ヴィンテージ時計について(&ライジングタイムさん訪問記も)

これを書いたのは先週の日曜日。一週間温めて(放置して)の掲載。

今日は好天の休日。ロレ好きの古い知り合いとやや早い時間のランチ&時計談義を。彼と交わした会話を受けて、今日は久々にヴィンテージ系のネタ。先日、“OYSTER JUNKY WEB”のことを書いた流れもあるし。ヴィンテージロレックスはそろそろ曲がり角ではないかという内容。自分で言うのも何だが、私はヴィンテージにハマる資格じゅうぶんだと今も思っている。現に今でも海外のサイトで読みふけるのも、ebayでの検索も、もっぱらヴィンテージロレックス。ひとつしか所有しないド素人の私が書くのもたいへんおこがましいが、私は今でもヴィンテージロレックスが大好きだ。だが、そんな私ですら入り込めなかった要因が、その曲がり角の向こう側にはある。

このブログで長大なサブの記事をアップした頃がヴィンテージにはまった時期のピーク、当時はヴィンテージに対する憧れのような気持ちにからめとられ、とにかく夜毎はネットで、週末は店を訪問して、変な言い方だが熱心に勉強していた。大阪のクォークさんに赤サブやミルガウス1019を見に行ったり…、そうそう!、記事にまだしていないが秋田のライジングタイムさんにも行ったのだ。まずい、忘れてたな。せっかく思い出したので、ちょっと寄り道をしてそのことを書いておく。

西に赤サブや赤シードが出れば行き、東にミルガウスがあると聞けば出向いてこれいくら?と、雨ニモ風ニモ負けていなかった昨年のいつか。いやもう、当時はあまりにも色々なところに行ったので、ひとつひとつを明確に覚えていないのだ。ライジングタイムさん訪問は赤サブ目的だった。秋田県の大曲まで行ったのだ。HPに100万円以下の赤サブが出ていて、実物を見たくなって金曜日の夜に東京を発った。当たり前だが秋田ってすごく遠い。東海道新幹線とは趣がまったく違う。ここはマジで新幹線が止まるのかというさみしい駅に夜中に着き、駅前には何もなく、さらに着いた宿がコンクリート壁むき出しで、窓がなく、ここはアジアのどこかかという侘しさ。バッグに金も入ってるし。書いていると色々なことを思い出すな。早く寝てしまおうとふとんを被って早々に就寝、翌朝に近くの定食屋から取り寄せてくれた500円の朝食、これがびっくりするほど旨かった。熱々の大きなおにぎりと味噌汁、鳥のから揚げとたまご焼きと漬け物。これだけでまた同じところに泊まりたくなるほど。どんな高級なホテルの朝食もかなわない。写真を撮り忘れたことが悔やまれる。それから歩いてライジングさんへ。季節が良かったから秋口ぐらいだっただろうか。お店の外観写真は確か撮ったので後で探してアップしておく。小さいがとてもキレイなお店であった。店長(たぶんオーナー)の佐藤さんとは、この趣味に顔を突っ込んだ最初の頃に、GMT16710Z番のキャリバー3186をここから買っている(通販)ので初めてというわけではない。HPで顔出しされているあの方。写真以上にインデックスの焼けが濃く、結局、その赤サブは買わなかった。他に…、ああ!ああ!思い出した。まあ、もう書くのはやめておこう(笑)。有名な大曲の花火は、このお店の2階からよく見えるらしい。その時期に是非おいでください、お酒でも飲みましょうとありがたい言葉をいただいたが、さすがにその時期に訪問して2階から花火を見るのは厚かましいなあと。お勧めの店である。

話を本題に、というか、今日はライジングさんネタにすればよかったと今は後悔しているが、流れでこのまま行く。主としてマーケットに出回る4桁は1960年代から70年代にかけてのモノ。これらは生産からほぼ半世紀が経とうとしており、やはりどうしてもメンテナンスの問題が大きく立ちはだかってくる。実際のところ手巻きデイトナやcal.1530系のサブ、ミルガウスなどは正規メンテ終了である。cal.1560(古いエクワンなど)も多分受付不可。熟練者はいいと思う。メンテのネットワークもあり、ある程度真贋を見抜く眼を持っている人は。ただ市場というものは新たな参入者がいないと、拡大しないどころか急速にシュリンクしてしまうもので、曲がり角と書いたのはそういう意味である。

私は自分で入手し、どうせオールニューするのだからと、赤サブのブレスを外し裏蓋も開けた。だが、私には真贋はおろか、ムーブをはじめとする個体としての良し悪しはわからない。社外パーツが使われているかもしれないことも含め、私のような初心者にとってやはり日ロレにメンテに出すというのは、古い時計にこそ必須のこととなる。それが受付終了となると…。高額だということもあるが、好きなデザインのミルガウス1019を完全に射程から外したのはそういう思いから。私には無理だなあと。多くの初心者や素人さんの多くは私と同じような感覚を持つのではないか、そしてこれから先どんどん取扱い不可の個体が増えていく現状に対して新しい層や世代が入ってくるのかどうか。私は今の価格感では厳しいと感じている。高いわ不安だわでは初心者は怖くて入っていけない。それだったらまだ5桁や現行のほうに向かうだろうと。

だが逆の見方をすれば、現行がバカみたく高価に、そしてやたらと豪華&華美になった今、ヴィンロレが大きなビジネスチャンスの時期を迎えていることも又事実。それを「ロレックス・ヴィンテージ組合」に対して声を大にして言いたいのだが、そんな団体が存在しないので仕方なくここで書いている。敷居や価格を少し下げれば、現行に飽き足らない(不満を抱く)層の流入が見込めるからなのだが、「一緒になって価格を上げたら駄目だべ、駄目じゃん」、と横浜風に。ついでに「一緒になって価格上げたらアカンやん」と大阪風にも書いておく。とても強調しておきたいこと。5513あたりが50万前後のマーケットを形成したら、そしてメンテの強固なネットワークを整えれば、ちょっとおもしろいのに…などと妄想。

ヴィンテージに詳しい人のWEBやブログはすごく面白いし為にもなるのが、初心者には難しいというか、ある前提をすっ飛ばしているために敷居が高いものが多く、私のような変態的な者がヴィンロレにはまっていって、あれやこれやの失敗談とともに経験を重ねていく過程をブログで綴っていけばそれなりに意義もあったと思うが、私は残念ながら入口から引き返してしまった。

それでも私にはいつか5512を入手してオールニューしたいという思いもある。理由はまだメンテもオールニューも受け付けているから。しかも、5513は駄目だが5512はフチ無しの文字盤で交換してくれる。それなら針も新しくする。そういう亜流でしか私はヴィンテージとは向き合えそうもないが、リベルタスさんでよく出てくるブラウンに変色した1016とか、すご~く欲しいという本音あり、あれだったらオリジナル維持だよなあと、また矛盾することを書いたりもする。要するに悩ましいのだ。こういう記事を下書きに入れて数ヶ月放置したら、その数か月後にはアップする気持ちが失せたり、気持ちが変わったりするというのが冒頭に書いたこと。予定以上に長文となってしまった。今日はこの辺で。

risingtime.jpg
ライジングタイムさん

OYSTER JUNKY WEB

これを記事にするかどうかはずいぶんと長い間悩んだのだが-いや実はこれを書きながらまだ逡巡している-、思うところあって今回アップすることにした。あるHPが私に与えた影響の大きさ。もはやロレックスというブランドそのものが、あるいはロレ好きである私たち自身が失ってしまった何かがそこにはある。情熱といってもいいし、疾走感といってもいい。古いロレックスはこういう感性とともにあったことの喜ばしさ。自分もそうありたいという願い。もう更新されなくなって久しく、今さらこんなところで紹介されることを本人が望むとも思えず、ただ消すことなく放置していることはそういう意思の表れなのか、あるいは何かあったのでなければよいが、などと考えを巡らしてしまう。知る人ぞ知る“OYSTER JUNKY WEB”である。

世代的には私より10歳近く若い彼は1988年の15歳のときにロレックスサブマリーナー16800の魅力に取りつかれ、以後バイトに明け暮れ、1990年にサブを買いに香港へ、高校生である。何という早熟。予算22万円の彼は香港の現地人からサイクロップレンズ無しのサブを提示され、それを5513だと知らずに購入する。彼はその後アメ横で16610を、そしてebayでヴィンテージサブやシードを買っていく。

「サブマリーナー原理主義者は金無垢など買ってはいけない」、「狙うは正しく5513か1680であるべき」、「サブにはプロレタリアートこそが似合う」、などと過激な言葉が並ぶ。彼は購入したヴィンロレにオールニューを施し、裏蓋にこう入れるのである。“OYSTER JUNKY~”と。サブしかりシード(1665)しかり。その潔さ。WEBでは購入したロレの水没、ebayセラーとの物々交換(!)、オールニュー、裏蓋刻印、外装パーツの変更などをおもしろおかしく書き綴ってゆく。その文章の根底に流れるのは、言葉は悪いが、手に入れたロレックスをいかにして自分だけのモノに仕込んでいくかの物語といったらいいだろうか。

ヤフオクでロレックスを買うなんて怖い…、海外からの個人輸入でとんでもないまがい物をつかまされたら…、ヴィンロレはオリジナルこそ命…、人生において基本的にはリスクを避け、予定調和が人生の基本だと考えている人は一度OYSTER JUNKY WEBを読んでみるがいい。真似をする必要はないが、ここまで突き抜けないと至れない場所や境地というのがある、その事実を知ることは決して無駄ではない。

差益が出たら売却とか、いつか手放すことを前提とした箱入り娘のような扱いからは遠いその向き合い方。私が影響を受けたのはそこである。プロレタリアートにこそ相応しい4桁サブマリーナーを使いこなしていくこと、ともに時を刻んでいくこと、自分の物という証として外装のミドルケース、竜頭、ブレス等をすべて新調し、裏蓋に刻印を入れる。オリジナルのこだわりなど微塵もなく、希少であることに価値を見出さず、当時キムタクで大ブームのエクワンに目もくれないサブ原理主義者。あまりにも爽快で笑ってしまう。一読を強く勧める。私の赤サブのオールニューはこのwebとの出会いがなければ実行されることはなかった。

