相場の話(改改定版)

モノを売るにあたって一番大事なのはプライシング(値付け)である、と私は常々思っている。私は前職で専門家に就いてプライシングを徹底的に勉強した。その商品が売れる売れないの大方は値付けで決まる。逆に書けば、商品の値付けを最初に間違えると、それを売り切るのは至難の業となってしまう。

まず市場価格というのがある。実勢価格や相場ともいう。ネットを叩くと楽天やヤフオク、あるいは各時計ショップのサイトや楽天あたりで該当時計の相場は瞬時にわかる。だがしっかりと書いておく。ネットを叩けばいつでも買える時計の価格、あれらが「適正価格」なのではない。それは絶対に違う。では、あの価格は何なのか。私個人の見立てとして以下に書く。

あれらは単に「昨日も今日も売れなかった時計の価格」でしかない。昨日も買え、今日も買え、たぶん明日も買える価格。いや、下手をすると一か月前にも買うことができ、そしてかなりの確率で一か月後にも買える時計の価格でしかない。つまりは初動に失敗した売れ残りプライス。良い価格の時計など、下手をするとHPに出した午前11時の1時間後に売れて、昼過ぎには売っていた形跡すら無くなったりするのだ。ONOMAXさんが良い例。私は楽天でいくつかの時計をアラート登録しているが、朝にメールが来てすぐにスマホでその店のHPに行っても、良い値付けをされた時計の大抵はすでに売り切れている。まだ寝ている時間に人が買ってしまうというわけ。朝が遅い夜型人間には少々つらい。そうやって足の早い時計は私や皆さんが知らないところで売れているのだ。ネットで世界がつながってからは良くも悪くもそういう時代になった。

今は時計も二極化の時代。すぐに売れる時計といつまでも売れ残る時計。なぜか。価格が今の日本人の財布に見合っていない、つまり高いから。そして残念ながら供給が需要を超えているから。前述のように良い値付けの時計、状態が抜群のヴィンテージ時計、希少モノなどは出てきたらアッという間に売れてなくなる一方で、ありきたり価格の時計はダブついてしまっている。従って、そういった「売れ残りプライス」を相場だと思って個人がヤフオクや委託でその価格を付けてもなかなか売れない理由はここにある。

賃貸物件などもそう。郊外ではなかなか借り手が見つからないし、都内でも事務所物件は空き家だらけである。いつも不動産屋のガラスに貼ってあるものの多くは売れ残り物件。良い物件は時間勝負で契約が決まっていると懇意にしている不動産屋のオヤジさんもそう言った。不動産屋滞在中に、ガガガガガとFAXで送信されてきたり、添付メールで送られてくる新着の中に勝負に出たオーナーによる出物物件があり、それは時間や分単位で仲介会社たちの取り合いになるそうな。ここも二極化。本質的には中古時計業界とまったく同じではないか。

結局インターネットが世界を変えたのだ。こいつが登場する前、顧客は圧倒的に不利だった。情報を持てなかったからだ。自分の足で店を回ってもせいぜい数店舗、それでは本当の横の比較はできない。だからメーカーも小売りもある程度は意のままの値付け、つまりは利幅の高い値付けができた。だが今は違う。劇的に違う。情報は世界に公開され、比較されてしまう。横暴なプライスなど見向きもされない。顧客は情報を握り、前回書いたように今や個人も事業者となり、ひんぱんに売買をおこなう時代である。労せず無料で手に入る情報などたかが知れているのだ。

インターネットはあらゆる既存価値(ヴァリュー)を破壊した。つまりこれまでプライスが付いていたものを無力化したと言っても良い。ネットで世界中のニュースが無料で手に入る時代に大手新聞社が青息吐息なのは当然のこと。この大きなうねりは既存のビジネスを直撃し、あらゆるビジネスが薄利になったのは、もはや世の流れ。郊外や地方のみならず都会でも小さな商店はどこもシャッターが閉まったまま。それが良いとはまったく思わないが、リアルにそういう時代がやってきたのだ。

今日、ヤフーオークションで、あるヴィンテージロレックスが80万円台で落札された。出品者が付けた価格通りであっさりと売れるのなど珍しいことだが、モノも良かったし、価格も「相場」よりは15万円は安かった。あるべきオークションの姿だと私は思った。そしてその時計よりも15万円高い「相場」通りの時計たちは今日も売れ残り、そしてたぶん明日も売れ残る。長くなったので今日はここまで。また改めてプライスについては思うところを書きたい。
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