本当に好きな時計

私にはいつか書きたいと思いつつまだ書き切れないでいるあるテーマがある。それは「時計とは観念である」というもので、これこそが自分が時計、特にロレックスを愛好するようになって以来の大きな課題のようなもの。それは多少大げさに書けば自身の心中を探る旅のようなもの。まあ年内までに整理してここにアップしたいと思う。

今日は違う話題なのだが、多少そのテーマにも関連する。皆さんにとって本当に好きな時計は何であろうか。それを言い切れないのがロレ好きの性(さが)であろうが、私はもう何年も前からそれは決まっていて、別に隠すことでもないので公表するとチュードルの青サブである。イカ針ではなく、普通のベンツ針。中でも好みの色合いというのがあって、鮮やかすぎず、ややくすんだブルーベゼルのそれ。

小さいし薄いし、とても安っぽい。普段よく使うシード16600やオメガ・スピマスから付け替えるとその貧弱さは決定的である。だがこの地味で安っぽい時計は私の身の丈に合っていると感じざるを得ない。私は体格もごく普通だしイケメンでもなく(だいたいもう歳だ)、ファッションセンスがいい訳でもなく(そもそも大して興味もない)、まあ自分で書くのも何だが要するに私には華がない。だから残念ながらデイトナや金無垢が似合わないということは自分が一番よくわかっている。

元々ブルーは好きで選ぶ服や靴は青系が多いというのもある。書いていて気付いたが、眼鏡やマフラー、海パンも青だ。これはかなりのブルー好きだな。そういうこともあって、飽きやすい色物の割に私は地味なステンレス製の青サブが好きなのだろう。ご存知の通り、ロレックスにはコンビや金無垢はあってもSS製の青サブはない。私は自己顕示欲や承認欲求が時計趣味のベースにはないので(すべての人がそうだとは言わないが)、金無垢や宝石付きに魅かれることもない。この地味さ加減がいい。また、この時計がチュードル・ブランドだから好きなのでもなく、もしこの秀逸なデザインと色調がタグホイヤーやシチズンから出ていれば、私はそれを買い求めるだろう。

この時計への私の扱いは極めて雑である。傷とか気にしたことないし、ブレスを外すときにロレだとするテープ貼りなど絶対にせず、その辺にごろんと転がすように置くこともある。ケースもブレスもう傷だらけ。傷だらけの人生、いや時計。

冒頭に書いた「時計とは観念である」。観念で捉えることなく手にした初めての時計なのかもしれない。最終品番がどうとか、マイネーム・ギャラだとか、ノンポリッシュだとか、出荷国はどこだとか、細かいすべてのパーツがオリジナルかどうかとか、文字のレタリングがどうだとか、タグや当時物の箱なっどの付属品はすべてそろっているかとか、もう数えきれない、本来の道具として時計の本質とは遠いくせに、自分を縛り付ける多くのことから、この時計は解放され自由である。もちろん今比喩的に書いた。解放され自由であるのは私自身だ。

だが、それがゴールではない。それはもはや趣味ですらないからだ。矛盾するようだが、あらゆる拘りや我執に囚われ、惑い、魅了されてこその趣味なのだ。大した意味や意義はなく、ほとんどは金と時間と労力の無駄遣いであり、他人にはまず共感してもらえず、多分ほとんど世の中のためにもならないものが個人の趣味ではないか。世の中のためになる趣味などあるだろうか。ひと様の為になっていることでそれは趣味という領域のものではない気がするのだが。あーあー、すまぬ。時計屋のためになっていた(笑)。ここまで真面目に書いたのに、最後は落語のようなオチに。お後がよろしいようで、、、と書きながら次はいつになることやら。ではまた今度。

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クロノグラフ

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あまりこのブログで自分の時計を紹介しなくなって久しいが、たまにはということで、写真は何年か前にベルギーから個人輸入で仕入れた16520初期225タキ4ライン。自分の記憶に間違いがなければ、ここで披露するのは初めてかと。好き好きはあろうが、私はデイトナはどの型番も白のほうが好みである。さすがに猛暑の今はケースにしまい込んでいるが、他の季節では結構普段使いしており、満足度も高い。満足度は高いが視認性は悪い。はっきり書くと、時計なのに何時かよくわからない(苦笑)。もはや腕に付けたアクセサリーであるが、時計はそういうものだと今は思っている。ついでに書くとハック機能がないため、時刻合わせもしづらく、使わない機能もたくさん付いていて、まあはっきり書くと見栄っ張りが買う時計である。