独白。ある日、私は愕然とした。オリジナルのままだったら、私はいつかこのサブを手放すだろうということを直感的に感じ取った瞬間があった。100万もの時計を私は簡単にまた飽きて何かと交換(下取り)するだろうと。こういった連鎖を断ち切らないと、私はずっと無明の闇で迷走していくことになる。そんなときに思い出したのだ、すべての自己時計にオールニューを施すサブ原理主義者のことを。今は心から感謝している、このHPとの出会いを。リアルな本人と出会ってはいないが、HPを通じて彼を知ることができたことを。

話を戻す。後半にいくと、多くの読み手にとって痛い言葉が並ぶ。彼ほどは突き抜けられない私やあなたの痛いところを突いてくるが、そこは真正面から受け止めて読むべし。例えばこんな言葉。「絶対的な『時計そのものの価値』の追求ではなく、相対的な『時計の比較』でしか価値を測れない空虚さ」。私や多くの人が逃れられないことの本質はこの言葉に凝縮されている。多くをここで語るのは野暮だ。リンクも貼らない。自分で訪問して欲しい。OYSTER JUNKY WEB。。。

新しい扉

今日は前回予告した記事を書く。結論から。「私はヴィンテージロレックスが好きではなかった」の巻き。

最初に関心を持ったヴィンテージロレックスはミルガウス1019のシルバー文字盤である。私はスポロレも好きだが、エアキングやオイパペ、旧エクワンなどドレス系に近いモデルも好きであり、1019も私にとってはそういう範疇のモデルであった。端正なミドルケースとベゼルの形状、そしてシルバーの地味目な文字盤にやや派手な赤いMILGAUSSのラインと赤いハンズ。最初にこれがヴィンテージのカテゴリーと意識せずに、単に自分の好きなデザインなのだということを強く意識すれば、道を誤ることもなかった。ここが入り口だった。

市場におけるこの時計の平均価格は本体のみでも250万円前後と、現役時代の不人気ぶりが嘘のような価格。ひとえに生産数が少なかったことがその要因で、ヴィンテージ市場においては、皮肉なことに“売れなかった”ことが、その後の異様な価格高騰の大事な要因となっている。ポールニューマンも然り。現役時代の不人気も、それゆえの価格高騰も私にとってはあずかり知らぬことであり、そういう意味ではこの時計が好みであったことはアンラッキーである。エアキング5500のような扱いであれば、どれだけ幸運だっただろうか。10万円台という価格である。私たちは幻惑されてしまっているが、30年も40年も昔の時計の値段としては、ハワイにだって行けてしまう真っ当な価格である。250から350ほどもするミルガウスは憧れながらも高価過ぎてリアリティーに欠ける“心のロレックス”にとどまることになり、私はそこを入り口として多少強引にヴィンテージの世界を覗き込むようになる。要するに手が届く古いロレックスに向かったのだ。

ある海外サイトで見た5513のプラドームに魅かれ、1680の黒い文字盤に一本だけ引かれた赤い文字に魅惑された。元来凝り性の私はこのブログに書くことをモチベーションとして、古いロレックスのことを徹底的に調べた。実際の時計とは乖離して、私は妄想の中でヴィンテージロレックスに深く深くはまり込んでいったことになる。

だが、春先にある店舗で初めて憧れの1019をじっくり手に取って見せてもらったときに味わったあの失望感。研磨されまくって痩せたミドルケース、痛んだ文字盤に錆びたハンズ。感動は湧き上がっては来ない。いわゆる“ヤレた”感に魅かれることのない自分のおかしな感性、これだけ頭の中ではヴィンテージに魅かれるくせに、実物での感動の無さはどうしたことかと、興味を抱いた最初期から私はそんな自分でも説明の出来ないモヤモヤとした感覚のまま結構な日々を過ごすことになる。

サブ5513のドーム風防は心底格好いいと思い、だが休日に中野のショップを訪問、ショウケース越しに眺めると、やはりトキメキはない。針だけ交換されたアンバランス感、ひび割れた文字盤、伸び切ったブレス。会ったことのない誰かによって徹底的に使い古された時計。う~ん、これ欲しいかあ?普段なら欲しいと思えば、多少は無理をしても手に入れる性質の私が躊躇したのは、無意識レベルで警鐘が鳴っていたからとしか思えない。ビジネスでよく経験する、理由はわからないけど、これは「違うぞ」という “ぞわぞわ”した感覚がここで働いたのだ。

何度も書いてきたが、私は時計を時間を知る道具と位置づけてはいない。自己を真に満足させるもの、そしてファッションでもあり、願わくば生き方の自己表現でもありたい(←上手く言えていない)。トキメキもなく何十万も出せるわけがない。

覚醒するきっかけとなったのは、先般のミニオフ会。某氏のvery mint な5桁サブデイト16610LNを見たとき。それまで見向きもしなかったモデルなのに、増してヴィンテージにハマっていた真っ最中なのに、私は確かにその時計の美しさに心魅かれたのである。当時はあまりにも経年劣化した時計を見過ぎていた所為だろうと思ったが、そうではないことが数日後にはっきりとわかった。会社からの帰り道で。嗚呼、わかったと。もう少し正確に言えば、そうだったと忘れていたことを思い出したのだった。最初の頃、私は確かに自覚していた。自分はヴィンテージが好きではないと。あの感覚は気持ちの底のほうできちんと生きていたのだ。

そう、私はヤレたヴィンテージロレックスが好きなのではなかった。私が好きな(デザインの)ロレックスがたまたまヴィンテージなのだと。似て非なるもの。私は女子大生が好きなのではなかった。たまたま好きになった女が女子大生だったのだ。違うか。私は熟女が好きなのではなかった。たまたま好きになったのが人妻であった。だから人妻全般が好きだというわけではない。う~む、違うようでもあるが、言い得ている気もする。

私にとってロレックスの良し悪しとは機能・性能ではなく、デザインがすべてだと以前書いた。それは今も変わってはいない。私はシルバー文字盤に赤い文字と針が映えるミルガウス1019のデザインが好きなのだと。その時計が不幸にして何十年も昔に生産中止になって、ヴィンテージのカテゴリーに入れられているだけなのだ。サブノンデイト5513も同じ。あのシンプルな文字盤、縁のないインデックス、ドーム風防が好きなのだと。赤サブも同様。サブのベーシックな文字盤をベースにした、あのたった一本の赤いラインが私は好きなのであって、インデックスが濃く焼け、そこにシミや剥がれがある、いわゆるアンティーク感満載の1680レッドサブが欲しいわけでは決してない。前々回の赤サブ記事の写真がすべてを言い表している。

嗚呼、自分は徹頭徹尾デザイン主義の男であった(単に面食いとも言う)。簡単に書けば、美しい個体の1019や5513を私は求めていたのだ。そんな奇跡的な個体がそうそうあるわけではなく、私はリアルな古くヤレた時計たちに失望し続けていたことになる。こういうことが自覚できていなかったことは愚かしいとは思うが、実はそれなりに筋は通っていたんだなあと少し自分を褒めたい気もする。あの「どこか違うぞ」という ”ぞわぞわ” した感覚はこれだったのだ。大金をはたいてから気付いたのではなかったことは素直に喜ばしい。

そして、最新こそが最良、あるいは時計はきれいな方が好ましいという当たり前の感覚を持っていたのだということも改めて自覚したのだ。それでも6桁に行かないのは、その大きく華美な基本デザインが好きではないからであり、徹底的にデザインをこそ最上位に置いているのだということを、今回の長かった思考の末に改めて自覚できたのであった。私はビジネスでもそうだが、感覚的に動いてしまう男で、であるがゆえに後で思考を凝らして、自分の感覚が正しかったかどうかをよく検証する必要に迫られる。文章から理屈っぽい、あるいは理詰めなタイプを想像されるだろうが、日常においては逆のタイプ。

全部氷解してゆく。実は私は不思議だったのだ、これだけヴィンテージにハマりながら、なぜGMT好きの私が1675にはまったく魅かれないのか。今は理解できる。青赤のペプシGMTのデザインは好きではあるものの、その基本デザインは5桁までは継承されているがゆえに、私には必要がなかったのだ。選択肢が多いなら、時計は新しいほうが私は好ましいから。その結果として、最も新しい最終品番の16710だったのだ(現行の6桁GMTのデザインは好きではない)。だが、1019や5513、1680は違う。5桁や6桁にその歴史は継承されていない。赤い表記があるサブマリーナは1680で、縁なしインデックス&プラドーム風防の5513は、そのデザインが引き継がれることなく何十年も昔に生産が終わってしまったのだ。

改めて書く。私はヴィンテージ時計が好きなわけではなかったと。

だが、覗いたからからこそ感じ得ることだが、たぶん、ヴィンテージロレには深い真髄がある。多くのヴィンテージマニアにしか分からない世界があるのだろう。それは単に外観のヤレだけではなく。古いロレックスの作りの良さや手作り感、丁寧さ、黎明期ゆえの制作者のこだわり、もっともっとあるのだろう。足を踏み入れた者だけにわかる良さがあるのだろう。そこをくぐった者にだけわかるヤレの味わいというものもあるのだろう。だが、私はそこへは足を踏み入れないつもりである。私にはもう時間がなく、そしてたぶんそこまでの情熱がない。1019のようにヴィンテージの世界には異様に高い価格の壁がある。簡単に書くと、そこまでの金もない。

それでも私はいつか好きな古い時計を1本は持ちたいと思う。それはヴィンテージだからではなく、好きなデザインの時計として。自分の心に従えばそれは言葉通りに“きれいな”時計であって欲しく、だが40年も過去のミントな時計などにそうそう出会えるものではなかろうが、もし出会えたら幸せであるな。

この扉を開いたことで、たぶんこれからロレックスとの向き合いは劇的に変わる。事実、私はすでに集約に動いている。本当に好きな時計だけを持っておこう。もし、それが一生を共にすることになるのならばそれは幸せなこと。手放すこともあるかもしれない、先のことはわからない。今を生きる。今日の続きのネタがもう少しあるが、それはまたいずれ。もう少し掘り下げてから。今回の記事は極めて個人的な彷徨でしかなく、だらだらと長い文章にお付き合いさせてしまったことを申し訳なく思う。私自身の為にはどうしても書き留めておかないといけないことだったので。

