仕方なく過去に書いた下書き原稿をアップする。やや古い記事だがご容赦いただきたい。

(ここから)
お陰様で「ウォッチ・ザ・ウォッチ」が先月初めての決算を迎えた。オープンは昨年10月だったが夏に法人成りしていたため6月が決算だったのだ。うちの価格を見ていただければ儲かっていないのはご想像の通りだが、無事に2期目を迎えることが出来たのだからじゅうぶん。人生前向きが肝要。

その謝恩セールで5本出して売れ残ったオメガスピマスAPOLLO 11号。セール後には売れたのだが、実はあれが一番お勧めだった。個体としての状態も素晴らしかったのだが、何よりもデザインが最高に格好良いのと、とにかく市場に出て来ない。限定とはいえ3500個製造されたのでもっと頻繁に出てきても良いのだが、やはり所有者の満足度が高いのであろう。売れ残ったら自分で買い戻そうと思っていた。70万円台という販売価格より遥かに高い価格で海外から仕入れており、それはまあ英語での交渉ミスというか、酔っぱらって(むにゃむにゃ)、まあいい(笑)、色々あったのだ。海外では9千から1万ドルぐらいの値を付けているモデルなのだが、日本ではまだオメガの中古のポジションは定まっておらず、同じモデルが格安で出たりもする。今出ている丸井限定(すでにHOLD)もとてもお買い得。正規OH上がり、その費用10万円超えというから泣ける。30~40万円の時計でもOHの基本料金は8万円。クロノグラフだから仕方ないとは言え、ブランド側は少し考えたほうが良い。オメガ・スピマスは全モデルとは言わないが、希少なモノの値上がりは顕著。日本は海外に比べたらまだ安価で狙い目。丸井限定も意外と出てこないモデルである。50近くまで行くかもしれない。

委託の方では、月末に売れたヴィンテージ・サブ 5513 は抜群の個体だった。あれが数日残ったことについては実に情けない気持ちになったものだ。あの状態で90万円台のフチなし 5513 など他にはないから。「うちはまだまだだなー」だという思いを強くした。買っていただいた方には大変喜んでいただけたようで何より。あれはかなりの上物である。いつか売るならぜひ当社に買い戻させていただきたいが、あれは手放さないほうがいいと私は思う。

自分の抱えている別の業務のせいで店にあまり顔を出せていない。でも、店長さんから「ご購入者様には喜んでいただけたようです」の報告を電話で聞くと本当にうれしくなる。それまで小売店側のそういう言葉は口だけだと思っていた(苦笑)がとんでもない。喜んでもらえたら最高にハッピーで、電話を切ったあとは鼻歌状態である♪。原価割れの商品だってうれしい。特に自分で仕入れたり買取りで入ってきた中で、特に自分が気に入った時計が売れると無性にうれしい。やはりそこは同じ時計好きだからだろうなあとつくづく思うのである。(ここまで)

まあ、色々あって、そんなこんなで日々が流れ、梅雨は過ぎ、いつしか夏真っ盛りで高校野球とか始まっていて、ブログは1ヵ月もサボってしまった。日々暑くて参るが夏は暑いのが正しい。ともにがんばって乗り切ろうではないか。また次回の更新で。
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