それで何を書こうとしたかと言うと、遅まきながら黒も欲しくなったのである。後継の116520は白黒ともギラギラ感が半端ないので、やはり狙うはエルプリデイトナ。白が初期のL番なので、どうせなら黒は後期のUかAのトリチウム仕様と思って今日いくつか店を回ってみたのだが、どこも在庫はほとんどない。かめ吉さんに170弱のギャラ付きがあったぐらいで、ここ数ヶ月でいきなり姿を消した感じ。ただし、本来は希少なはずのP番はちらほら見かける。これから価格が下がることを見越してコレクターが手放したのだろう。面白いものだ。Pだとだいたい200万円台前半という高値。回し者ではないが、かめ吉さんのA番デイトナ、将来的にエルプリデイトナを買おうと思っている人は狙って良いと個人的に思う。ちょっと悩んだが、私は見送った。

と言うのは、久々に某店で見たチュードルのカマボコ・クロノグラフ(クロノタイム)がやたらと恰好良かったからだ。以前、ゴツいという理由で見送ったのだが、腕に巻いてみるとそうでもない。おそらくはディープシーもそうだが、真上からの視覚ではまったく問題ない。要するに厚みが問題なのだが、カマボコは割と軽いので、それほどの威圧感もない。

エルプリデイトナ16520は後継の116520に比べると地味ではあるが、それでもきらびやかな時計である。前にも書いて、もしかしたらその際に顰蹙を買ったかもしれないが、私はデイトナが似合う人にほとんど出会ったことがない。私がイメージするデイトナが似合う男はどれもが優男のイケメンである。当然自分にも似合っていないことを私は痛切に自覚している。いや、恰好いい男だってそうそう似合わない。トラック野郎を演じた文太さんが付けていてもどこか違和感があるし、健さんだって傷だらけのエクワンは似合ってもギラギラのデイトナは似合わないだろう(もちろんただの主観)。

それに比べてチュードルのカマボコは無骨であり、圧倒的に男らしい。女にもてることなど、はなから拒絶するかのような超然とした佇まい。いいな、これ。私の腕がもう少しごつければ是非とも押さえておきたい時計である。知っている人には無用の情報だが一応記載しておくと、チュードル791~のクロノグラフには79160, 79170, 79180の3種があり、それぞれベゼルが違う。プラ、回転、ステンレスベゼル。人気はプラスティックベゼル79160の前期型で、これはカレンダーに枠(黒文字盤では白枠、白&シルバー文字盤には黒枠)があり、インデックスが台形の形をしている。前後期では他にも多々違いがあるのだが細かいことなので今日はやめておく。もう女なんて面倒くさくてどうでもいいやという剛毅な男にカマボコは超おススメ。いや、やっぱりまだまだモテたいですぅ~という軟弱者にはデイトナ(笑)。私・・・?書くまでもない。決まっている。聞くだけ野暮ってものだ。では、今日はこの辺りで。(おいおい、どっちだよ?!)

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チュードルのサブマリーナについて その2

前回紹介した79090と79190は発売から20年前後経っているとはいえ、ヴィンテージと呼ぶにはまだ新しいのだが、その前のモデルとなるとグッとヴィンテージ感が増してくる。

前回とは違い、5,60年代の薔薇サブから80年代へと綴っていくこととする。

チュードルはイギリスはチューダー王家の紋章である薔薇をメインロゴに起用、ロレックスのデフュージョン(廉価)ブランドとしてスタートした。チュードルのサブマリーナが登場するのは1954年の7922から。キャリバーは390、クラウンガード無しの100m防水。「ROTOR SELF-WINDING」等の文字盤表記、薔薇のロゴを除いては、ベンツ針に丸い秒針とロレックスのサブマリーナにそっくりな外面デザインである。ガワはすべてロレックス製でムーブのみ汎用のETA製を採用。つまり外見はロレックス、中身は別物というのがチュードルの立ち位置。