赤サブ~1680

誰も待ちに待たない赤サブの記事第2弾。今回調べていく中で、私はある発見をした。それによって自分の中のこれまでのいくつかの疑問はほぼ氷解し、それは結構画期的ではあるものの、多くの人にとってほとんど関心がないというその落差が悩ましい。この冒頭、ささやかに書くが、結構なところ定説を覆す内容である。

【赤サブ&白サブの謎~生産年】
一般的にサブマリーナデイト1680の赤サブはごく短い期間に生産されたもので、多くの偽物や交換ダイヤル物も多いと言われている。1680の生産はおそらくは1968年頃あたりから1980年ぐらいまで、赤サブについては一般的には1970年頃から1974年ぐらいのわずかな期間という説が多い。これをベースに、赤サブについて話を進めることとする。

これに基づき、赤サブには以下2つの定説がある。
①1970年から1974年までのたった4~5年の生産説(圧倒的に白サブが多い説)
②1968年に赤サブのみで発売され、1974年頃まで生産説(白サブは後から生産説)

①は、よく書かれている、いわゆる赤サブ稀少論につながる。つまり12年近い1680生産の中で、赤サブはわずか4年少々しか作られなかったので、本来は希少なはずの赤が多く存在するのは、それだけ偽物が多かったからというもの。私はこれを否定する。60年代後半の赤サブは普通に多く存在しているからだ。

②は、サブマリーナ初の日付表記有りの1680は1968年頃に赤サブのみで発売されたというもの。ここは大事なポイントで、スタート段階では白サブは発売されていない。おそらくは1970年頃に後追いで白も発売され、数年間だけ赤白は並行して生産、やがて赤は1974年頃に生産が終了して、以降白サブだけになったというもの。私はこちらの説を採る。

1680の白サブについて、60年代後半物はほとんど存在しないのだ。どれだけ探しても出てこない。従って、スタートの1968年から1974年頃までの前期に圧倒的に赤サブが多いのは、何も偽物や交換物が多く出回っていたのではなく、当たり前のこと。12年間の生産期間中、前期は赤サブ主体だったのだ。世界中どの個体をネットで見ても、その思いは確信として深まっていった、先日、あるサイトを発見するまでは。

それはすでに売れ切れているが、ある日本のショップでの販売履歴。1968年製白サブ(シリアル25始まりで1968年製と記載)、しかも日本の正規保証書付き。これを見たときはがっかり。白サブは1968年のスタート時には発売されていないという②の定説が崩れたからだ。1680白サブ1968年製。

これがもし赤から白へのダイヤル交換物だとしたら、私も救われる。初期の赤サブ・ハック無し、ドット無し竜頭の個体をわざわざ後年の白サブダイヤルに載せ替えたということ。白を赤にではなく、人気の赤を白に。むむむ。まあ世の中にはいろいろな人がいるので、その可能性も無くはない。「ミーハーな赤などダセえよ」と付け替えたか。あるいは職人さんがOH中にダイヤルに傷を付けてしまい、やべえ、あっ赤サブの予備はねえよ、仕方ねえ白サブを付けとくか・・・とか?だが、普通に考えると、1968年の発売初年度、同時に白サブも発売はされていたと考えるほうが正しそうである。と私は一度自説を曲げそうになった。

ここで私はふと考えたわけである。シリアルの年式ってそもそも正しいのかと。私は特にこれというサイトではなく、どこも同じだろうと都度検索して調べ物に使っていた。例えばこういうサイト。ロレックスシリアル。 確かにこれを参照すると、シリアル25*****は1968年製であり、多くのショップが記載する製造年もだいたいそのシリアル表に沿っている。他のサイトに行くと、同じものもあれば微妙に違うものもある。

これが私のミスであった。ネットに掲載されているものを盲目的に信じていた。ネットの情報は転載されていく。間違ったものが検証なしに普及していく危うさは知っていたはずだったのに。

そこで私は海外の有名なロレックスサイトである「vintage rolex forum」を訪問した。そこには「The Vintage Rolex Case Number Project」という膨大なデータページがあって、メンバーが自分の個体やショップで売られている情報から、様々な時計のシリアルを書きこんでいくことで、リアルなデータを作ろうという試みがあることを知っていたからだ。少なくともそのリストは他とは違い出典が記載されていることによる根拠のリアリティーがある。他の多くのサイトのシリアルリストには出典がない。結論を書く。そこではシリアル25*****は1970年だった!それどころか、これまでネットに出回っていたシリアル、特にヴィンテージ物の常識を覆す内容にすらなっている。

一例を挙げよう。前のリストでは私のバースイヤーである1963年製は16*****(7桁)であり、私もよくそのナンバーの個体を探したものだが、「vintage rolex forum」では1963年製は一桁少ない95****(6桁)である。何ということだろう。70万も数字がずれているではないか!forum の細かい情報を元にリスト化したサイトを掲載しておく。先ほどのとは随分と違うことがわかってもらえると思う。ロレックスシリアル2。

ここで以前にサブマリーナの記事でさらっと書いたことを改めて書く。そこで私は手元の分厚い洋書には、1680は1969年発売(赤サブのみ)となっていると書き、その発売年度についてやや懐疑的なニュアンスを残した。これまでさんざん1967年製、1968年製と記載された赤サブの販売履歴を見てきたからだ。だが、もしその年表記の論拠となるシリアルが今回と同じように間違っていたら…。調べていくと、、すべての事実がその洋書通りに進んでいくのだ。驚くほどに。先ほどのリストを見ていただきたい。1969年は20*****から始まっている。私は今後その説を採りたいと思う。

まとめる。1680は赤サブのみで1969年に発売された。

シリアルは20*****あたりから39*****あたりまで。1966年製赤サブ(シリアル20*****)などと、画期的な年度が記載された過去のショップ販売履歴(私はこの1966年という記載にずいぶんと惑わされた)も、先のリストから導けば、単に1969年製である。白サブは1970年(頃と曖昧にしておく)に25*****あたりから発売された。1974年以降になると、赤サブが消え始める。シリアルでいうと40****あたりから。1978年製の赤サブが売られていたりするが、私には何ともいえない。一般的には1974年までである。これが結論。冒頭の①も②どちらも、微妙に正しく、微妙に間違っていたことがわかる。

*この説が正しければ、シリアル20*****から24*****台の赤サブが、白サブから書き換えられた偽物である確率はほぼない。白サブはまだ発売されていないので。

最後に、年式を安易に表記することのリスクを改めて感じた。自分のバースイヤーだと思って買ったら、何年も数字がずれていたら泣くに泣けない。年式は次の4要素から推測が可能である。ケースのシリアル、裏蓋刻印、クラスプコード、保証書。たぶん製造年度を最も近く表しているのは裏蓋刻印であろう。シリアルは年度が推測でしかないこと、その数字はケース製造年である可能性が否定できないことから、私はヴィンテージ物についてはそれほどはアテにならないと感じている。クラスプコードはもっとひどい。数年は簡単にずれている。多くはシリアルから推測される年より後のものが付くことが多い。最後の保証書の日付は論外である。私が過去に見たミルガウスはシリアルが79年なのに、保証書日付は88年だった。


【赤サブの偽物】
次の話題。私は偽物の赤サブというものも見てみたかった。知らない人のために画像を載せておくと、白サブはSUBMARINERの表記が、ft/m表記より長い。赤サブは基本的には短い。なので、白サブの上にそのまま赤を載せると下記のような感じになり(ただし画像は書き換えではなく偽造ダイヤル)、これはもう問答無用のパチ物なのだが、こんなシンプルなものはさすがに滅多にない。で、色々と調べると、やはり可能なようである。載せ替えではなく、書き換え。たぶん見抜くことは容易ではないし、日本ロレックスは文字盤が書き換えられていようと正規物であればOHは通すのだと。ここから先は立ちいらないほうがよい。赤シード、TIFFANY、COMEX。前に書いた「知らぬが仏」の境地にでも入れば別。所有していない私にとっては他人事といえば他人事。
fake sub 1680 
偽物の赤サブ。
フィートファーストではSUBMARINERのSは下左端の6よりも必ず内側にくる。
この写真のように外側にくる表記はない。
他に、オレンジで囲われた王冠マークや大文字Lの跳ねもそうだが、OYSTER~の表記で一発でわかる。
左端のオレンジは、このラインは5分刻みに太くないと駄目デス。



【トリチウムの焼け】
赤サブはあまり出回ってはおらず、それでもいくつかの個体を拝見。インデックスや針のトリチウムはオリジナルだと普通はこんがりとオレンジに焼けていて、さすがに経年変化によるシミが出来ているものが多い(ちなみにトリチウムの焼けは英語で“patina”である)。中にはほとんど焼けていないものもあって、最初は交換用文字盤かと思ったが、調べてみるとそうではなく、古いロレックスのトリチウムの焼けはひじょうに個体差が大きく、ある海外サイトの検証では、普段使いで使い込んだヴィンテージ物ほど白く、箱にしまわれたままの個体が濃く焼けるという事例も紹介されている。真偽は所有したことがないので不明。個人的には、赤サブに限っては、あまり文字盤や針が焼けていないオフホワイトが好みである。黒ときれいな白に、赤い文字はひじょうに映える。下記の赤サブは何と最初期のメーターファーストである。奇跡的な個体ではなかろうかと。 
1680index.jpg     forum1680.jpg
          これぐらいの色合いが個人的には好みである(MK-Ⅱダイヤル)。


【赤サブの付属品】
以下、おまけ。私はどうやらコレクター気質満載であることは前にも書いたが、今回もまあ調べに調べた。何を?いや付属品のことを。しようがねえなあ自分と、やや汚い言葉を吐きながら書き記しておく。まずイカリ。アンカーである。これは鎖が付いていたら偽物。赤サブに限っては当時モノは銀色のヒモが正しい(笑)。もう書きながら笑う。実はこのアンカーにも時代によって細かい変遷があり、実に興味深いのだが、興味深いのは私ぐらいのものだろうから書くのはやめた。サブのアンカーは実に多様であることと、オークションに出ているモノは偽物が多いということは書いておく。と書いて、やっぱり自分のブログだし、便利なのでリンク(個人サイト)だけは貼っておくことにする。オタクってすばらしい。どの分野でも文化をつくっているのはいつもオタクだ。ロレックスアンカー。sub anchor

