ヤフオクでのロレックス購入記

ヤフオクの実体験について。私はそれほどリスクを恐れないほうである。それは確かな目を持っているという自信があるからではない。あるいは、何かトラブルがあった時に敢然とそれに立ち向かう強い意志を持っているからでもない。むしろそれらの逆である。

私は多少のリスクを得ないと、手に入りにくいものは得られないと考えている。手に入りにくいものとは、市場価格よりも安価な値付けの商品や競争の多い希少な商品というシンプルな意味で書いている。そこはギャンブルであり、もしも何らか瑕疵のあるものを掴まされたら、私はそれをリカバーするためにエネルギーは費やさず、それを自身の負けとして受け入れていく傾向にある。つまりよほどのことがない限り、ちなみに「よほどのこと」というのは悪意のある騙しなどで、そういうのは別だが、主観の差異による返品・返金交渉などはまずやらない。そこにエネルギーは費やさない。賭けに負けたと感じる。

私はちょっとした物をヤフオクで入手することは比較的好きで、多いのは廃盤のCD、個人手作りのもの、ロレックスの付属品などをたまに落札するが、もちろんそれはただの買い物であって賭けではない。しかしロレックスそのものをヤフオクで買うとなると、これはもうギャンブル以外の何者でもないと若年時から張り続けた私は思うのである。そして私は賭けに負けた(苦笑)。やはりヤフオクでロレックスはリスキーであった。

その個体は相場よりも15%ぐらい安い価格(ロレックスだからもちろんそれなりの価格ではある)で出品されていた。分かりやすく書けば(実際には違うが)、相場で100万円のロレックスが85万円ぐらいで出品されている感じ。一見お買い得商品のそれが常にそうであるように、その個体も私が発見したときには多くの質問が、それこそ10を超えるそれがなされていた。狙っている人が多いという証左である。

3桁の「非常に良い」がついていて「悪い」はひとつもなく、過去の売り買いの履歴もまあ普通の人である。怪しげな時計をたくさん出品しているわけでもなく、過去の評価欄を見ても、その個体への回答を読んでも、文体からは親切で丁寧な人であることが伝わってくる。ここでまずハードルは下がる。

時計のセールストークは、購入したものの勿体なくてほとんど着用していません。中古だし主観ですがたいへんきれいです。OHには出していませんが動作に問題はありません、などの言葉が並ぶ。ただし肝心の写真(3枚)は、どれもがやや引き、つまり文字盤やケースが拡大で写されているショットはない。従って、質問の多くは傷の程度や文字盤が鮮明に映った写真への依頼などであったのだが、出品者はそのどれに対しても、とてもフレンドリーな文体で丁寧に返答している。「中古ですから傷は無くはありませんがとってもきれいです!」「時計は間違いなく本物なので、同じ品番の写真をネットで見てください。それとまったく同じです!」。

私はそれほど悩まずに賭けた(入札した)。その個体はどうしても欲しいというわけではなかったのだが、一度ぐらいヤフオクにチャレンジしてみようと考えていたし、それほど古い年式のものでもないのでパチ物のリスクは少ないと判断した。結局誰にも競られることなく私は初のロレックス落札を体験したのであった。取引掲示板でのやり取りはスムーズで翌々日には非常に丁寧な梱包で私の手元に届いたのだが、そのロレックスを目にした私は次の言葉を口にした。「何じゃ、こりゃ?」。腹部を撃たれたジーパン刑事が目をまん丸にして驚愕とともに発したそれではなく、極めて冷静に淡々と私は呟いたのであった。「何じゃ、こりゃ?」と。

傷だらけであった(笑)。どうやったら時計にここまでの傷がつくのかというレベル。時計に傷があるというより、傷にまみれた時計。出品者は確か勿体なくてほとんど着用していないと書いていたのだが、ジャングルの奥地でゲリラとして活動していたのではないかと思った。そうゲバラのように。ただし本物である。それはもう日ロレに持ち込まなくても感覚でわかるほど明確に本物ではあった。シリアルを確認するためにブレスを外すと、そこには大量の茶色い埃だかゴミだか垢だか何かわからないがとにかく汚いものがびっしりと。今度は「うへぇ~」である。まずは爪楊枝にアルコールティッシュを巻いてそれを丁寧に除去。そして水道水で本体とブレスを洗浄。きれいにはなったがやっぱり傷だらけ。そして、タイムグラファーで日差を測ると、マイナス150秒。マイナス15秒ではない、マイナス150秒である。しつこいがここでもまた「何じゃ、こりゃ?」。

賭けは負けであった。単勝1倍台の大本命馬の単複を買ったらビリというぐらいの負け。先ほど書いたように私は返品交渉などはしない。なぜなら出品者の記載に嘘はないからだ。傷は無くは無いがきれいです。これは主観であって数値化されているわけではない。OHに出してはいませんが動作に問題はありません。ふむ確かに動いてはいる。針は確かに右回りに回ってはいる。正直に書くとその個体へのショックはなかった。ただ賭けに負けたというギャンブラーの心理を久々に味わった。1万円でもなく10万円でもないウン十万円の賭けに負けるというのは、経験者はわかるだろうが、ちょっと呆然としてしまうが、そこは気丈な自分、さっと気持ちを切り替えた。昔の武将は結婚にあたり、三日三晩続く婚礼の祝言でどんちゃん騒ぎをし、それが終わってからようやく寝間で相手の顔を見るという。そのときに「何じゃ、こりゃー?」と愕然とするよりはよっぽどマシだと私は考えた。即工房に持ち込み、初めて「研磨をお願いします」と依頼。数週間後に戻ってきたそれをすぐにリリースしたのであった。以前、「使わない時計はかわいそうではない」と書いたが、ここでもまた「すぐに手放される時計はかわいそうではない」を地で行ったことになる。嫁ではない、時計である。

まあオークションなどそんなものだろうと今は思う。大金をはたくものではない。ちょこちょこと安いCDや、せいぜいロレックスの冊子あたりを千円単位で買っている分には楽しいし、そういうスケールのお遊びとして今後は接していこうと考えている。今後、絶対にヤフオクでロレックスを買わないなどと宣言するつもりはないが、まあもう買わないだろう。先ほど書いたように、そこは賭場であり、それが麻雀だろうと競馬だろうと、すべての賭けは依存症ででもなければお遊びの範疇で楽しむものであり、失ったら心底痛いと思える額を張ってはいけないという意味において、私はヤフオクという賭場でロレックスは買うべきではないと自分を戒めた。

最後に、私は出品者に悪意はなかったと思っている。出品額が相場からは安かったことから、むしろ良心的な人だったとすら思う。普通に経済的余裕がある中でロレックスを買い、10年ほど使い倒してからヤフオクで売っただけのこと。だが、だからこそヤフオクは危険だと思った。そこにあったのは悪意ではなく落差だ。ロレ所有者全員が後生大事と丁寧に使っているわけではなく、そういう人と私の時計との向き合いに落差があり、それがまた世間と私の落差でもあるのだろう。ロレックスを購入して、「何じゃ、こりゃ?」はやっぱり正しくない。少しでも参考になればと思っての更新である。
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