チュードルサブマリーナは7923, 7924, 7925とマイナーチェンジを繰り返してゆく。ストレート針の採用や防水の進化などあったが、興味がある人も少ないだろうから省略。1959年には7928が。これはクラウンガードで、同年発表されたロレックス5512と同じデザインコンセプトである。このようにロレックスとチュードルという兄弟は同じように進化していったことがわかる。何度も書くが、大きな違いは肝心のムーブがロレックスは自社開発、チュードルは汎用品。1950年代というのは、第二次世界大戦が終わって10余年、新興国が続々と独立を果たし、ヨーロッパが凋落し始め、アメリカ合衆国が台頭した時代。混沌としていたその時代にロレックスやチュードルというブランドがそれぞれどのような層に支持され、どういう比率だったのかは、生まれてもいない私にわかるはずもない。

この7928は同じ品番のまま途中からいくつかのマイナーチェンジをおこなう。やはりロレサブと同じようにPCG(いわゆる尖がり竜頭クラウンガード)から普通のクラウンガードとなり、またレターもゴールドからシルバーへ、文字盤サークルがなくなるなど。色々な捉え方はあると思うが、この1959年から1967年まで製造されたチュードル7928がロレックスの5512や5513の位置づけと考えて良いと思う。後期の文字盤はシルバーからホワイトへと変わる。
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次世代へ。日付無しが7016(cal.2843)。日付有りが7021(cal.2484)。登場は1969年。薔薇のロゴから盾のロゴへ。そしてようやくハンズのイカがここで登場する(ベンツ針も有り)。そのインデックスはスクエア(長方形)。さらに、ここで青サブが登場し、ある意味、ロレックスとは違う個性を持ったブランドとしての別の道を歩み始めることとなる。この日付有り無しの両モデルはとにかく絶対数が少なく、その中でも状態の良い物を探すとなると至難であり、かつ溢れかえるパチ物との闘いとなる。ヤフオクあたりのブツはまあ外見(そとみ)で判別可能だが、本格的なfake品だと裏蓋を開けてもそれらしきムーブが載っており、相当な目利きでないと本物を見極めることは困難であるという。

ちなみに私は日付無しの7016を、かつて苦労してそれなりの値段で入手し今も所有しているが、これが本物かどうかの確証は無い。そのことについては別稿に譲るが、私はもう「知らぬが仏」で良いと思って使い倒している。ブレスを外して刻印も確認したし、裏蓋を外してムーブも確認、どこにも偽物の気配はないが、それでもはっきりとはわからない。困難な巻きブレスの駒詰めも自分でおこない、ベゼルインサートは社外品の青に付け替えた。いずれはきちんとした工房で見てもらおうとは考えているが当分はもうこのままで良い。これは愛する女性の浮気を疑う男の心理に等しく、なかなかに苦しいもので(苦笑)、まあ古いチュードルを愛する者は等しくその疑念と愛欲に苦しむであろう。

さて、その次世代登場は70年代の半ば。日付無しは94010(cal.2776)、日付有りは94110(cal.2783/2784)。ブレスは巻きの9315又は7836でともにダブルフリップロック。これらもまた市場には滅多に出て来ないが、ヤフオクには偽物が溢れかえっている有り様。ヤフオクはyahoo社が偽物を取り締まる強い意志を持たないゆえに、今はパチの宝庫、バッタもん繁殖の温床と化している。ヤフオクは本当にヤバい。私も痛い目に合った。これについてもまたどこかで記事にする。

この日付有り無しの94010 / 94110 はイカサブ最後のモデルで後期にはベンツ針も登場し、やがては76100へと受け継がれていくが今日は割愛。というのも真面目にチューサブについて書くにはあまりにもバリエーションが多すぎて筆が追いつかないからだ。ミニサブ、ボーイズサブ、タコサブ、同品番におけるキャリバーの変更、レフトハンドモデルなどなど。ただ、今こうやって歴史を見ていくと、ロレックス社がマーケットを拡大していくために、ロレックスブランドでは出来ないことを、この弟分を使ってトライし続けたことがよくわかる。チャレンジングなブランドと言ってもよい。そしてその棲み分けには苦労が伺える。例えば、チュードルではステンレス製の青サブを開発したが、ロレックスでは金無垢とコンビのみという事実からもわかる。そもそもチュードルのスポーツ系では金無垢モデルは存在しないし、素材も間違いなく使い分けている。素材における差別化だけではなく、ハイスペックな防水や防磁の追及(シード・ミルガウス)、クロノグラフモデルにおける自社ムーブの開発(デイトナ116520)など、時計メーカーとしてのクォリティーアップは徹底的にロレックスブランドでおこない、最も金のかかるムーブを汎用でまかなうことでチュードルはその安価ブランドとしてデザインのバリエーションを広げていったとも言える。

