流れていかない時計たち~ヤフーオークション

前に、私は比較的パチには寛容だと書いたが、最近のヤフオクに溢れるパチにはさすがに辟易してきて、どうせならタイプ品のカテゴリーでも作ってくれないかとマジで思う(チュードルなどほとんど偽物だらけで、いくらロレックスの廉価ブランドとはいえ、これではチュードルが可哀想だ)。出品は自由だが、はっきり言って時計リサーチの邪魔なのである。ついでに、本物であろうともなぜショップさんより高いんだという「個人出品ボッタくり価格品コーナー」というのも作って欲しい。今やパチとボッタクリと、オークションでも何でもない相場通りの“ただの売り物”、それらの合間にたま~におもしろいブツがあるというのがヤフオクの現状。今日はその中で私が最も好まない“ただの売り物”、特に個人出品のそれについて。

何年も前に、まだロレックス入門者だった私が有名な並行全国チェーンのある支店で手持ちを売ったときのこと。3本売却したうちの2本はそのショップさんのHPに載ることはなかったから幾らで売られたのかわからないのだが、一本(エアキング)は37万円で売られているのを後で見つけた。買取が22万円だったので、利益率は40%である。ずいぶんと抜くものだと思ったが、その法人の支店はどこも都市部の一等地にあり、店員も多く、地代や人件費を考慮するとまあ仕方ないと今は思える。ちなみに利益率というのは、仕入÷売価。1-(22万円÷37万円)である。約40%。この事例はさすがにやや割高だが、それでもショップさんはやはり買取価格に25%ぐらいは利益を乗せるのが普通だと私は考えている。

ヤフオクの話に戻る。オークションや個人売買のメリットは、掘り出し物が手に入りやすい、他にはやはり売り手・買い手にとって中間マージンのない良い価格で取引が出来るということであろうか。だが一方で多大なリスクがあるのは皆さんもご承知の通り。買い手にとっては、名も無い個人から買うという不安、またもしかしたら偽物、傷物かもしれないという不安があるし、故障した際の保証がないというリスクもある。一方、売り手もやはり相手(買い手)が見えない不安(金払いが悪かったり、狂気のようなクレーマーだったり、そういう悪質な買い手というのは一定数必ず社会には存在する)もある。

それらのリスクを冒してもヤフオクで時計を売買するのなら、上のエアキングをモデルケースに書けば、買い手は37万円よりは安く入手して然るべきであるし、売り手は22万円よりは高くないとヤフオクに出す意味がない。わかりやすく再度強調の意味で書く。

私のエアキングをお店は22万円で買い取り、それを37万円で新たな客に売った。

この事例をベンチマークにすると、そのエアキングがヤフオクで30万円で落札されたらかなり美しい取引だと私は思う。売り手は22万円より高く売れたわけだし、買い手は店頭相場の37万円よりも安く買えたので、お互いに相場よりもいい値で取引が出来ている。美しいなあと心から思う。入札者はこういうハッピーな着地を目指してBIDすべきだし、出品者はそうなる設定をしてスタートさせるべきだ。ライバルがいなければ入札者はもっと安く手に入るし、逆にライバルが多くて競ってくれれば出品者はうれしくてドキドキするだろう。それこそがオークションの醍醐味というもの。

だが今のヤフーオークションでは、個人出品者が中間マージンをすべてポッケに入れるという、エアキングを例に取ると、37万円か、下手するとそれ以上の価格で出品されており、そんな個体だらけ。いや、それどころか、それより遥かに高い値付けの物も多い。あるいは、誰もがげんなりする「最低落札価格」有りの出品。

インターネットが発達して情報をいくらでも拾えるこの時代に、そういう時計はまず取引が成立していない。実際のところ、店頭価格と同等かそれ以上で個人出品されているロレックスが落札されたのを、少なくとも私はこの数年間で一度も見たことがない。100万円超えのデイトナが落札されたことはあっても、やはり店頭価格よりは安かったからだ。だから、取引が成立していないために実害はほとんどなく、在るのはそういう値付けをされたままいつまでもとどまり続けているたくさんの時計たちである。

ある医師が私に言った。「流れることが大事なんです。血液がさらさらと流れないと細胞は死んでいく。川もそうでしょう。流れない川はよどみ、そして腐臭すら放ち始める。あなたの生きるビジネスの世界も同じはず。物とお金が動くこと、それが大事でしょう?」。

なぜ流れないか。はっきり書いておく。誠意がないからだ。

私が働く業界でかつて“ビジネスの神”と呼ばれた男がいた。本当に手品のように億単位、数十億単位のディールをまとめ上げ続けるその手法は今もって私には真似できないのだが、彼のすごかったところは30年以上そういう実績を上げ続けたことだ。つまり彼は“勝った男”ではなく、“勝ち続けた男”だったということ。清濁併せ飲むとは彼のようなことを言うのだろう。汚いところもたくさん持っていた役員だった。その彼が当時まだ20代だった私にビジネスとは何だ?と、まるで禅問答のように問うたことがある。面接マニュアル本に書いてあるような詰まらない答えを言おうとした私を途中でさえぎり、まるでやくざか犯罪人のような面相の“神”は真顔で「ビジネスとは相手を幸せにすることだ」と言った。考えてもみなかった答えだったので、私は竹刀で頭をぶん殴られたように気持ちになったことを今でも覚えている。今、思い出すと、毎日誰かが彼を訪ねてきていた。いつもひっきりなしの千客万来。そういうことだったのだろう。

ロレックスは高い。売るのも、買うのもべらぼーに高い。日々汗して働いた給料から絞り出すように捻出したお金で買うわけで、そうであるからこそ、私はいつも自分も相手も笑顔になれる買物にしたいと思う。お店は売れたことで利益となり、それが家賃や従業員の給料、あるいは次の仕入の資金となり、時計という市場の中で物とお金が動いていく、そして私もまた自分の稼いだお金の対価として欲しかった良質な時計が手に入る。お互いに「ありがとう」の対等かつ友好的な関係であり、そこには笑顔があり、幸福感すら漂う。

ヤフオクでも、誠意ある出品はたくさんあることを私は知っている。過去手作りのお猪口を買ったことがあるのだが、とても丁寧な品で届いたときの心づくしもすばらしいものだった。又ある廃盤CDを落札した際に取引連絡で盛り上がり、送られてきた商品にたくさんのグッズが同梱されてきて、私もうれしかったのでお返しをしたことも良き思い出である。だが、ことロレックスになると、もう欲望ギラギラの出品ばかり。相手には相場通りの高額な出費を強いて、自分だけが得をし、そしてお決まりのノークレーム・ノーリターン。買い手への思いやりもきっとゼロではないのだろうが、その欠片ですら見出すのは難しい。

流れゆかずいつまでもとどまり続ける時計たち。そこにあるのは時計ではなく、時計に姿を変えた人間の欲望であると言ったら言い過ぎであろうか。私は一度だけヤフオクでロレックスを買い、痛い目に合って懲りた。あまり振り返りたくない出来事だが、読んでくれている方々の多少の参考にはなるだろうから、次回はそのことについて書く。それにしても今日は暑かった。みなさん水分補給としっかりと睡眠を。
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