冊子は有名なこれ。入手するには軽く5~6万はする。クロノメータータグ(赤タグ)は、ホログラムでないもの。それと緑タグは稀にSUBMARINER表記有りのものがあり、表記無しも含めて王冠マークが飛び出たもの。箱は数種あって、内箱底のナンバーは、「10:00.1」、「67.00.3」あたり。時計の枕は画像のような下敷き。紙箱は古いのはベージュに緑ストライプ、後期は例のタツノオトシゴ。月の表面(ムーンクレーター)の箱は、赤サブに限っては後付けである。ギャラは前期はどれもそうだが、今我々が目にするものとはまったく違うが、途中からは例のパンチングギャラ(海外物)。ちなみにパンチングギャラはシリアルがパンチされていない手書きの物も多く、いかにも怪しい。後はパスケースやカレンダーが付いていたりいなかったり。以下、まとめて写真を載せておく。
EARLYSUBBOOK.jpg
ebay 1680 tag
forum1680 box papers


【補足】
こんなところで赤サブについての考察は終わり。何度も書くが、ブレスは93150が付いていたら交換されている(後期の白サブは別)。正しくは9315の巻きブレスである。あまりにも多くの交換されているものが、何の但し書もなく売られているので、くどいが書いておく。前にも書いたが、それが悪いということでは決してなく、もし買うなら知った上で買ったほうが良いだろうということ。カレンダーディスクもそう。真っ白なものは交換されたディスクであり、これは白がすごく目立って個人的には好きではない。ベゼルの細字も同様。最後に赤サブの今の相場的は100~130万円ぐらいで、ギャラや正規の箱付きはほとんど出て来ない。赤サブは白サブより30~40万は高いが、シードの赤と白の格差はもっと激しく、赤ラインの有る無しで100万は違う。ラグはさすがに磨きこまれている個体も多いが、これはさすがに40年近く前のヴィンテージ物では仕方ないかと。ただ針だけ交換されて白く、文字盤のインデックスが黄色いままという何ともバランスの悪い個体が多い。日ロレではまだOHは受け付けているはずだが、出すとかなりの確率で針はルミノバに交換になり、文字盤を交換すると白サブになって戻ってくるという非情なことが待ち受ける。4桁ヴィンテージはそろそろ曲がり角であろうと思い、それでも行くなら個人的にはノンデイト5513の方かなと、身も蓋もないことを書いて終わる。

サブマリーナ 5512/5513/1680

以前に書いた初心者のためのデイトナ記事の続編。今日は古いサブマリーナについて、前回同様ヴィンテージ物初心者である自分自身への記事である。

調べ始めてからというものの、あまりの仕様の多さと、逆に情報の少なさに辟易した。確かそうな情報は海外サイトが圧倒的で、この年になると英語を訳して理解するのは面倒なことこの上なく。それでも日々少しずつ情報を蓄積し、とりあえず理解できたことだけでもアップすることにした。5512/5512/1680以前のもっと古いサブについては調べていないので、今回はこの3種についてとなる。

その前に、このリサーチは基本的には年代ごとのサブのオリジナルの形を追求することをベースにしていることを書いておく。つまり色々とカスタマイズされたり、ブレスが変えられたりしている、世界のひとつしかないヴィンテージ物の紹介ではなく、発売当初のサブの追求であり、そのベースのさらにベースには、古い時計に向かうのなら、(多くの人と同様)オリジナルの形に拘る私自身のマインドがあることを書いておかなくてはならない。そのマインドについては、自分なりには掘り下げてあるのだが、今日は割愛する。

◎発売時期について
5512は1959年から1977年頃
5513は1962年から1989年頃 
1680は1965年から1980年頃 
*それぞれに諸説あり。

本文の前に基本中の基本から。5512はクロノメーター規格。5513はノンクロノ廉価モデルの位置づけ。ただし発売当初5512はノンクロノ(ややこしい)で、5513の登場で公認となった。ゆえにノンクロノ表記の5512は大変珍しく希少なモデルである。1965年頃にデイト表示の1680が登場、こちらもクロノメーター規格。この5512/5512/1680が黄金のサブ4桁時代を代表する三役。

5512-2.jpg
5513と違ってクロノ表記がある5512メーターファースト

まず、私が調べたのは各モデルのフラッシュフィット(&ブレス)。我ながら変なところから入ったものだが、それはサブの歴史が古いがゆえに、ショップや所有者のサイトを見ていると、あまりにも後年にブレスが付け替えられている個体が多く、そのブレスやフラッシュフィットも多種多用で混乱してしまったため、入り口としてそこから入ったのである。

まず初期(1959~)のサブ5512/5513のブレスはリベット7206が基本。リベットブレスというのは鋲を打ったような形のバンドで、ヴィンテージロレックスではたいへん貴重なもの。フラッシュフィット(以後FF)は58。1960年代の半ばから巻きブレス9315へと変わり、FFは280と380。この組み合わせは1980年の直前、おそらく1979年頃まで。ただしFFに多くの例外なのか、付け替えなのかがあり、そのあたりの整合性についてはよくわからない。ただし、この時代のサブでシングルバックルの7836(FF258)あたりが付いていると、間違いなく所有者による後年の付け替えである。9315はバックル部がダブルフリップロック仕様なので、一見してわかる。リベット、巻ブレス両方とも(私は手に取ってみたが)駒調整は簡単ではない。

1979年頃に93150のハードブレス(無垢ブレス)へ。このFFはたくさんあり過ぎて、そのどれもが正しいのか、どれかが後乗せなのかはよくわからない。よく見るのがFF501,580,593あたり。当たり前の話だが製造と販売には若干のズレがあることは何も珍しいことではなく、例えばギャラが1981年となっていても旧9315ブレスを装着した個体も散見される。

よく目にする溝無し・溝有りは、93150のフリップロックのかぶせる部分に溝があるかないか、当時モノはすべて溝無しなので、溝有りだと1980年代後半以降に付け替えられており評価が下がるというわけ。

まとめると、1960年代の半ばまで、5512と5513はリベットブレス7206&FF58、以降は1680も含めて巻きブレス9315(溝無し)&FF280/380が基本。1979年頃を境にハードブレス93150(溝無し)&FF501/580あたりへと変更。

リベットブレス9315巻きブレス
上がリベットブレス、下が巻きブレス(9315)の溝無し。


次に文字盤に行く前に、サブ文字盤下部の基本をおさらいしておく。まずメーターファースト表記について。これは単に文字盤下部の表記が200m/660Ftとなっているもの。だいたい1967年頃まで。境目は微妙ゆえ、ある時期までは並行していたかもしれないが、以降は逆にフィートファーストへ(660Ft/200m)。前者が稀少。1979年頃にそれまではメーター表記の下にあったSUBMARINER表記(下サブ)が上に移動。

では、長い歴史を刻んだサブマリーナの数ある文字盤の説明へといきたい。自分で言うのも何だが、この作業は大変だった。とても苦労をした。今回の更新でこれだけの間が空いたのは、それだけ苦労したからだということ。で、その結果として…、ギブアップした(笑)。この根性無しめ!泥の深みに胸どころか、アゴまで浸かった気分。5513ノンデイトの文字盤の違いは、何種類も確認はした。だが、その細かい違いと発売時期やシリアルと紐づけることが出来ておらず、またそれらを大系的にまとめているサイトがない(あるいは見つけられていない)ため、さすがにここで書き切る自信はない。これは今後の課題ということで。というか、文字盤の細かい違いとか、それほど興味があるわけでもない。

代わりに、生産期間は短かった赤サブについては、詳しいサイトが海外にいくつかあり、今日はそれでお茶を濁しておきたい。海外サイトの写真をそのまま借りるので、読む人はじっくりと。どうでもいいという人はすっ飛ばしで。だが、この写真は示唆に富んでおりとても勉強になった。ここからでも、ある程度は見極めが可能。上からmark 1, mark 2…の順でmark 6まで。1~3はメーターファースト、さらに3はブラウンダイヤル。1と2と4は白い文字の上に赤が塗られており、他は直接プリントされていることがわかる(1はよ~く見ないとわからないが)。白い文字が“チラ見え”する1と2と4はパンチラダイヤル(苦笑)と呼ばれるらしいが、どこのどいつであろうか?こんなふざけたネーミングをしたのは。中々おもしろいではないか。嫌いではない。いやパンチラではなくユーモアは。660Ft の6、mark2,3,4 はopen6 と呼ばれる。他にもmark6 のSだけ他と違って丸いこと、mark4,5,6 のFt のF の先が、上のM に届いている位置の違い、文字の太さなど、それぞれ微妙に違うことが見てとれる。

mk1.jpg

もう一度繰り返すが、3までがメーターファーストであることで、この種別は時期でくぎることが出来る。1~3は1967年ぐらい(断定はできず)までの1680に限定されたものである。もしもシリアルが70年代中盤で、この赤文字盤だったらアウト、文字盤そのものが替えられている可能性大である。また1680は1970年頃からハック機能が付いているが、ハック機能が付いているのに、メーターファーストだったら、時期が合わずやっぱりアウトと思われ、この辺りは割と見極めやすいかと。もちろん例外はあるのかもしれない。私の記述は書籍とネットの知識からでしかないので。それと、この写真を掲載しているサイトはとてもポピュラーなのだが、個人的にちょっと??なところもあり、もしかしたら次回そのことについて書くかもしれない。参照に便利かもしれないのでシリアルを記載しておく。

5,958,000 1979
5,482,000 1978
5,006,000 1977
4,539,000 1976
4,267,100 1975
4,004,200 1974
3,741,300 1973
3,478,400 1972
3,215,500 1971
2,952,600 1970
2,689,700 1969
2,426,800 1968
2,163,900 1967
1,871,000 1966
1,792,000 1965
1,714,000 1964
1,636,000 1963
1,558,000 1962
1,480,000 1961
1,402,000 1960
1,100,000 1959


文字盤上部の表記も。先ほどと同様、上からmark1,2,3,4,5,6 の順。上3つはメーターファースト。確かにすべて微細に違うが、大きく何かが違うということはない。