個人的には日付無しドーム風防の94010がお奨め。黒、青どちらも良い。下記に写真を載せておく。
左が94010、右が94110。
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ここでフランス海軍モデルについて書く。marine nationale。前モデルの7016からフランス海軍がチュードルのイカサブを採用、その証として上蓋にM.N.(年号下二ケタ)が刻印される。ブレスは無く本体のみ(ここ大事)。さらに海軍が採用したのは日付無しモデル(7016 & 94010)のみ。仏海軍採用は後継の94010で本格化し、それは1982年まで続いた。これにはdecommissioning papersと呼ばれる書類がついており、さらには支給品のすべてのシリアルが台帳に記載されている。本物の相場は250万円から300万円ぐらいで世界的にコレクター垂涎のブツ。滅多に市場に出て来ないが、またまた偽物はよく出てくる。まず前記の書類が無く、付いていてもブランク(空白)の書類であると真偽は疑わしい。ここで言うフランス海軍支給品(MN刻印)の偽物にはふた通りあって、時計は本物のチュードルだが裏蓋の刻印は後付けのものと、時計も証明書もすべてフェイク品の2種。私は絶対本物だという確信が持てるMNと出会えたら、持っている時計を売り払ってでも手に入れてやろうという野心がつい最近まではあった。今は無い。
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チュードルというモデルは誰が仕掛けたか、とにかくパチ物が溢れ、大多数のそれらの中をかい潜って本物を見極めていかねばならず、やっかいではありつつも、それがまた楽しいモデルでもある。私のパソコンのピクチャホルダーには、正しい文字盤とムーブの写真が数え切れないほど収めてあって、それなりに眼力は付けたつもりだが、それでも限界はある。

余りいないと思うがチュードル・サブマリーナを購入する際の注意点。まず文字盤が汚く、特にデカいブツブツが出てしまっている個体が多いのだが、悲しいことにそっちの方が本物又はオリジナルである可能性は格段に高い。ロレックス社は差別化としてチュードルの素材は安価なものを使い(多分)、気密性にも難があり、とにかくサビと文字盤の痛みが激しいものが多いのである。おそらく文字盤の塗料にも問題があったのか紫外線にも弱い。従って、きれいなチュードル・サブマリーナは後年にサービス文字盤(純正の交換用文字盤)に換えられている可能性大。更に追い打ちをかけるようだが、イカ針は塗料の面積が広いだけに、ここのトリチウムが剥げやすく、酷いのになるとゴッソリと塗料が抜け落ちてしまっている。いや現状はOKでも使い続けると塗料にひびや剥げが発生する可能性がある。ゆえに、私は真夏には古いチュードルは絶対に着用しないことにしているのだが、一応これは潜水時計であるということは書いておく。まったくやっかいな時計である。

本当はもっと書く予定だったが、書いている内に疲れて嫌になってきたので、この辺にしておく。チュードルについては情報が少なく、誤った記載もあるかもしれないがご容赦を。そして、この最後の段まで来て、私は大切なことを書くのを忘れていたことに気付いた。これを書いておかないと。「私はチュードルというモデルが好きである」。いや実際のところかなり好きである。ロレックスの弟分として生まれ、安価な値を付けられ、ロレ好きからは下に見られ(半ば馬鹿にされ)、パチに苦しみ、日本ではイカだタコだと呼ばれ、それでも自分の個性を出そうとしたこのモデルは実に愛すべきモデルだと思っている。何と言っても、海外ではスノーフレイク(雪の欠片)と呼ばれるイカサブのデザインは、数あるヴィンテージ時計の中で私が最も愛するものである。老眼にもバッチリ。説得力は無いかもしれないが、本当に実に愛すべきモデルなのだ。出来るイケメンの兄と地味であばた面の弟。それは太陽と月なのか、はたまた光と影か。さて、あなたはどちらを愛するであろうか。そしてあなた自身はどちらであろうか。チュードルに栄れあれかし。

チュードルのサブマリーナについて

今日はチュードルのサブマリーナについて。前に3月9日付け記事の最後のほうで私はこう書いた。「昨今のロレを取り巻く状況に対して、私自身が決めたあるスタンスがある。それをここで公開するのか、先に行動に出てから公開するのか、あるいは黙して語らずで行くのかは決めていないのだが、(以下、略)」と。

