赤サブ~1680

誰も待ちに待たない赤サブの記事第2弾。今回調べていく中で、私はある発見をした。それによって自分の中のこれまでのいくつかの疑問はほぼ氷解し、それは結構画期的ではあるものの、多くの人にとってほとんど関心がないというその落差が悩ましい。この冒頭、ささやかに書くが、結構なところ定説を覆す内容である。

【赤サブ&白サブの謎~生産年】
一般的にサブマリーナデイト1680の赤サブはごく短い期間に生産されたもので、多くの偽物や交換ダイヤル物も多いと言われている。1680の生産はおそらくは1968年頃あたりから1980年ぐらいまで、赤サブについては一般的には1970年頃から1974年ぐらいのわずかな期間という説が多い。これをベースに、赤サブについて話を進めることとする。

これに基づき、赤サブには以下2つの定説がある。
①1970年から1974年までのたった4~5年の生産説(圧倒的に白サブが多い説)
②1968年に赤サブのみで発売され、1974年頃まで生産説(白サブは後から生産説)

①は、よく書かれている、いわゆる赤サブ稀少論につながる。つまり12年近い1680生産の中で、赤サブはわずか4年少々しか作られなかったので、本来は希少なはずの赤が多く存在するのは、それだけ偽物が多かったからというもの。私はこれを否定する。60年代後半の赤サブは普通に多く存在しているからだ。

②は、サブマリーナ初の日付表記有りの1680は1968年頃に赤サブのみで発売されたというもの。ここは大事なポイントで、スタート段階では白サブは発売されていない。おそらくは1970年頃に後追いで白も発売され、数年間だけ赤白は並行して生産、やがて赤は1974年頃に生産が終了して、以降白サブだけになったというもの。私はこちらの説を採る。

1680の白サブについて、60年代後半物はほとんど存在しないのだ。どれだけ探しても出てこない。従って、スタートの1968年から1974年頃までの前期に圧倒的に赤サブが多いのは、何も偽物や交換物が多く出回っていたのではなく、当たり前のこと。12年間の生産期間中、前期は赤サブ主体だったのだ。世界中どの個体をネットで見ても、その思いは確信として深まっていった、先日、あるサイトを発見するまでは。

それはすでに売れ切れているが、ある日本のショップでの販売履歴。1968年製白サブ(シリアル25始まりで1968年製と記載)、しかも日本の正規保証書付き。これを見たときはがっかり。白サブは1968年のスタート時には発売されていないという②の定説が崩れたからだ。1680白サブ1968年製。

これがもし赤から白へのダイヤル交換物だとしたら、私も救われる。初期の赤サブ・ハック無し、ドット無し竜頭の個体をわざわざ後年の白サブダイヤルに載せ替えたということ。白を赤にではなく、人気の赤を白に。むむむ。まあ世の中にはいろいろな人がいるので、その可能性も無くはない。「ミーハーな赤などダセえよ」と付け替えたか。あるいは職人さんがOH中にダイヤルに傷を付けてしまい、やべえ、あっ赤サブの予備はねえよ、仕方ねえ白サブを付けとくか・・・とか?だが、普通に考えると、1968年の発売初年度、同時に白サブも発売はされていたと考えるほうが正しそうである。と私は一度自説を曲げそうになった。

ここで私はふと考えたわけである。シリアルの年式ってそもそも正しいのかと。私は特にこれというサイトではなく、どこも同じだろうと都度検索して調べ物に使っていた。例えばこういうサイト。ロレックスシリアル。 確かにこれを参照すると、シリアル25*****は1968年製であり、多くのショップが記載する製造年もだいたいそのシリアル表に沿っている。他のサイトに行くと、同じものもあれば微妙に違うものもある。

これが私のミスであった。ネットに掲載されているものを盲目的に信じていた。ネットの情報は転載されていく。間違ったものが検証なしに普及していく危うさは知っていたはずだったのに。

そこで私は海外の有名なロレックスサイトである「vintage rolex forum」を訪問した。そこには「The Vintage Rolex Case Number Project」という膨大なデータページがあって、メンバーが自分の個体やショップで売られている情報から、様々な時計のシリアルを書きこんでいくことで、リアルなデータを作ろうという試みがあることを知っていたからだ。少なくともそのリストは他とは違い出典が記載されていることによる根拠のリアリティーがある。他の多くのサイトのシリアルリストには出典がない。結論を書く。そこではシリアル25*****は1970年だった!それどころか、これまでネットに出回っていたシリアル、特にヴィンテージ物の常識を覆す内容にすらなっている。

