逡巡の末に

昨年末に知り合いから旧エクワンを入手してから、途中で想定外のGMTマスターⅡの海外購入というオマケはあったものの、それを除くと今年の上半期は新たなロレックスの購入はなかったわけだが、それはこれから先自分がどういう方向に向かうべきかずっと惑っていたからに他ならない。あくまで5桁にとどまるか、現行6桁にも目を向けるか、4桁アンティークに行くか、この3択である。

5桁にとどまるということは、おそらくはもう購入のペースは落ちることになる。欲しいモデルはほぼ手に入れたからだ。だが、ずいぶん冷めたとはいえ、まだくすぶるロレックスの余熱が私の中にはあり、それはエアキング5桁や、あるいはサブノンデイトの買い戻しぐらいで収まるとも思えない。そのことはロレックスの強烈な熱波にやられてしまっている諸兄にはわかっていただけると思う。ただ多くの人と同様に私にも有り余る金があるわけでもなく、とどまらないならば、手持ちもある程度はリリースしなければならないわけで、どれもがお気に入りで手放せる5桁がほとんどない私にとってそこが悩ましいところであった。

6桁だとシンプルにデイトナだと思っており、バーゼル以降はそこに新シードも加わったのだが、正規店には入荷しないのに、転売用だったのか、並行ショップに大量に並ぶ現行デイトナ、そして大幅な値上げ、どうにもこうにも今のロレックス社に共感する気持ちを持てないこと(そんなことはそうでもいいじゃないかという意見はごもっとも)がブレーキとなった。それについては春先にさんざん記事にしたのでここでは割愛。それでもデイトナに魅かれる気持ちは確かにあった。現行6桁、エルプリ搭載5桁デイトナともに。ただ6桁のデカいインデックスよりは5桁エルプリのほうがやや好み。

おそらくデイトナは、そういった惑いの中で、3択の内、6桁と5桁という2択を横串にするモデルとして、私の意識にその存在が浮かび上がってきていたのだと思う。今日はそのことについて書くが、その前にもうひとつの選択肢である4桁について簡単に書かないと、今回の記事は意味がなくなってしまう。

私が最も向かいたいとおもったのは実は4桁である。一体何度店舗に足を運んだことか。何度所有者の時計を拝ませてもらったことか。4桁のデイトナ、ミルガウス、GMTマスター、サブマリーナー…。ヴィンテージ物の魅力とはまさに世界にひとつの時計との出会いに思えた。新しい時計というのは、カスタマイズしない限り、どれも同じようなもので、私の5桁もそうである。だが、数々見てきたヴィンテージ物は様々な環境における経年変化を遂げ、どれもが世界にふたつとない顔となったいて、それはまさに世界にひとつしかない時計との出会い。もちろん各人が所有する時計はそれがどんなものであろうと世界にひとつしかないものだということはわかって書いている。だがベゼルに傷が走り、ハンズとインデクッスが絶妙に焼け、時の流れを感じさせる、ややくたびれた文字盤、そうした個体を見ると、そこに多くの人が魅せられる理由は理解できた。

その一方で私はアンティークロレックスにはどこか脆さというか儚さというかそういうものを感じざるを得なかった。5513のトリチウム縁なしインデックスとハンズはもうぎりぎりのところで何かが保たれており、やはり私は“遅かった”のだと感じた。この感覚はわかってもらえるだろうか。年を取ったとはいえまだ続くであろう我が人生を、熟からむしろ枯れへと変貌しつつあるこれらの時計とともに過ごすことに、果たして意味はあるだろうかなどとジメジメ(&うじうじ)と考えるのであった。この半年、5桁の時計とともにとどまりながら、現行へも行けず、4桁にも向かえず、その逡巡の中に私はいた。

春先に訪問させていただいた際にJFKのオーナーに「次はデイトナを考えています」と話をした。だがデイトナと一言で言い、仮に手巻きを除外しても1987年の生産から今日まで27年もの期間があり、私は自分で口にしながらもよくわかっていなかった気がする。帰京してからも私は何度も店舗に足を運び、多くの“デイトナ”を眺めたが、よくわからないは、ますますよくわからないにおちいっていくも、やはりヴィンテージ志向が強くなっていったのだろう。一度高年式のデイトナ(エルプリ)を案内いただくも辞退させていただいたことも記しておく。

前置きが長くなったが、このたびようやくデイトナエルプリ(L番)を購入した。もちろんさんざんお世話になったJFKさんからである。初期L番白、ベゼルも文字盤もノーマルなものというのは、稀少好きの私にとっても珍しいことかもしれない。絶妙なタイミングだったのは、私がデイトナに行くのならアンティークへの入り口ともいえる、できるだけ古いモデルと、ようやくにしてほぼ決めた時期だったことである。

20年以上も前に生産されたこの時計を入手したことは私にとって意味深い。今私は4桁の入り口にいる。この時計のことを好きになれば、たぶん私は新しい扉を開くことになる。今回私があまり悩むことなく、ほぼ最初期の16520を購入させていただいたのは、そういう意味合いを持ってのことであったということを重ねて書いておく。

ようやく手にしたデイトナ。私がこの時計に魅かれる理由はデザインしかない。それにしても参ったな、満足度は抜群に高いが、きらびやかで自分には全然似合わない(笑)。デイトナの魅力のひとつにブレスの中駒がポリッシュであることが挙げられるが、この時計は古いのでヘアライン、その地味さが私には救い。これまで日中に時計をしていて、文字盤を眺めることなどほとんどなかったが、この時計だけは頻繁に目を遣ってしまう。参ったな、これがキングか。最高だ。自分の仕事の周辺でデイトナが似合わない幾人かの人を見てきたが、自分ももろにそうだ。金さえあれば買えるが、こいつは持ち主を選ぶ時計。個人的な感覚だが、それは社会的地位や金の有る無しではなく、その人が持って生まれた品格というか気品というか…。特に白は。やっちまった、似あわない分不相応な時計を買ってしまったもんだ。参ったな…。気に入ってしまった。

16520L.jpg
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