改めて読むとずいぶんと大仰だなと思うので、ここで種明かしをしておくと、それがチュードルであったということ。ロレックスほどは高騰していない弟分のチュードルにもっと注目しようと考え、そして自分なりに調べたし、購入もした。チュードルについての今回の記事は2回に分けようと思っているが、新しいモデルから古くに遡って書いていくことにする。

まずはTUDOR最後のサブマリーナが79190。1995年ぐらいから2000年の頭ぐらいまで(もしかしたらその前)のわずかな期間にのみ生産された。その前のモデルは1980年代の後半から1995年に頃にかけて生産された79090。ともにデイト付き&トリチウム文字盤で、カラーは黒と青があり、ブレスは巻きの9315が標準装備。フラッシュフィットは380B。ムーブはともにETA2824-2。

ではどこが違うのかというと、79190はサファイア風防、その前の79090はプラ風防。ここが最大の相違点。さらに竜頭と裏蓋に関して、前者はチュードルの盾のロゴ、古いほうの後者のそれにはロレックスのロゴが刻印されている。風防、竜頭と裏蓋の刻印、これが両モデルの主たる違いである。風防が違うゆえベゼルインサートに互換性はないのでご注意を。それと79190にはベゼルにノッチスプリングが付いた(カチカチカチ)。

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左が最終の79190、右がその前の79090で、あえて光度の違う写真でふたつの色彩の違いを際立たせてみた。右の79090の文字盤とベゼルを日ロレで交換したら、ほぼ左のようになって帰ってくる。青というより紫に近い。

79190。チュードル最後のサブマリーナ。文字盤はトリチウムでブレスは前述の通り巻きの9315が標準仕様だが、ディスコン直前には78350というハードブレスとなった。特筆すべきはベゼルと文字盤の青のカラーが、最初のごく数年のみ、前モデルの79090と同様にやや渋めの青だが、途中からは上記左の写真のようにあざやかな青紫となった。個人的な好き好きはあろうが、私は初期の淡い青が欲しく、一時期このブログでかめ吉さんに有ることを盛んに書き立てたものだが、あのとき買っておけばよかったと今も後悔している。従って、私はチュードル最後のサブマリーナ79190を所有したことはない。

その前の79090はプラ風防で、古き良きロレックスの流れを汲んでおり、時期にズレはあるものの、さしずめ1680の位置付け。やはり人気は青。ご存知のように、ロレックスのサブマリーナにはステンレスの青はない(コンビと金無垢のみ)ので、そこが最大の個性と言える。私は非常に好きなモデルであり、現に所有もしている。いかにもデフュージョンブランドといった、多少安っぽい作りが堪らなく良い。プラ風防とチャラチャラ巻きブレスのお蔭で軽い軽い。黒ならロレックスにいくらでもあるので、私のお薦めはやはり青なのだが、ロレックスだと白サブあたりでも80万円近くまで高騰してしまった今、チュードルの黒にいくというのも大いに有りである。

言い忘れた。79090には文字盤が2種あり、最下段の表記が、古いと6時の△の下にT SWISS T、
後期はT SWISS △ MADE T となる。写真アップが面倒なので、文章でご容赦を。

青も黒も、注意点としては、おそらくは同じステンレスでもロレックスのそれとは素材が違うのか、あるいは気密性が弱いのか、チューサブは文字盤の内径の部分に錆びが発生している個体がひじょうに多いということを挙げておく。これは腕の良い職人さんなら除去してもらえるのかもしれないが、購入時に注意するに越したことはない。ケースの錆びと同様に針も傷みやすいようで、トリチウムを囲むシルバーの部分に剥離が見られる個体が多く、私のブツもキズミで見ると同じであるが、これだってもう20年近くも昔の個体であり、私はあまり気にしていない。それ以前に、市場に出てくる個体が少ないので、あまり悩んでいると買いを逃してしまう。また竜頭の巻き上げもロレックスとは全然違う。いくつもの個体で試したので、そういう作りなのだろうが、きりきりという歯車の手ごたえはまったくなく、単に木ネジをぐいぐいと巻いているかのような感触。慣れないと最初はちょっと驚く。