一例を挙げよう。前のリストでは私のバースイヤーである1963年製は16*****(7桁)であり、私もよくそのナンバーの個体を探したものだが、「vintage rolex forum」では1963年製は一桁少ない95****(6桁)である。何ということだろう。70万も数字がずれているではないか!forum の細かい情報を元にリスト化したサイトを掲載しておく。先ほどのとは随分と違うことがわかってもらえると思う。ロレックスシリアル2。

ここで以前にサブマリーナの記事でさらっと書いたことを改めて書く。そこで私は手元の分厚い洋書には、1680は1969年発売(赤サブのみ)となっていると書き、その発売年度についてやや懐疑的なニュアンスを残した。これまでさんざん1967年製、1968年製と記載された赤サブの販売履歴を見てきたからだ。だが、もしその年表記の論拠となるシリアルが今回と同じように間違っていたら…。調べていくと、、すべての事実がその洋書通りに進んでいくのだ。驚くほどに。先ほどのリストを見ていただきたい。1969年は20*****から始まっている。私は今後その説を採りたいと思う。

まとめる。1680は赤サブのみで1969年に発売された。

シリアルは20*****あたりから39*****あたりまで。1966年製赤サブ(シリアル20*****)などと、画期的な年度が記載された過去のショップ販売履歴(私はこの1966年という記載にずいぶんと惑わされた)も、先のリストから導けば、単に1969年製である。白サブは1970年(頃と曖昧にしておく)に25*****あたりから発売された。1974年以降になると、赤サブが消え始める。シリアルでいうと40****あたりから。1978年製の赤サブが売られていたりするが、私には何ともいえない。一般的には1974年までである。これが結論。冒頭の①も②どちらも、微妙に正しく、微妙に間違っていたことがわかる。

*この説が正しければ、シリアル20*****から24*****台の赤サブが、白サブから書き換えられた偽物である確率はほぼない。白サブはまだ発売されていないので。

最後に、年式を安易に表記することのリスクを改めて感じた。自分のバースイヤーだと思って買ったら、何年も数字がずれていたら泣くに泣けない。年式は次の4要素から推測が可能である。ケースのシリアル、裏蓋刻印、クラスプコード、保証書。たぶん製造年度を最も近く表しているのは裏蓋刻印であろう。シリアルは年度が推測でしかないこと、その数字はケース製造年である可能性が否定できないことから、私はヴィンテージ物についてはそれほどはアテにならないと感じている。クラスプコードはもっとひどい。数年は簡単にずれている。多くはシリアルから推測される年より後のものが付くことが多い。最後の保証書の日付は論外である。私が過去に見たミルガウスはシリアルが79年なのに、保証書日付は88年だった。


【赤サブの偽物】
次の話題。私は偽物の赤サブというものも見てみたかった。知らない人のために画像を載せておくと、白サブはSUBMARINERの表記が、ft/m表記より長い。赤サブは基本的には短い。なので、白サブの上にそのまま赤を載せると下記のような感じになり(ただし画像は書き換えではなく偽造ダイヤル)、これはもう問答無用のパチ物なのだが、こんなシンプルなものはさすがに滅多にない。で、色々と調べると、やはり可能なようである。載せ替えではなく、書き換え。たぶん見抜くことは容易ではないし、日本ロレックスは文字盤が書き換えられていようと正規物であればOHは通すのだと。ここから先は立ちいらないほうがよい。赤シード、TIFFANY、COMEX。前に書いた「知らぬが仏」の境地にでも入れば別。所有していない私にとっては他人事といえば他人事。
fake sub 1680 
偽物の赤サブ。
フィートファーストではSUBMARINERのSは下左端の6よりも必ず内側にくる。
この写真のように外側にくる表記はない。
他に、オレンジで囲われた王冠マークや大文字Lの跳ねもそうだが、OYSTER~の表記で一発でわかる。
左端のオレンジは、このラインは5分刻みに太くないと駄目デス。



