故きを温ねて新しきを知る

会話中にフト相手の左腕に目を遣るとそこにはエクスプローラーが。ヴィンテージ1016である。ちょっとそれ見せてくれろと手に取らせてもらったのだが、まあ何というかやっぱり絶品だなこれは。70年代前半のマット仕様。ケースの大きさ、デザインの良さ、そしてバランス。文句の付けようがない。昨今では36mmのケースは小さい部類ではあろうが、3針のみというこのデザインではこれ以下も以上もない絶妙なサイズ。私は1016をこれまで所有したことがなく、多分これからもないのだが、エクスプローラーⅠは114270や14270より前の1016ですでに完成の域にあったことを(あくまで主観として)改めて認識する。

故きを温ねて新しきを知る。

逆に「最新こそ最良」という言葉もある。私は半分は正しく、半分は正しくないと思っている。工業製品という側面からだけ見れば最新こそが最良かもしれぬ。しかし、人間に正確な時間を提供するというシンプルな意味において時計の進化はとっくに行く着くところまで行き着いてしまっており、時計は工業製品ではなくもはや装飾品の色合いが濃い。前に時計の価値の大部分はデザインの良し悪しであると断じた。そうであるならば「最新こそ最良」はまったく正しくない。むしろリスクである。

デザインとは表現である。表現の世界は水物。どんなに優秀なアーティストだろうがディレクター(監督)だろうが、表現や制作の現場で最新こそ最良なわけがない。むしろ逆。評価が定まるには長い歳月を必要とすることが多い。そのキャリアや系譜の中に、良いモノもあれば当然のごとく駄作や失敗作もある。いや、むしろ駄作や凡作の方が遥かに多く、またその時々の周辺の流行にも大きく左右され、時に陳腐化し、時に再評価される。歳月が経ってみないとなかなかその真価も見えて来ない。

上に記載したエクスプローラーⅠ 1016などは何と言えばいいか、ケチのつけようがないと言うか、私は自己所有の同じ系譜である114270をこよなく愛好しつつも、かなわないなと素直に思ってしまうのだ。

5桁の高騰が著しい。

ここ数年ひどい値上げを実施した現行6桁の価格を5桁の中古価格が上回ろうかという勢い。それは現行品への失望の表れでもある。人気モデルが手に入らないことへの失望であり、やたら派手で華美になったデザインへの失望であり、更にドレス系や金無垢・宝飾モデルを売りつけたがるメーカー戦略への失望である。そう、ステンレス製の極一部のスポロレを除くと、ロレックス社が売りたい最新現行モデルの多くはあまり人気がないのだ。ドレスモデルのオイパペ、チェリーニ、デイデイト、金無垢デイトナなど。だから市場のお金が4桁、5桁に流れている。これは世界的な傾向であるがゆえに、一部の人気ディスコンモデルは品薄となり価格が高騰したというシンプルな図式。GMTマスターⅡ、エルプリデイトナ、旧グリーンサブなど。

今後については、価格については多少の変動はあるだろうが、価格よりもむしろ危惧すべきは、4桁・5桁がもうこの先生産されることはなく数は減る一方であるという事実。欲しいモデルがある人は本当に押さえておいたほうがいい。コレクターは当分手放さないだろうしし、皆さんが考えている以上に良質な個体は相当数が海外に流れており、この勢いは止まりそうもない。とは言え、中古も人気と不人気の2極化が著しい。個人的にはチュードルのサブ&クロノタイムは鉄板だと確信しているが、それについては長くなりそうなので別の機会に。*でもタイガーは駄目よ。
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