サブ文字盤上部1~6


過去のGMTマスターⅡやデイトナの記事に書いたように、おそらくは製造工場によってレタリングが違うようで、ロレックス社はこういう細かい違いは気にしていないのだろう。それと、ロレックス社はある時期まで交換用文字盤というものを用意しており、何年も前に廃版となった、例えばメーターファースト表記のサブを持ち込むと、同じ表記のトリチウム文字盤に交換してくれたのである。それがトリチウム→トリチウムの交換だけに、見極めることはとても難しい。メーターファーストの個体を見つけ、おお!60年代初期のサブだと思っても、70年代に交換されている可能性があるということ(ややこしい)。

5512/5512は1967年頃ミラーからマットダイヤルへ(1680は最初からマット)。1967年頃にメーターファーストからフィートファーストへ変更(何度も書くが諸説有り)。1970年代後半にSUBMARINERの位置がメーター表記の上に移動。1985年頃(これも諸説あり)、インデックスがメタルの縁有りに。このあたりの基本を押さえただけでも私としては進歩、ネット上でアバウトなパチものなら見つけることができた。メーターファーストなのに、SUB表記が上にあるものとか。

5513フチ無し後期5513フチ有り
共にフィートファーストで、SUBMARINER表記が660Ft/200m の上に記載の後期型(左はフチ無し、右はフチ有り)


次に、文字盤の補足として、ミラー文字盤やマキシダイヤルなど、いくつか押さえておきたいことをさらっと。まずは最初期のミニッツサークル&ミラーダイヤル(通称5512MM等)。コレクター垂涎モデル。たいへん美しい文字盤。さらにゴールドレター。ミニッツサークルとは、まず分刻み表示があり、さらに外周があること。はいそれだけ(苦笑)。1965年頃ミラーダイヤルのみに移行。諸説あるがミラーダイヤルの生産は1967年までと思われる。そして1680にミラーダイヤルは存在しない。それと、美しいミラーダイヤルはやはり手が入っているのではないかと私は思っている。これはインデックスとかも同様。それを善しとするかどうかは、その人次第。私は塗り直しについては受け入れる方である。

ミラー2美しい。


マキシダイヤル。これは文字盤のドットが大きく表示されたもので、1970年代後半に見られるもの。左がそれ。比較用に初期ダイヤルを右に載せておく。この程度の違いである。1960年代製または1970年前半のシリアルの個体なのに、このダイヤルが装備されていると、文字盤が交換されている可能性は高い。というかほぼ確定ではないかと思われる。マキシダイヤルにもいくつかパターンがある。

マキシダイヤル通常(ギルト


ロリポップ。サブ後期の特徴であるマキシダイヤルの中でも、特にインデックスと分の刻みがくっついているモデルを言う。形がペロペロキャンディに似ているからである。誰がつけたのだろう。こういうユーモアあふれるネーミングはいいなあとつくづく思う。

ロリポップ


次はベゼル
何種類もあるが、比較的極端に太い&細いの実例を挙げておくにとどめる。初期物は数字が太字で何パターンもある。目利きはこのベゼルと文字盤の組み合わせで、ある程度のことはわかるらしい。

sub fat font5513 thin - 2


キャリバーについて。サブマリーナはその黄金期を支えたひじょうに優秀なムーブメント1500系を採用。5512は最初期はcal.1530。1965年からcal.1570、ほんの数年間1560もあり。5513は生産開始から1964年まではcal.1530、以降終了まで、ずっとcal.1520を搭載。1680はcal.1570、便宜上cal.1575と呼称されているが、実際は1570。1520と1570は今でも日ロレでOH可能。他は不明。ただし、かなりの確率で針や、場合によっては文字盤やケースをも交換されてしまう。竜頭や風防は消耗品だから仕方ないにしても、VRで針も文字盤も代えられることに抵抗を持つ人は多い。

リューズとリューズガード。
今でこそ当たり前となったトリプロック方式だが、初期サブはツインロック。これは竜頭を開放するとガスケットがない。また竜頭の王冠マークに3つのドットがない。1965年?以降はトリプロック方式&ドット有り竜頭(ここは不確か)。ここから推測すると、最初期ミラー文字盤でドット付き竜頭だと交換品ということがわかる。もちろん竜頭ぐらい交換すべきものだということはわかって書いている。1965年登場の1680はトリプロック方式を採用。次にリューズガード。初期はPCG。ポインテッド・クラウン・ガード、いわゆる“とんがりリュウズガード”、又は“ヒラメ”とも呼ばれる。最初期のみなので省略。

PCG.jpg5513ドット無し竜頭
上の写真がPCG、下はドット無し竜頭

風防。当たり前だが1680はサイクロップレンズ付きなのでドーム型ではなく煙突型。5512/5513はドーム型風防。後年日ロレによる交換用では形状が違う。これは現在のサファイアクリスタルと違って完全に消耗品であり、多くのユーザーが社外品を愛用し、自分で付け替えを行っている。従って、ヴィンテージサブの場合、風防にまでオリジナルを求めるのは間違いだと私は思う(竜頭も)。社外品でも何でもがんがんつければいい。5512/5513ノンデイトのドーム型風防の格好よさは絶品。ヴィンテージ物はこれに尽きるのではないかとすら思える。

ドーム
1680 煙突2
上がドーム風防、下が煙突型風防。

裏蓋が共用なのは有名。5512の裏蓋を開けたら5513でびっくり!となる必要はない。必要はないが、ロレックスという会社はこういうところは実に適当である。

1680のカレンダーディスク。オリジナルはシルバーというかグレーというか。ただ、実物をいくつも見ていく中で、細かい違いを発見したが、まあ細かいので省略。とにかく基本はグレーというかシルバー。後年は白。疲れて来て、かなり投げやりである。ああ、5512/5512と1680は別々に書くべきだったと今は思うが、ここまで来て今さら書き直すのはさすがに「うへぇ~」、である。よってこのまま続ける。

カレンダーディスク


ここらで休憩。基本的な外観についてはこの辺りにしておきたい。面倒ではあるが、こうやって書くことで、自分が得た知識が身になっていくので無駄ではない。ここまで書いたことで、売られている個体について、自分なりの眼力はそこそこ養えてきている。例えば、マキシダイヤルなのに、シリアルが1960年代だと、あれ?となるわけである。前述したように、マキシダイヤルの登場は1970年代後半なので。そうなると交換ダイヤルということがわかる。だがそういうことが記載されていないことが多い。もちろん、そんな細かいことを知らずに買ったって何もおかしくはないし悪いことでもないが、私は知っておきたいというだけのこと。買ってから疑心暗義になるのは嫌だなと。そういう細かい性格でもあるので。そうそう、細かい性格ではない人はVRになど行かないと思う(独断と偏見)。

まだまだ閑話休題。海外のサイトを見ていると、VRはもう徹底的に使い込まれて経年劣化したオリジナルにこそ価値を置いており、ベゼルなど剥げ剥げ、ハンズは錆びだらけである。一方日本人はオリジナルにこだわりながらもキレイな個体を求める傾向が強いように思える。かく言う私も(一本も持っていないが)そうである。だが、40年も50年も昔の時計がキレイなほうがおかしいのであって、そうなると実はリフィニッシュされていることが実は多いのではないか。某専門店で見た70年代のVRなど、近年の5桁と変わらない美しい外観だったが、明らかにどこか歪(いびつ)というか、まるで整形した演歌歌手のごとくである。もちろん中には経年劣化したオリジナルに価値を見い出し、ブログにアップしている日本人コレクターもいるが、そういう人こそ本当のヴィンテージマニアだなあと思うが、どうやら私はオリジナルに魅かれながらもキレイな個体を好む中途半端野郎のようである、今のところ残念ながら。私はすでに50代に突入しており、これから先、20本30本のVRのbuy/sellを繰り返しながら、それを極めていくだけの時間も金もなく、どのように向き合っていくか、どこかで自分のスタンスを決めなければいけない。


赤サブについても書いておく。VR初心者が必ず通るといわれるモデル。大量のリダンや文字盤交換が存在し、多くの無知な初心者が騙される通過儀式とも。私の考えとしては、手を出さないほうが無難である。赤いだけでうん十万はあまりにも高いといえば高く、デイトナの200/225タキと似ている。私?私はデザイン的に黒ベースに赤の配色は好きではある。赤サブの製造年については諸説あり、ネットでも色々と書かれているが、一般的なのは1970年前後からのわずか数年というものや、もう少し幅広く67年から74年ぐらいまでという説。特に稀少といわれるメーターファースト(1967年頃まで)の赤サブの存在を思うと、1967年には作られていたことになる。逆に市場に大量に出回る赤サブの中には1978年製まである。この辺になるとさすがにかなりの賭けになりそうだが、現にこれを書いている2014年9月時点で、非常に有名なアンティーク時計店で、1978年製の赤サブが100万円超えで売られている。

ここで推論。まず1965年又は1967年に登場したとされるデイト付きサブマリーナ1680だが、1968年代の白表記を私は一本も見ていないのだ。実物で確認したのは、最も古いシリアルで29~あたりからだが、29だと1969年製造。それ以前の白サブをただの一本も見てはいない。一般的な定説では「1680の大部分は白文字であり、その長い生産期間の中の極わずかな時期に生産された赤サブは希少」と、こんなところだろうが、本当にそうだろうか?実は1680は赤サブ・オンリーで市場に登場した可能性があるのではないか。途中から白表記が混じり、徐々に赤表記が減っていったのではないかと。そう仮説を立てて調べてみると、同じことを言っている人もいれば、そうではないと主張する人もいる。だが、1967年製白表記1680などという個体は少なくとも見つからない。その仮説が正しければ、メーターファースト表記、ノンハックの60年代製の赤サブはかなりの確率で“ビンゴ!”であるが果たして…。ところが手元の洋書では1680の登場は何と1969年と記載されている。掲載写真は赤サブ、フィートファースト。意外とこれが正しいのかも。だが、だとしたら、よく売られている1967年製の赤サブは?う~む。これについては次回かどうかはわからないが、私なりの検証結果をもう一度記事にする予定。

とこんなことを書きつつ、実のところ私は、赤サブは後年に塗り替えられていてもよいではないかと思っている。前述したように、パンチラダイヤルなるものは、黒文字盤の上の白表記の上に赤が塗られているわけで、塗ったのがロレックスの社員や下請け会社の社員だろうと、どこかの怪しげなオヤジが70年代半ばという微妙な生産時期の1680の白い文字の上に乗せていようと、その時計が1680であれば、その本質は大して変わらない気がするのだ。白も赤も中身は一緒なので。もちろん社外品の文字盤と交換されていたら、それは論外ではあるが。