【トリチウムの焼け】
赤サブはあまり出回ってはおらず、それでもいくつかの個体を拝見。インデックスや針のトリチウムはオリジナルだと普通はこんがりとオレンジに焼けていて、さすがに経年変化によるシミが出来ているものが多い(ちなみにトリチウムの焼けは英語で“patina”である)。中にはほとんど焼けていないものもあって、最初は交換用文字盤かと思ったが、調べてみるとそうではなく、古いロレックスのトリチウムの焼けはひじょうに個体差が大きく、ある海外サイトの検証では、普段使いで使い込んだヴィンテージ物ほど白く、箱にしまわれたままの個体が濃く焼けるという事例も紹介されている。真偽は所有したことがないので不明。個人的には、赤サブに限っては、あまり文字盤や針が焼けていないオフホワイトが好みである。黒ときれいな白に、赤い文字はひじょうに映える。下記の赤サブは何と最初期のメーターファーストである。奇跡的な個体ではなかろうかと。 
1680index.jpg     forum1680.jpg
          これぐらいの色合いが個人的には好みである(MK-Ⅱダイヤル)。


【赤サブの付属品】
以下、おまけ。私はどうやらコレクター気質満載であることは前にも書いたが、今回もまあ調べに調べた。何を?いや付属品のことを。しようがねえなあ自分と、やや汚い言葉を吐きながら書き記しておく。まずイカリ。アンカーである。これは鎖が付いていたら偽物。赤サブに限っては当時モノは銀色のヒモが正しい(笑)。もう書きながら笑う。実はこのアンカーにも時代によって細かい変遷があり、実に興味深いのだが、興味深いのは私ぐらいのものだろうから書くのはやめた。サブのアンカーは実に多様であることと、オークションに出ているモノは偽物が多いということは書いておく。と書いて、やっぱり自分のブログだし、便利なのでリンク(個人サイト)だけは貼っておくことにする。オタクってすばらしい。どの分野でも文化をつくっているのはいつもオタクだ。ロレックスアンカー。sub anchor

冊子は有名なこれ。入手するには軽く5~6万はする。クロノメータータグ(赤タグ)は、ホログラムでないもの。それと緑タグは稀にSUBMARINER表記有りのものがあり、表記無しも含めて王冠マークが飛び出たもの。箱は数種あって、内箱底のナンバーは、「10:00.1」、「67.00.3」あたり。時計の枕は画像のような下敷き。紙箱は古いのはベージュに緑ストライプ、後期は例のタツノオトシゴ。月の表面(ムーンクレーター)の箱は、赤サブに限っては後付けである。ギャラは前期はどれもそうだが、今我々が目にするものとはまったく違うが、途中からは例のパンチングギャラ(海外物)。ちなみにパンチングギャラはシリアルがパンチされていない手書きの物も多く、いかにも怪しい。後はパスケースやカレンダーが付いていたりいなかったり。以下、まとめて写真を載せておく。
EARLYSUBBOOK.jpg
ebay 1680 tag
forum1680 box papers


【補足】
こんなところで赤サブについての考察は終わり。何度も書くが、ブレスは93150が付いていたら交換されている(後期の白サブは別)。正しくは9315の巻きブレスである。あまりにも多くの交換されているものが、何の但し書もなく売られているので、くどいが書いておく。前にも書いたが、それが悪いということでは決してなく、もし買うなら知った上で買ったほうが良いだろうということ。カレンダーディスクもそう。真っ白なものは交換されたディスクであり、これは白がすごく目立って個人的には好きではない。ベゼルの細字も同様。最後に赤サブの今の相場的は100~130万円ぐらいで、ギャラや正規の箱付きはほとんど出て来ない。赤サブは白サブより30~40万は高いが、シードの赤と白の格差はもっと激しく、赤ラインの有る無しで100万は違う。ラグはさすがに磨きこまれている個体も多いが、これはさすがに40年近く前のヴィンテージ物では仕方ないかと。ただ針だけ交換されて白く、文字盤のインデックスが黄色いままという何ともバランスの悪い個体が多い。日ロレではまだOHは受け付けているはずだが、出すとかなりの確率で針はルミノバに交換になり、文字盤を交換すると白サブになって戻ってくるという非情なことが待ち受ける。4桁ヴィンテージはそろそろ曲がり角であろうと思い、それでも行くなら個人的にはノンデイト5513の方かなと、身も蓋もないことを書いて終わる。
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