オリジナリティーについて

一度だけ訪問したことがあるリベルタスさん。最近、同店の記載で「針は消耗品のため交換されていてもその価値は減りません」というのを何度か目にした。「針の色が文字盤のインデックスと合っているかどうかが大事、塗り直しもOK」と断言。さすがである。同社こそが日本のヴィンテージ市場のマーケットリーダーであるがゆえにだ。パーツすべてがオリジナルであることが好ましいという考え方を否定するつもりはない。むしろ正しいと思う。だが、もはや半世紀を経ようというヴィンテージ時計の更にこれからを考えるならば、どこかで考え方を変えるというか、許容の幅を広げていかないと今後の市場はどんどんと狭くなるばかりだ。何せ、時計はその多くが消耗品で成り立っている「精密機械」なのだから。

何度も書いてきたように、私について書けば、徹底したデザイン至上主義なので、個人的には針どころか竜頭や他のパーツが交換されていてもさほど気にはならない。私が気にするのは発売以来一度も手を加えられていないかどうかではなく、古い時計であっても視覚における色彩や形状のバランスがきちんと取れているか、である。従って、文字盤のインデックスは焼けているのに針だけが生白くルミノバに交換された個体を受け入れられないのは、それがオリジナルではないからではなく、色彩のデザインがあまりにもアンバランスだからである。又、チュードルのサブマリーナではオリジナルのデコボコ&ガビガビの文字盤をよく見るが、あれなら純正のきれいなサービスダイヤルに交換されている方が私には好ましい。

そういう指向であるから当然私はオールニューもリダンダイヤルも否定しない。古いオイスターデイト等における、宝石の付いていないブルーグラデーションダイヤルは過去ロレックスから発売されたことはないので、たまに目にするそれはすべてリダンだが、機会があれば手に入れたいすらと思っている。

オリジナルにこだわる考え方も、またそうではない考え方も、ともに個人の自由である。ただ、私は自分の基本的なスタンスというのは持つべきだと思っている。スタンスはポリシーと言い換えても良い。昔、私がまだ競馬をやっていた頃のCMで、「自分のスタイルを見つけると競馬はもっと楽しい」というキャッチフレーズがあった。これは至言で、あらゆることに通じる。自分のスタイルを持つこと、それは趣味における最高の自己追及&表現であり、またこだわりともなる。誰に惑わされる必要もない。世間に流される必要も、お店に踊らされる必要も、隣りの誰かさんの顔色を覗う必要もない。邪道と言われようが、自分の金と時間を費やしての趣味なのだから、ひたすら自分の好きな道をゆけば良いし、同じ意味において、私は他人が自分とは違う趣向を持っていても、それを批判することはしないし、したくないと思っている。色々な人がいても良いではないか。

「自分のスタイルを持つと時計はもっと楽しい」

亡き私の父は生前古いカメラをこよなく愛し、私ら家族に多くの写真を残してくれた。当時ですら時代遅れのごっついカメラをどこへ行くにも持ち歩き、家では頻繁に手入れしていた姿を思い出す。幼かった私がいじっても怒りはせず、フィルムを抜いていつまでも遊ばせてくれた。今でもあの硬質な手触りと、レンズを覗いたときに香る皮とメカ独特の匂いを思い出す。詳しくないのでモデル名はわからないが、普段は収納されているレンズ部を外に出す箇所が蛇腹になった古い仕様のカメラだ。父は登山とスキーをこよなく愛したので、数え切れないモノクロの山岳写真が実家のアルバムに収まっている。それと同じぐらいの大量の家族の写真もまた。古い道具を愛することは私にはとても人間らしい行為に思えるのだが、それは在りし日の父の姿が今も記憶にあるからなのかもしれない。

随分と話が逸れた。今日はヴィンテージのことをテーマにもっと掘り下げようかと思ったし、悪意ある上塗りや後乗せなどについても触れようと思ったが、書いているうちに面倒くさくなった(苦笑、すみません)。結論、人それぞれの自分のスタイルで楽しもうではないか。横目で他人の人生を覗き込み、それを羨んだり、その価値観を批判したり、又押し付けたりする必要もない。人はそれぞれの人生をそれぞれの価値観で生きているのだから。誰の人生も面倒なことや嫌なことが余りにも多く、思い通りにならないことだらけであろうが、だからこそ数少ない楽しみである個人の趣味ぐらい、人目や世間の常識に縛られずに、自分のスタイルで好きに楽しめばよいと思う。他の嫌なこと?それは仕方ない。自身の運命を受け入れ、独り歯を食いしばって乗り切るしかなかろう。人生なんてそんなもんだ。幸いあなたや私には最強の相棒がいるではないか。未知の世界へ挑む潜水士や冒険者という名の。左腕のこいつらとともに乗り切っていくしかない。
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