前回記事の補足として

これは前回記事の補足でもあるのだが、実際に4桁や5桁は市場から急速に消え始めている。コレクターが手放さないことと海外への流出という2つの要因によるもので、欲しいものがある人は押さえるべきだと書いた。また、チュードルのスポーツ系(サブ&クロノタイム)は鉄板だとも。これは決して煽りではない。もはや世界的な事象である。

ロレックスの購入を投資と見做す人、あるいは結果として差益にとてもこだわる人が想像以上に多いというのが時計ビジネスに手を染めてわかったことのひとつ。その是非はともかくとして、そういう人はおそらくチュードル・スポーツ系の高騰は見抜けていたはず。中古ロレックスの異常なまでの高騰、さすがに手の出なくなった層にとって、ロレックスの弟分であるチュードルのスポーツ系に目が行くことは自然な流れだった。チュードルの青サブやカマボコが良い例。春先ぐらいまでは結構安価に購入できたはずであるが、今や70万円前後、驚異的な180%アップほどの値上がり。クロノタイムに関しては、カマボコ791~はもちろん、後継の792~シリーズも良い時計である。まだ比較的こちらのほうは買いやすい価格で推移しており、何度も書くがタイガー以外なら買っておくのは有り、おそらくは早晩騰がっていくだろう。私は個人的にチュードルのスポーツは理屈抜きに好きである。青サブは持っているが、クロノタイムも個人的に所有しておいてもよかったかなと今は思う。とにかくチュードルのいい意味での軽さや安っぽさは(私には)最高である。

【オマケ】
本日、ショップHPにアップした116034を見ていただけだだろうか。このブログのドメイン名でもあり、私が最も愛好したモデルのひとつである。開業して以来、この時計を販売するのが私のささやかな夢でもあった。海外に持っているあらゆる伝手に情報の網を張っていたのだが、やはり難易度高く、これまでこの時計はまったく引っかかって来なかった。過去に個人として所有していたが、理由(わけ)あって手放してしまい、違うシリアルであってもこのモデルの実物を再び手にすることはないと半ばあきらめていたのだ。従ってこの時計を買い取らせてもらったときは感激だった。この場を借りて、まず買い取らせていただいた方に感謝、そしてご注文いただいた方に感謝。お二人ともこれまで過去にも購入や下取りをさせていただいており、大事なお客さんから大事なお客さんにつなぐことが出来たのもまたうれしいことであった。時計屋冥利に尽きた1日だった。
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故きを温ねて新しきを知る

会話中にフト相手の左腕に目を遣るとそこにはエクスプローラーが。ヴィンテージ1016である。ちょっとそれ見せてくれろと手に取らせてもらったのだが、まあ何というかやっぱり絶品だなこれは。70年代前半のマット仕様。ケースの大きさ、デザインの良さ、そしてバランス。文句の付けようがない。昨今では36mmのケースは小さい部類ではあろうが、3針のみというこのデザインではこれ以下も以上もない絶妙なサイズ。私は1016をこれまで所有したことがなく、多分これからもないのだが、エクスプローラーⅠは114270や14270より前の1016ですでに完成の域にあったことを(あくまで主観として)改めて認識する。

故きを温ねて新しきを知る。

逆に「最新こそ最良」という言葉もある。私は半分は正しく、半分は正しくないと思っている。工業製品という側面からだけ見れば最新こそが最良かもしれぬ。しかし、人間に正確な時間を提供するというシンプルな意味において時計の進化はとっくに行く着くところまで行き着いてしまっており、時計は工業製品ではなくもはや装飾品の色合いが濃い。前に時計の価値の大部分はデザインの良し悪しであると断じた。そうであるならば「最新こそ最良」はまったく正しくない。むしろリスクである。

デザインとは表現である。表現の世界は水物。どんなに優秀なアーティストだろうがディレクター(監督)だろうが、表現や制作の現場で最新こそ最良なわけがない。むしろ逆。評価が定まるには長い歳月を必要とすることが多い。そのキャリアや系譜の中に、良いモノもあれば当然のごとく駄作や失敗作もある。いや、むしろ駄作や凡作の方が遥かに多く、またその時々の周辺の流行にも大きく左右され、時に陳腐化し、時に再評価される。歳月が経ってみないとなかなかその真価も見えて来ない。

上に記載したエクスプローラーⅠ 1016などは何と言えばいいか、ケチのつけようがないと言うか、私は自己所有の同じ系譜である114270をこよなく愛好しつつも、かなわないなと素直に思ってしまうのだ。

5桁の高騰が著しい。

ここ数年ひどい値上げを実施した現行6桁の価格を5桁の中古価格が上回ろうかという勢い。それは現行品への失望の表れでもある。人気モデルが手に入らないことへの失望であり、やたら派手で華美になったデザインへの失望であり、更にドレス系や金無垢・宝飾モデルを売りつけたがるメーカー戦略への失望である。そう、ステンレス製の極一部のスポロレを除くと、ロレックス社が売りたい最新現行モデルの多くはあまり人気がないのだ。ドレスモデルのオイパペ、チェリーニ、デイデイト、金無垢デイトナなど。だから市場のお金が4桁、5桁に流れている。これは世界的な傾向であるがゆえに、一部の人気ディスコンモデルは品薄となり価格が高騰したというシンプルな図式。GMTマスターⅡ、エルプリデイトナ、旧グリーンサブなど。

今後については、価格については多少の変動はあるだろうが、価格よりもむしろ危惧すべきは、4桁・5桁がもうこの先生産されることはなく数は減る一方であるという事実。欲しいモデルがある人は本当に押さえておいたほうがいい。コレクターは当分手放さないだろうしし、皆さんが考えている以上に良質な個体は相当数が海外に流れており、この勢いは止まりそうもない。とは言え、中古も人気と不人気の2極化が著しい。個人的にはチュードルのサブ&クロノタイムは鉄板だと確信しているが、それについては長くなりそうなので別の機会に。*でもタイガーは駄目よ。
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