ここまでの79190と79090の針はベンツオンリー。これらのモデルを更に遡ると、イカやらタコやらが出てくるが、それは次回。

チュードル青サブは派手さこそ無いものの、ひじょうに美しい時計である。特に79090と初期の79190の文字盤の青は暗く沈んでいて、暗い部屋では青が目立たず、しかし戸外ではダークブルーの個性がきらめく。ベゼルの青もオリジナルはややくすんだメタルブルーで、ロレックス青サブの目にも眩しいブルーとはまったく違う。高級感では足元にも及ばないが、そもそも比較すべき時計でもない。数年前までは30万円前後で買えたが、昨年あたりで保証書付きなら40万円台後半、今は50から高い店だと60万円を超えてしまうようになったのが少し残念。現役時代に不人気だったせいか、あまり売っておらず、出てきても比較的早くに売れてしまうので、同じように考える人がいるのだなあといつも思う。とにかく、滅多に出て来ない割に、各所傷んでいる個体が多いという、たいへん悩ましいモデルであるが、それゆえに探すのが楽しいモデルともいえる。だが値段なりの時計であることも書いておく。いくら個体が少ないからといって、80万円とかになったら私なら絶対に手は出さない。

くどいがもう一度書く。状態の良いチューサブはひじょうに少ない。これは先に書いた、元々ロレックス社が恣意的に差別化として素材のクォリティを下げていたと思われることと、やはりロレックスほどのブランド力もなく、当時は安かったので手軽(手荒)に使われることが多かったからではないかと推測している。だから、たまに出てきても外装(風防やケース)が傷だらけの個体が多く、頑強なロレックスのシードやサブマリーナは傷だらけでもそこそこ様にはなるが、どうもこのチュードルがそうだと痛々しいというか、より安っぽく見えてしまうというか、だからこそ逆に、きれいなチュードル青サブは最高に恰好いいとも書いておく。

次回に書くが、79090よりもさらに古いスポーツ系チュードルになるともはや絶滅寸前。マーケットにほとんど出て来ず、逆にパチ物が溢れかえっていて、安易に手は出さないほうがいい。オークションに出ているほとんどはパチ物であるし、きちんとしたお店で売っている「あるブツ」も、典型的なfake品である。私も古いチュードルを買うときはいつもひじょうに慎重になるし、文字盤のレターやムーブメントの写真をいくつも保存しているが、その程度で見極められるような簡単な代物ではない。そのあたりを含めて次回に。
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再び青サブを中野で見た

先週末の昼、近くまで行ったのでついでに中野へ。もう一度16520のエナメルダイヤルを見ようと思っていたが肝心の店が休み。残念。かめ吉さんに行くと、またTUDOR青サブを発見。しかも、79090(ドーム風防)と後継の79190(サファイヤ)のふたつが仲良く並んでいる。そういう機会は滅多にないのでガラス越しにしげしげと。なぜだか後継の79190のベゼルのほうが退色が進んでいてヴィンテージっぽく、妙にときめいてしまった。79090は約44万円で前回と変わらず、79190はそこから5万円ほど安い。ともにギャラ有り。う~ん、両方悪くないなあと、この前の記事ではチューの青サブをやや否定的に書いたくせに、現物を見るとまたそう思ってしまうのであった。

ロレックスの青サブはコンビか金無垢だけ、、SS仕様の青サブはチュードルにしかない。40mmだけではなく36mmのボーイズサイズもある。1980年代の後半から1990年代の前半にドーム風防仕様の79090(黒又は青)が生産、94年頃にサファイヤグラスの79190(黒又は青)へ。ブレスはともにロレックスの9315巻きブレス。79190の後年は無垢ハードブレスへ。

当時はブラックのほうが人気だったのか、2015年の今、メンズ40mm青はあまり市場には出てこず希少な時計となっている。

詳しくない人のためにもう少し説明を続ける。79090の文字盤とベゼルの青はやや沈んだ色彩、後継の79190の青は明るく派手な紫がかった青。前者79090の青は、歳月が経った今、ロレックスの1680の黒ベゼルがグレーや青っぽく退色した感じに経年変化を遂げていて、なかなか渋いのである。文字盤の青も暗い色彩で恰好いい。海外の古い昔のページを貼り付けておく。⇒79090/BLUE

ちなみに入手しやすい79090の黒を日ロレで青に交換(文字盤&ベゼル)することは可能であるが、これがオリジナルの青とはかけ離れた、明るい紫っぽい青になって帰ってくる。ほぼ79190のブルー。もちろん個人の感覚なので、それを良いと思う人の感性をどうのこうの言うつもりはないが、あくまで私の見て感じた印象としては79090の青のほうが渋い。