赤サブ
マーク何でしょう??答えは文末に。ヒントはFtのFの形、最も目にする表記。

ギャラについて。現行品以外の時計において、ギャラの持つ意味を私はいつか掘り下げて考えてみようと思っている。VRでギャラがあることは何のプラスをもたらすだろうかと。果たしてその時計の真贋を保証してくれるだろうかと問われれば、私はノーだと答える。いや真贋は保証してくれても、その時計が辿ってきた轍は何も証さない。極論を書けば、古い時計に関してはケースとギャラのシリアルの一致によって、ケースがロレックス製であることが保証されたに過ぎない。文字盤もハンズも風防もムーブも竜頭も、どれも出荷時の物であるということを保証できない。あったらうれしいが、それが付くことで50万円ほど高値が付くVRを見ていると、私はそこはさすがにすっ飛ばせるなと。だったら、その分、金はより良い個体のためにつぎ込みたいと思う。ギャラよりは個体、VRにおいては私はそちらの考えである。

今日はこんなところで。サブは深い。サブマリーナの歴史をもっと深く正しく知ろうと思うと、こんな程度では済まない。だが、この辺りで私はじゅうぶんである。この先は本物のヴィンテージ野郎が生きていく領域であり、おそらく足を踏み入れたが最後、多くの人が自分の理想とする個体を見つけるまで探し続けてしまうのだろう。それは現行品とはまったく違う世界であって、行き着くところは多分どこにもない(気がする)。永遠に彷徨い続けるしかないのかもしれない。私はひとつだけでいいので、気に入ったサブのヴィンテージ物を所有したいというささやかな願望は確かにある。ここでは書かないが、購入のためのかなり条件を細かく持ってしまったので、そういう個体に出会えるまでは手を出さないと決めており、しばらくはそれでいいと思っている。

最後に、ネットで販売されているVRを見て感じたことだが、多くのショップがとにかく説明を飛ばしている。真面目に書くと、商売にならないのだと思われる。つまりヴィンテージ物は、アラを探せばキリがなく、誠実になればなるほど売りづらいという現実があるのだろう。例えば、1970年の5513の説明にさらっとこんな風に書いてある。「~。ブレスはハードブレス93150のダブルフリップを装着しています」、これだと初心者はわからない。不親切と言えば不親切、誠実に書くとこうだ。「1970年製の5513は巻きブレス9315が標準装備ですが、こちらの個体は後年の93150ハードブレスに付け替えられています」、これなら初心者でもわかる。だが、この記述では少なくともブレスはオリジナルではないことを告白しているわけであり、ショップ側としてはあまり強調したくないとことは理解できる。だからこそ、顧客の側に知識は必要だ。感性も大事だが、無知は駄目だ。それは騙されないためではない。ブレスが新しいことを殊更否定するのではなく、多少の努力で知り得ることは知った上で、納得した上で購入したいだけである。多くの人もそうではないだろうか。

今よりもっと無知だった数ヶ月前、会社近くの有名店で、すごく程度の良い5513を発見、いいなあと思って眺めていたのだが、そのブレスはシングルバックルであった。帰宅して、そのショップのHPで再確認。私は長いサブマリーナーの歴史には、そういう個体もあるのだと思って、念のために調べてみると、そんな記録はどこにもない。ただ、他のいくつかのショップでも過去にそういう個体が売られていたことを知る。GMTやエクスプローラー用のブレスである78360に付け替えられていたのだ。どこのHPの説明にも、そのことについては触れられておらず、ああヴィンテージに行くなら勉強しないと駄目だと痛感したのだった。それが、この記事を書くきっかけ。ベテランの方は苦笑してこの記事を読んでいることだろう。とにかく、ショップが不親切だなどと、受け身のまま不満を抱くのではなく、自分がまず勉強すること、知識を得て、眼力を養っていくべきだと私は思う。買う、買わないはそれからのことだ。

最後最後と言いながらもう一言。多分だが、ヴィンテージやアンティークの世界は、ネットや店頭に出てきたのを追っているようでは話にならない(推測)。優秀な個体は前もって水面下で取引されている(推測)。表に出てきているのは…。それぐらいは私もビジネスの世界に身を置いているので感覚でとらえることはできる。極論を書けば、昨日も今日もネットであるいは店で売られているのは、目利きや上得意客が手を出さなかったブツだと私は考えている。部外者も簡単に参加できるスピード勝負の世界ではなく、人脈や人間関係の世界。大事なことは“信頼”。ショップを回る度にそんなことを思う。私は当然のこと部外者である。魑魅魍魎が跋扈する世界に知識も人脈もなく、ただ札束持って簡単に入っていけるわけがない。そんな思いがこの長い文章を書かせた。

前のデイトナの時と同様、今回もドが付く素人記事ゆえ、致命的な間違いもあろうと思うがご容赦のほどを。いや、今回はかなり間違いも多いのではないかと感じているし、年代も曖昧な書き方に終始してしまった。デイトナ記事は何度も検証し推敲もしたが、今回はちょっと仕事が立て込んでおり、そこまでの時間がない。公式にはわからないので、そこは何とも歯がゆいのだが、前回記事から更新も空いているのでアップすることに決めた。後々自分で知った、気付いた間違いは逐次修正していく予定である。長い駄文にお付き合いいただき感謝。次回「赤サブの謎」、その次は古いシード。えっ!まじ?

<答え:写真の赤サブはmark4。>

参考文献
web:Oyster Junky Web, DoubleRedSeaDweller.com, Oyster club, etc.
books:ロレックス大全、100 ANNI DI - YEARS OF ROLEX

時計ショップ巡り三昧の一日

今日は休み。前日は明け方まで仕事をしていたが、少しの仮眠で午前中から時計屋へ(ようやるわと自分で呆れ顔)。目的は古い時計をいくつかとチュードルのクロノタイムを見ること。前もそんな記事をアップしたが、要するに時計屋巡りが好きだということ。ただし今日も購入マインドはゼロである。

まずはチュードル79160ギャラ有りを在庫しているお店へ。前日に電話で確認したのだが、行ってみるとモノがない。「そりゃないよ、セニョリータ!」と嘆くなげく。ここは都内でも仕事場からは遠くて不便なところで、おまけに暑かったため、いきなり出だしからつまづく。中野へ向かうのにタクシーに乗ろうと思うも、ごちゃごちゃしていてメイン通りへの道がわからず、仕方なく私鉄に。車中さすがに眠い。

小一時間後中野着。こう書いては実も蓋もないが、中野の各ショップさんは特に変わり映えなし。ちょうど昼どきで、店は混んでいたが…。ジャックさんで79170カマボコをショウケース越しに斜めから。う~む、やはり分厚い。

アンティーク物はどこも針とインデックスの焼けが不均一なものが多く、塗り直しも含めて、これもまたやはりよくわからない世界だと改めて実感。店員さんも正直なところ判別は困難だと。前に書いた“知らぬが仏”の境地に入らないとストレスを溜めてしまうかもなあと考える。サブのノンデイトあたりがちょっと今後の候補だったりするのだが。1Fの大黒屋さんでもチュードルをしげしげと。

それから上野へ。アメ横は好きである。こういう活気のある商店街はとてもいい。サテンドール各店舗とクォークさんへ。そういえば、以前中野にあった旧グリーンサブのランダムを上野(の大黒屋)で発見。おお、こんなところに出ばっていたのか!と何だか懐かしさを覚える。サテンドールの違う店舗で旧エクワン114270ランダムをそれぞれ1本ずつ発見。ともに約70万円也。ついでに書くが114270はここ数ヶ月で急速に価格が上昇しているが、まさか本当にキムタクが原因なのだろうか。MやVあたりでも軽く40万円超えである。

御旅町方面でチュードルがたくさんある店を発見。たくさんあるではないかと、さっそく厚かましくもショウケースから79160と79260(カマボコではない)のシルバー文字盤のモデルを出して手に取らせてもらう。79160は何というかボッテリという感じ。デイトナのようなきらびやかさはなく、いい意味で武骨&野暮ったい感じ。自分向き(笑)。ただ、これ分厚過ぎだろうと、やはり思ってしまうのであった。ギャラ無し。79260はやや薄くケース側面は流線型。プリンスではなくオイスターデイト表記の3連ブレス。これは意外と貴重である。探してみると結構ないのだ。5連だったり、タイガー表記だったり。ギャラその他完備で約40万円也。でもピンと来ない。デイトナを持ってしまうと、チュードルのクロノタイムは要らないのかなあと。まあそう思うことも収穫といえば収穫。

そうそう備忘録として書いておかないと。某ショップさんに白サブ1680でちょっと魅かれるモデルがあった。ノンデイトのドーム風防の方が好きではあるが、あの煙突型もなかなかであるなと。ブレスもしっかりしていて、ルミナスもこんがり。ケースの痩せも感じない。これ全部オリジナルですかねえ?はい、そうです(と断定口調)。へえ何で?「・・・」と笑える会話もあったりして。困らせて申し訳なかった。アンティークは深いが、深いがゆえにこちらの懐も深くないと。まだまだだなと。それもまた今日の収穫ということで。

古いサブについて少し調べ始めているので、折りを見てまたアップしたいと思う。今日はこのあたりで。錦織の試合を見ながら書いていたが、見事に勝利。立派、本当に立派。素直に感動だった。

ノンポリッシュ1019

デイトナ記事の前につなぎを。

先日onomaxさんに出ていたミルガウス1019。あれはよかった。奇跡的な一品だったのではないかと。だいたい1019を狙っている人など、そう多くはないだろうから、大抵の人にとっては「ふ~ん」程度だったと思うが、1019に魅かれ、相当に調べつくした私にとっては、あれは超絶なまでの個体である。

1979年のアンティーク品で使用歴極少、磨き無し、100番スイスのギャラと陰気なブックレット付き。

もちろん280万円の時計を買うだけの財力は私にはないので悔しかったということはないが、もし資金を準備して探し回っていて、あれを発見し、HOLDであることを知ったのなら、相当に気落ちしただろうと思う。お店のブログを読むと、HPにアップした20分後にHOLDとのこと。無理だなあ。PCに貼りついてでもいない限りは無理だ。

ちょっとここで1019の200万円を軽く凌駕する相場について書いておく。私はこの時計が好きだが、かといって200万円を超えるような価値は見い出してはいない。価格のことは関係なく、私はこのモデルのデザインに魅かれているだけで、私の相場と世間の相場に最も乖離があるモデルのひとつ。なので、私がこの時計を手に入れることはたぶんないと思っているし、決して強がりではなく、資金があっても私は買わなかったはず。ギャラも付属品も満足になく、バリバリに磨かれた本体オンリーでも250万円が平均の世間の相場というものから計るとこの280万円は安かったという意味。補足までに記しておく。

何か月か前に、ある個体(1019)を店舗で手に取らせてもらったことがある。そのときにちょっとアレ?と思った感覚があって、上手く言えないのだが、たぶん相当な研磨痩せを感じ取ったのだと思う。その後で、結果的に即売れした未研磨の1019を銀座のクォークさんで拝見する機会に恵まれ、そのぶっくり太ったケースに驚き、逆に研磨というもののすさまじさを思い知ったのだった。

実は私は今は以前ほど未研磨にはこだわってはいない。ある程度は許容していかないとと思っている。だが、所詮研磨とは、付いた傷と同じ深さだけケースを削って傷をわからなくしてしまうものであり、古い時計で3度4度と繰り返していけば、当然感覚的にわかってしまうほどに痩せてしまうもの。いくつかのアンティークウォッチを手に取った際のあの違和感は覚えこんでおきたい。

今回のは前所有者がデッドで購入してほぼ使わなかったとのこと。35年前の貴重な、そのまんまのmilgauss1019であり、購入した方にはおめでとうと、会ったことはないが、1019好きの端くれとして申し述べたい。売れる前に一度現物を拝見しておきたかったとは思うが、、もし何かの間違いで私が買ったなら、果たしてこのmint品を普段使い出来たかどうかは大いに疑問である。いや無理だろう。はっきり無理だろうなと思う。

たぶん永遠に所有することのない時計。でもそういうのも悪くない。手の届かない時計への思いが自分の胸の中にずっとあるというのもいいことだ。

ロレックス大全

ゴールデンウィーク後半は少々体調を崩していて、ほとんど家にいたのだが、その間に読んだのが表題の本。岡田修一郎さんという方が書いた「ロレックス社非公認 ロレックス大全」。この本の評判の良さはしばしばネットで目にしていたのだが、残念ながら今は絶版、仕方なくamazonのマーケットプレイスで注文した。定価の3倍以上の価格だが、それ以上の価値が、少なくとも私にはあった。

基本的には4桁モデルの解説なのだが、中味はサイコーである。サイコー。話し言葉で書かれているために、まるで横で解説してもらっているみたいに読める。「困ったね」が随所に出てくるところが可笑しい。

この本で4桁の真贋がわかるわけではない。ただ、私の少し暗いかった部屋の窓がひとつ開いて明るくなった気がする。要するにわからないのだということがわかったというか、いや、この人ぐらいになると高いレベルでの判定は可能なのだろうが、それでも最後の最後はわからないから、「困ったね」が出てくる。フフフフフと楽しく、発熱しているのも忘れて読みふけった。

特にDAYTONA表記なしの文字盤が、後に大量の偽ポールニューマンの書き換えの餌食になった話はなるほど~と。赤シードや赤サブも同様。そのページに、その後に書いてあることはこれからも胸に刻んでおきたい内容であった。そういうのをひっくるめた世界なのだなと。

圧倒的にページが割かれているのは、やはりサブマリーナ。それにしても古いサブは何でこんなに格好いいのだろう。そして何十年という歳月をともに過ごしたこんな時計を所有するということはどんなに幸せなことだろうとも思う。そのことと、高騰したこれらを今買うことはまた違うこと。少なくとも私は乗り遅れたと自覚している。

中古本とはいえ、さすがに人様の著作を無断で転載はしたくないので、ここまでにしておく。

この本は4桁に留まらず、ロレ好きは一度は読んで損はない。決して短くはないロレックスが歩んだ軌跡を垣間見ることができるし、当時の貴重な広告や箱、ブレスの記述も読める。そして何よりも読んでいて楽しい。それはきっとこの著者が真に時計を好きだからではないかなと。それが伝わってくる良書。返す返すも絶版が残念である。


ロレックス大全

知らぬが仏

ここのところ、相変わらず時間を見てショップを巡っているのは、古いロレックスを見るのが楽しくて仕方がないからで、どうにも私はアンティークに魅かれているようである。ただし、不思議なことに買いたいとはまったく思わず、ネットでロレックスの歴史を調べ、たまに店で眺める。購入意思がないため、最近は申し訳なくて手に取らせてもらうことはせず、単にショウケース越しに眺めるだけ。時計そのものより、古い時計の世界観が好きなようである。一本も持っていないので、自慢になどならないが5桁までのデイトナについては結構詳しくなった。特にエルプリの文字盤やベゼルの無数の組み合わせは、世界中のHPに掲載されている様々なパターンをデータ化している(笑)。どの年代にどういう冊子やタグが付くかまで。

エルプリの逆6にはいつも笑ってしまう。何だろう、これ(笑)。ある時期にこそっと正6に戻したあたり、意図的ではなくミスプリントだろうという気がして、密かに私はこれをエルミスプリと呼んでいる。だが、他のインダイヤルはセンターから見た向きで数字を記載しているので、逆6こそが正しかったのではないの?と突っ込みたくもなる。ロレックスの歴史をたどると、実はいい加減というか、そう思わざるを得ないことがたくさん出てくるが、その曖昧さもまたロレックスの魅力でもある。

今日の記事はケースのシリアル番号と販売時期のずれについて。

地味なテーマである。シリアル番号がその時計のある程度の製造年を示すものだというのは誰もが知っていることであるが、古いロレックスを見ていくと、どうにもおかしな個体に出くわすのである。先代のミルガウス1019の実物をある店舗で見せてもらった際に、シリアルは1980年を示す6で始まるのに、ギャラの日付が1988年の個体に出会ったのがきっかけ。実はミルガウス1019を海外のショップも含めてリサーチしていると、6から始まるシリアルが非常に多く、やはりギャラの日付が後年であるパターンが多いのである。

普通に考えられるのは1980年に作られた個体が売れ残って、ようやく8年後に販売されたという推測。店員さんもきっとそうだと。これは基本的にはシリアルは製造年を示すものとしてある程度は機能しているという見方。

一方で、ケースの製造と実際の製造にずれがあるのではないかという推測も成り立つのではないか。つまり1019のケースを大量生産したものの、各国からのオーダーが少ないため、何年かかけてそのケースを使いまわしたか。これはケースに刻印されたシリアルはあくまでケースの製造年であり、実際の製造(組立)は別であるという見方。

実際のところはわからないが、シリアルの数字順に製造されているのなら、Z番でなぜ若い番号にルーレット刻印があり、後半でなしがあるのか。いくつかのパーツを製造している供給元からの異なった形状やプリントの文字盤を組み合わせて作っているというのが私の推測で、デイトナの16520の200タキや225タキ、そして段落ちや4列表記のことを調べているときにも、そのことを思い出したのである。1987年頃にR番として登場した最初期のエルプリ・デイトナは一般的にmk1ダイヤル(段落ち&逆6)に200タキから始まったはず。(通常400タキもある)。次のL番だと、mk2(4列&逆6)に225タキやmk3(通常5列&逆6)に225タキや通常400タキなどが混在する。いや正確に言うと、それらのほとんど(すべてではない)の組み合わせが散見される。

このいい加減さというか、法則の無さはどういうことかと考えるわけで、これは先ほどの考察の後者が正しいのではないかと。つまりベゼル、ケース、ムーブメント等は別個に生産され、その組み合わせによって何パターンもの初期16520が存在するということ。言い切ってしまえば、我々日本人にはそういう正確さを求める部分が濃厚でも、欧米人はそういう細かいことは気にせず、いい意味で適当なのではないかと思うし、そこに過去のロレックスの洒落っ気というか、おおらかさを感じるのである。

ただ、そのあいまいさゆえ、アンティーク市場においては、ガッチャや模造が絶妙にからまってきて、魑魅魍魎が跋扈する世界にもなっていることも事実。これらパーツの違いが大量のパチがはびこる要因のひとつともなっているのだから、ロレックス社も頭が痛かったことだろう。

リダンも同様。足を踏み入れていないだけに気楽なものだが、何百万出してオリジナルと思いきや、実はガッチャだったとなると泣くに泣けないが、今は真贋を測るすべがあまりないことがむしろ幸いとなっている側面もあるのだろう。あるアンティーク店の人が他の客に「市中に出回っている手巻きデイトナでオリジナルなどほとんどないですよ。まあ知らぬが仏ってやつですわ。グワッハッハッハ」と豪快に笑っており、その言い草に光の加減でショウケースに映る私の顔もまた思わず笑っていた。フフフ、知らぬが仏か。深いなと。深すぎるなと。常々思っていることだが、時計との関係は女性との関係と似ている…、いやいやこれ以上は書かない。ただ、知らぬが仏の境地は何事にも大事ですぞ、グワッハッハッハと、いろいろと経験した50オヤジの私は言っておく。知らぬが、ホ・ト・ケ。大事、大事。

サブやシードの赤表記、縁のあるなし、怪しげなダブルネーム、フォント(書体)の違いなど、アンティークロレックスは本当におもしろい。今あるやつを全部手放して、ガッチャのポール・ニューマンでも入手して、「うむ、知らぬが仏である」という境地でいられれば、私も大したやつだと自分をほめるだろう。もっと突き抜ければ、時計など所詮取るに足らない自己満足の世界でしかなく、ロレックスのオリジナルだろうと、どこかの職人が作り上げたまがい物だろうと、どちらも大した違いはないなどと思えればもう怖いものはない。

何百万円を出してアンティークを入手、10年後に売却する際に、社外品を使われたまがい物だと告げられたら、私は腹を立てるか、あるいはショックを受けるだろうが、そういうのは嫌だなと思う。へえ、そうだったんだと思えるようでなければという意味。まあよほどの大人(たいじん)か阿呆か。その紙一重の域に達しなければ、もう自分のブツはオリジナルだと無理やりでも思い込むしかなく、そのスタンスは少々息苦しい。これは、パチモンでもいいではないかと言っているのではない。だが、本当にオリジナルのロレックスであることを証明することが困難な以上、最後の最後は“知らぬが仏”の心境も大事だという私の勝手な結論。

時計というものは、いやロレックスというブランドは、つくづく人の心を写す鏡であるなあと思う。欲望の深さ、浅さ、執着、やっかみ、見栄、自尊心…、普段は蓋をしているそういうものが噴出する。そういう意味では、ロレックスという時計もやっかいであるが、真にやっかいなのは正に人の心であろうかとも思う。

「ケースのシリアルと製造年のずれ」というテーマから横道に大きく逸れてしまったが、この原稿を下書きに入れてしまうと、またいつ日の目を見るかわからないので今日はこのままアップ。皆さん、よいGWを!