帰りは東西線に乗ったつもりが間違えて総武線。面倒なルートでまた仕事に戻ったのだった。

チュードル。ロレックスのディフュージョンモデル、要は廉価版。だが本家が中古ですら70万円、80万となったいま、30から40ぐらいで手に入るチュードルは正しいと思うのだ。何がどう正しいのか、うまく書けないけど、チュードルは有りだと思う。

青サブを見に中野へ

本格的な夏に入る直前のある日、たまたま知り合いがつけていたチュードルの青サブ(79090)を見て、言い方は悪いが、そのちょっと安っぽいところに魅かれ、それ以来密かに内偵(笑)していた。青サブを売っているところはほとんどないので、楽天での過去の販売履歴や、取り上げているブログなどを参考にさせてもらって、悪くないなあと。少し前ならおそらくは20万円ぐらいで中古が買えた時計。高くなったとはいっても、ロレックスに比べたらいい価格感であるし、現行の6桁スポロレ高級ギラギラとは対極の味わい。これがもし豊富にあったらそうでもないだろうが、とにかく売っていないので、出てきたら買ってしまうかもという予感がするほど思いが高じたのは久しぶりな気がする。

週末、仕事の合間に遅い昼飯を摂ろうと店に入ってオーダー後のスマホチェックでかめ吉で新着を発見。ギャラ付きで45万円弱。注文直後だったので、「用事を思い出したので取り消してください!」とオーダー中止で中野へ。こういうところの行動力は我ながらなかなかのもの。

長針に割と大きな剥がれがあって非常に目立つ。買うか買わないかのポイントは、今後文字盤を眺めるたびに目が行くこの剥がれを許容できるかどうかだろうと思って入念に眺めた。う~ん、結構な剥がれ(もしくは腐食か)。ギャラは1994年。20年前の時計なのでヴィンテージと呼ぶべきか微妙、B5番台ならもう少し状態は良好であって欲しく、やや安めの価格設定もこの傷が要因だなと認識。他がきれいなだけにちょっと目立ったかもしれない。竜頭はやや重いがまあこんなものだろう。

結論から書くと私は買わなかった。ハンズの剥がれは何とか許容できると思い至ったのだが、他の理由で私は買うことをやめた。それは何というか、ときめかなかったのだ。左腕に乗せてみたときの感覚。少し拍子抜けしたというか凡庸に思われた。ブルーのベゼルはいい感じだったし、針以外に大きなマイナスポイントはなかったが、華を感じるところが薄く、それは概念ではヴィンテージに魅かれるくせに、実物にはそうでもないという私の本質を改めて認識させられた気がする。それと、これは書いても仕方のないことだが、希少であっても青サブに45万円の価値が見いだせなかった。18万円ぐらいだろうと書くと、チュードル好きの人に怒られてしまうかもしれないが、私は馬鹿にしているわけではない。その時計の格というものがあり、20年前のスポーツ系中古チュードルはそのポジションでこそ光り輝くのではないだろうかと書いておきたい。それと、18万円の時計はたいへんな贅沢品だという当たり前の感覚はまだ私の中には残っていることも併せて書いておく。

まだ売っていると思うので、探している人は行って見てくるといい。前述の通り針に剥がれが有るほか、10時位置の文字盤と風防の境目に埃の付着が有り、ブレス(オリジナル巻きブレス)は12時側の伸びがそこそこ大きい。ケースとブレスの傷は驚くほど少なく、よく磨かれている印象。あの針だと、たぶん日ロレのOHは通らないが、店がOHは済ませているとのこと。79090の青サブは、他では宝石広場で売っている(針はルミノバに交換されている)。

ついでに見た他の店で、初めてこの目でポーセリン(エナメル)ダイヤルの16520エルプリデイトナを見た。700万円台。文字盤は確かに美しいが、大事なきらきらベゼルに傷が多くそこはひじょうに残念。隣にやはり200タキ&段落ち(フローティン)のギャラ付き白が368万円(これはすごく良好な個体に見えた)。やはり200タキには4ラインより段落ちが似合う。ポールニューマンや正規ギャラ付き手巻きデイトナもある。時間がなかったので、速攻で退散。そうそう、大黒屋にシードのV番があった。120万円台だったと記憶する。

青サブへの関心が無くなったわけでもなければ、買うことをやめたわけではない。また違う機会に、違うマインドで違う個体に出会えば、違う結果もある。時計趣味などそんなものだ。それと、ここへ来てのチュードル狙いは、我ながらなかなかであったと書いておく。
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