ミルガウス1019について

今日はアンティーク・ロレックスに分類されるミルガウス1019のことを。

繰り言になるが、私は経年劣化して異常にヘタった時計が苦手なだけであって、アンティークロレックスが嫌いなのではない。私は便宜上その概念を使うことはあってもカテゴリーはどうでもよく、ミルガウス1019のデザインが好きであり、この時計が2014年の今はもうディスコンモデルとして何処にも売ってはおらず、アンティーク時計としてに分類されているだけのこと。従って、もしもオールニューが可能なら、私はこの時計を求めたかもしれないが、ご存じの通り1019は日ロレでのメンテナンス期間は終了しているため、それは叶わぬ夢である。アンティークロレックス1019は私にとってそういう時計である。そのことは(私にとって)大事なことなので、改めてここに書いておきたい。

Rolex-Milgauss-1019.jpg

このデザインはまったく古さを感じさせない。シンプルでいて、赤のMILGAUSSの文字と秒針の先が全体のデザインを引き立てていて、ひじょうにシックで美しい。これが2014年の今、もしミント品として手に入るなら何とすばらしいことだろう。

ここでミルガウスについて書く前に、少し寄り道をする。個人的に思うロレックスの歴史をちょっとだけ。私はロレックスというメーカーには非常に優れた3つの面があるように思える。①高い技術開発力、②卓越したイメージ戦略、③優れたデザイン。その3つについて簡単に書いておきたい。

最初にロレックスの技術開発について。ロレックスは他との技術的な差別化、あるいは優位性を高めるために、時計の持つ可能性を最大限に追求してきたメーカーであり、それは深海の水圧、気温変動や衝撃への耐性、利便性、正確さなど多岐に渡り、それぞれをシードやサブ、エクスプローラー、GMTマスター、デイトナなどのスポーツモデルそれぞれの開発のテーマとしてきたわけである。まあ私が改めて書くことでもない。

スポロレには一般人には不要な機能がとても多い。人が数千メートルの深海に潜ることはない(死んでしまう)し、例え浅瀬であっても、そこで日付は見ないだろうなどと私は常々思うが、それはユーザー目線で論じればそうであるだけで、ロレックスには深海でもきちんと日付が変わることのできる時計を開発する必要がメーカーとしてあったということだ。ありとあらゆるハードな局面においても、ゆるぎない精度と頑丈性を実現することがロレックスの開発の歴史だった。何種かのスポーツ系ロレックスにそれぞれ違った方向性のテーマを与え、それを高めていく過程がすなわちロレックスのこれまでの歴史であり、それをほぼ極めた今の同社は雲上に舵を切ったというのが私の持論である。これが第一の技術面。

次に各モデルのイメージ戦略。潜水士、冒険家、飛行士、レーサー。これらはどれもが男が憧れる何かを体現化している。憧れながらも、それらに“成る”ことや、それらで“在る”ことの難しい職業ばかりである。それらはみな未知の領域を行く勇敢な者たちであり、時計技術の向上を、これらの憧憬イメージと重ね合わせることで、ロレックスは世界中の男たちのハートをつかんだわけで、その技術開発力、そしてそれに伴うイメージ戦略との見事なまでのマッチングにおいて、ロレックスは他の追随をまったく許していない。このイメージ戦略は他のどのブランドであろうともまったく相手になっておらず、これまではロレックスの完勝であったと私は思う。

そして3つ目。ロレックスが他のライバル企業やどんな雲上ブランドにも負けなかったのがデザインの良さ。もちろんデザインへの感性は人それぞれであり異論はあろうが、サブマリーナ、シード、エクスプローラー、GMTなどのスポロレは言うに及ばず、デイトジャストなどのドレス系も含め、ロレックスのすべてのシリーズにおけるデザインはいつの時代であろうとも秀逸であると私は思う。

技術開発力、マーケティング戦略、デザイン。この3点すべてが突出しているというより、それらの総合力の高さこそがロレックスの強みではなかったかと。


さて、ここでようやくミルガウスについて。気温や気圧(水圧)の変動や衝撃と同様に、時計にとって大敵なのが磁力。これへの耐性に挑ませたのがミルガウスというシリーズである。ちなみにミルガウス(仏語)とは1000ガウスの意味で、1000ガウスもの磁力に耐えうる時計として先々代6541は1953年(異説あり)に、次世代1019は1966年に発売された。

防磁をテーマに開発されたこのモデルの歴史をひも解いていくと、これほどロレックスの戦略が駄目駄目だった例も珍しく思える。ここまでの文章はそのことに言及したくての前段であった。他のスポロレの戦略イメージはみなさんご存じの5桁までの冊子がそれを表している。

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面倒なのでいちいち掲載しないが、GMTはパイロット、デイトナはレーシングカー、ヨットマスターはヨットレースと、非常にわかりやすい写真で、それぞれのコンセプトを表している。今はただのグリーンの冊子になってしまって少々味気ないが、過去のイメージ戦略はもうその役割を終えたということだろう。


では先代までのミルガウスの冊子の表紙はどのようなものであったか。あまり目にする機会がないと思うし、私もこれまでは知らなかったが下記がそれである。

milgauss 1019 booklet t2

いわゆるレントゲン技師や技術者である。地味で暗い。何もかき立てられるもののない、何と言うか人を黙らせてしまう、陰鬱と言ってもよい暗さが漂う。だいたい向こうからやってくるぼけてぶれている心霊写真のような男性に何か意味があるのだろうか。防磁というのもロレックスにとっては克服したい大事なテーマだったのはわかるし、20世紀の発展は世界中の科学者たちが支えてきたと言っても過言ではないが、このイメージから男の空想的ロマンを見い出すことはたいへん困難である。いくら何でもこの絵図はないだろうと。ちなみにこの写真は素粒子物理学研究所であるジュネーブの欧州合同原子核研究機構。

もちろんそれだけが理由ではないだろうが、このイメージに縛られていた現役時代には徹底的に不人気であったミルガウスが、ディスコンとなってその暗いイメージから解き放たれた途端に、一気にプレミア化したのは事実である。そして不人気ゆえ生産数が極めて少なかったことが、異常なまでの価格高騰につながり、バブル期には先々代の6541は1,500万円、先代の1019も500万円近い価格になった。ちなみにこの冊子も高い。海外では4~5万円で取引されている。たかだか冊子の価格で国産のクォーツが買えてしまう。

下記が最初のミルガウス6541。これはまずお目にかかることの出来ない激レアモデルで、個人的にはまったく欲しいとは思わないデザインだが、50年代のロレックスのイメージをよく伝えている。先ほど書いたように、とにかく生産数は極少。写真は海外から借りた。

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現行モデルでお馴染みの稲妻針である。今このモデルを入手するのは極めて困難で、先日も珍しくヤフオクで出品されたら一気に700万円まで上がった(結局出品者により取り消された)。個人的には特に魅かれるところはない。現行のミルガウスはこの先々代6541の稲妻針を復活させたのだが、ロレックスという会社にはちょっと安易なところがあり、中古で稀少性が出て高騰するとすぐに現行に取り入れるところがあり、この稲妻針やエクワンのブラックアウトも同じかと。

実は6541にはまったく違うデザインがいくつかあり、稲妻針のないものもあってそれがこれ。

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1966年に次世代モデル1019が登場する。1966年から1989年までの長きに渡って現役だったわりに前モデル同様不人気で生産数が極少数だったため、このモデルもディスコン以降超絶なお値段になってしまったのである。

rolex-milgauss black


このデザインは秀逸である。非常に端正でロレックスのドレス系に近いイメージ。3針デイト表示無し。稲妻針はないが、秒針の先端と文字盤のMILGAUSS表記の赤、これが無条件に恰好いい。ケース径約37mm。ブレスは7836(0)。キャリバーは1580。ドーム型風防。裏蓋の中に防磁用の金属蓋が埋め込まれ、それを支える十字プレートが特長。

金属プレート

90年代には程度のいい中古やデッドストックが500万越えで取引されたというから、30万円ぐらいで入手した人はさぞウハウハだったことだろうし、逆にそれまでの状況を鑑みて発売直後の現行を高値でつかんだ人はギャフン(古い!)だったに違いない。

前期モデルはハック機能なしで、文字盤はシルバーの縦ライン。人気の黒は後から出てきたようである。さらに初期の一部には秒表示が0.2秒ごと、つまり10秒に50の刻みがあるレイルダイヤルというのが存在する。

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最終シリアルはRだから1988年頃に生産中止。R品番でオリジナルかつギャラ付きだと軽く5万ドル(500万円)超えだと海外サイトに書いてある。1988年といえば、私は25才。当時の私に借金してでも10個ぐらい買っておけと言いたい気持ちである。現在は希少とはいえ、金さえ出せば入手可能な時計で、イルソーレではその最終シリアル&ギャラ付きが300万円台、他では宝石広場、クォーク、ロデオドライブで200万円台半ば。日ロレでのOH受付はすでに終了。

約20年の時を経て、2007年にミルガウスは復活、発売当初は高騰したものの、今はもうすっかり落ち着いており、どちらかと言えば地味なモデルであるというのは、ミルガウスの宿命なのかもしれない。

もし、このシリーズのイメージがまったく違うものだったらどうだろうかと考える。技師や科学者ではなく、例えばジャズやロックのギタリストとか。ギターのピックアップの部分も強烈な電磁波を発生させる箇所であり、例えば当時は若きエリック・クラプトン(実際に彼はロレ好きである)あたりをイメージで使っていれば、また違っていたのではないかなどど妄想する。

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